タイミング療法の 排卵後の受診は 必要でしょうか?
苔口 昭次 先生 1984年、宮崎医科大学を卒業。卒業と同時に岡山大学医学部産婦 人科学教室に入局。高知県立中央病院産婦人科勤務、神戸掖済会病 院産婦人科部長を経て、 2004年9月より英ウィメンズクリニック勤務、 2013年3月に院長就任。卵管鏡下卵管形成手術(FT)に関して国内有 数の実績があり、国内およびアメ リカ生殖医療学会にて発表の経験も豊 富。心身統合医療にも精通する。B型・おひつじ座。休日は近くの山に出 かけ、自然の中を歩くことがストレス解消法という先生。西国三十三所をは じめ、近畿、西日本の山には有名な観音霊場も数多い。子どもの頃は祖父 とお遍路さんを体験したこともあるそう。
あいさん(36歳)からの相談 Q.先月より不妊治療を開始しました。私自身の血液や卵管には問題なく、主人のほうに も特に問題がなかったので、しばらくタイミング療法になりそうです。そこで教えて いただきたいのですが、排卵前に受診をして、この日に! というのを診ていただく のはわかるのですが、排卵後に卵がなくなったかどうかのチェックのための受診は 必要でしょうか? 病院によってそのようなものはないとも聞きます。仕事もしなが ら時間も取りにくいのと、経済的にも最小限で病院への受診をしたいと思っている のですが、まだ始めたばかりで重要性がわからないのでどうか教えてください。
排卵後の検査の意味
タイミング療法において、排卵後の検査や受診には、それぞれどのような意味 があるのでしょうか?
苔口先生 まず、不妊の原因を探るため の検査には、血液で調べるホルモン検査、 卵管や子宮の状態を調べる検査、男性側 の精子の検査、大きく分けて3つの柱が あると思います。
あいさんの場合、血液、 卵管、ご主人にも特に問題はなかったと いうことですけど、本当に排卵をしてい るのかどうか、担当の先生としては、も う少し踏み込んだ検査を進めていこうと いうお考えなのだと思います。
不妊治療を受けている患者さんのうち、 エコーで診ると卵胞は発育しているけれ ども、排卵していないという患者さんが、 だいたい5、6人に1人くらいいるといわ れています。
それが単発性といって、時々 起こる方と、ずっと続いて起こる方がい らっしゃるわけですけども、ずっと起こ るケースは稀ですので、当院ではだいた い2回くらいはチェックするようにして います。
もちろん通院できるにこしたこ とはありませんが、あいさんのように仕 事をされていたり、上にお子さんがいらっ しゃってなかなか来られないという方は、 排卵が確認できたら、後は通院なしでし ばらく様子を見ることもあります。
不妊検査の必要性
きちんと排卵できているかチェックす るためにも、排卵後の受診が必要なので すね。
苔口先生 不妊の原因が何なのかわからな い最初の段階は特にそうです。たとえば 黄体機能の検査については、1回の周期 だけで判断できないこともありますので、 もし1回だけしか検査をされていないの なら、あと1、2回は必要かなと思います。
ホルモン検査は通常、黄体期と卵胞期の 2回に分けて行うのですが、実際にどこまで調べておられるのかが気になるとこ ろです。
もし黄体機能が乱れているので あれば、ホルモン剤、あるいは排卵誘発 剤を投与し、卵胞の発育の段階から調整 することで黄体機能が整います。
ステップアップも考える
今後の治療方針はどのようになると思 われますか?
苔口先生 もし5、6カ月様子を見て妊娠さ れないということは、何かしら問題があるわ けですから、一般不妊治療においてもステップ アップが必要です。
卵巣やホルモンに問題が あれば、排卵誘発剤を併用することも。排卵 が順調な方でも、クロミフェンと1日おきの注 射で妊娠率が 8 〜 10 %アップするケースもあ ります。
卵管に関しては、子宮鏡による検査 のほか、通水検査によって造影剤では見つから なかった異常が見つかることがあります。
卵管 に異常が見つかれば卵管鏡下卵管形成術(FT)による治療も有効でしょう。
また、卵管 や卵巣に問題がなく、排卵誘発剤を使いたく ないという方であれば、当院のステップとして は、ご主人の精子に異常がなくても人工授精 をご提案することがあります。
あらゆる治療 の可能性を探るためにも排卵後の検査や診察 は大切なものなのです。