体外受精で採卵したら 卵胞の全てが空胞でした。 私には卵子がないの?
松山 毅彦 先生 東海大学医学部卒業。小田原市立病院産婦人科医長、東海大学付 属大磯病院産婦人科勤務、永遠幸レディースクリニック副院長を経て、 1996年厚仁病院産婦人科を開設。日本生殖医学会生殖医療専門医。 おひつじ座のA型。なかなか休みが取れず、めったに県外に出ることはな いという松山先生ですが、7月末に学会で東京へ行くことに。会場が古巣 の病院の近くだったため、懐かしさで心がいっぱいになったそう。
ナルトさん(31歳)からの相談 Q.3年前に体外受精(ショート法)で1人目を授かりました。その後、2人目不妊の治療 でもショート法で挑みましたが妊娠に至らず、2回目はアンタゴニスト法で採卵。結 果は26個すべて空胞でした。医師からは、「卵子がない可能性がある。早発閉経を する可能性が高いので2人目をあきらめ、今回の原因を探すために検査をして治療 に励んだほうがいい」といわれました。本当に私には卵子がもうないのでしょうか。
自身に合った誘発方法を
一度体外受精に成功し、妊娠しているのに、3年経って卵子がなくなってしまうということはあるのでしょうか。
松山先生 アンタゴニスト法で 26 個の卵胞が 育っているわけですから、たまたまそれが空胞だからといって卵子がないということにはなりませんよ。
では、ナルトさんの場合はどこに問題があるのでしょうか。
松山先生 まずは、排卵誘発法を考えたほうがいいと思います。
3年前と同じショート法では妊娠に至らず、次にアンタゴニスト法で採卵されたとのこと。
それが空胞だったということは、もしかしたらナルトさんにはアンタゴニスト法が合っていなかったのではないでしょうか。
アンタゴニスト法はロング法やショート法と比較すると、投与する H M G の量が少なくて済むメリットがあるのですが、ナルトさんが本来持っているホルモン機能のベースと合わなければ、最適な方法とはいえません。
ホルモン機能の背景が不明なので現状では断言できませんが、ショート法がうまくいって、アンタゴニスト法がうまくいかない人という方も確かにいらっしゃいます。
卵巣過剰刺激症候群に注意
「卵胞がたくさんある割に卵胞ホルモンの数値は低い」といわれたそうですが。
松山先生 たくさん卵胞があるのにホルモンの数値が低いというのが今回の話で一番肝心なところですね。
アンタゴニスト法で卵胞が26 個というのは確かに多すぎる気がします。
実際に、「適切な大きさの卵胞がたくさんあるのにホルモンの値が低いなぁ」と思いながらも採卵を試みた結果、卵子が採れないということも。
このように、卵胞ホルモンの値はとても重要なのです。卵胞の個数に見合ったホルモンの値がないといけませんね。
採卵時のE 2 の値が1900 pg/ mL だったそうですね。目安でいうと卵胞 10 個くらい がちょうどいいくらいだと思います。
卵胞数から考えてあと1、2日ほど採卵を待ったほうが良かったのかもしれません。
しかし、発育している卵胞数が多めなので、待ちすぎると卵巣過剰刺激症候群などが起きやすくなってしまうので悩ましいところです。
クロミッド活用の低刺激
まだ卵子が採れる可能性はありますか?
松山先生 排卵誘発の方法は他にもあります。ナルトさんの場合は、ロング法も選択肢の1つになるのでは?
ロング法は採れる 数が少ない半面、質の良い卵子が得られるともいわれています。
ナルトさんの場合はアンタゴニスト法でこれだけたくさんの卵胞が育っているのですから、ロング法でうまくいく可能性は十分あると思いますよ。
また、他にクロミッド Ⓡ 法など低刺激な方法も。
これは飲み薬による誘発なので体への負担が少なく、通院の回数も少なくて済みます。
排卵誘発はただ卵がたくさんできればいいというわけではありません。質の良い卵子を得ることが重要です。
※卵巣過剰刺激症候群(OHSS):排卵誘発法により多数の卵胞が発育・排卵することで、卵巣が腫れる、腹水や胸水がたまるなどの症状がみられる。