ホルモン補充周期の 妊娠判定後、 いつまでホルモン補充?
渡辺 浩彦 先生 滋賀医科大学卒業後、京都大学医学部附属病院産婦人科、大津赤十 字病院、済生会茨木病院などを経て、1971年から不妊治療を行ってい る父親の病院を継承。不妊治療から分娩まで手掛け、365日24時間の 診療体制を取る。O型・おとめ座。先生が毎年秋になると楽しみにしてい るのが、熊鍋。「熊肉は脂が上品で絶品。山で採れた天然のキノコもたっ ぷり入っていて、それがまた格別なんですよ。昔の人は美味しいものをよく 知っていたのですね」
のんさん(40歳)からの相談 Q.以前、ホルモン補充周期にて陽性判定となりましたが、その後すぐに出血し、化学流産してしまいました。私の通う病院では、陽性判定後は、エストラーナテープⓇ、飲 み薬が終了となり、週2回のオオホルミン注射のみとなります。ネットでは、8週くら いまではエストラーナテープⓇ、飲み薬は継続したという情報をみかけます。化学流産したのは、卵の生命力がなかったためだとは思いますが、ホルモン補充が足りな かったせいもあるのでは? と思ってしまいます。現在、再度ホルモン補充にて胚 移植し、判定待ちの状態です。もし陽性の場合、エストラーナテープⓇや飲み薬なし で大丈夫なのでしょうか。
ホルモン補充について
妊娠判定後のホルモン補充の処置について疑問を感じていらっしゃいます。一般的にいつ頃まで行うことが多いのでしょう。
渡辺先生 結論から言えば、ホルモン補充周期で胚移植を行った場合、自然周期と違って黄体がないので、8週目頃までは妊娠を維持するためのホルモンを補う必要があると思います。
しかし、判定日の H CG値で妊娠が継続できるかどうか、おおよその見当が付きます。
あまりにもHCGの数値が低かった場合、それはもう赤ちゃんになることができない、もともと育つ見込みのない妊娠であった可能性が高いと思われます。
当院では体外受精で胚移植を行った場合、胚日齢14 〜 17 日目に妊娠判定を行っておりますが、たとえば 16 日目だったら、血中のHCG値が300 mIU / mL くらいあれば、一定の 条件はクリアしていると見なします。
ホルモン補充の目的
妊娠判定後のホルモン補充とは、そもそもどのような目的で行うのでしょうか?
渡辺先生 胚移植には2種類あって、自然の排卵後に胚を移植する方法と、排卵させずにホルモンを補充して内膜を厚くしてから移植するホルモン補充周期があります。
通常の自然な周期の場合、卵胞が排卵した後の ” 抜け殻 “ が黄体へと変化します。
黄体からは卵胞ホルモンと黄体ホルモンが出て、ちょうど着床の頃にピークを迎え、子宮内膜は受精卵が着床しやすいように変化します。
そして着床がうまくいき、赤ちゃんが育ってくると、妊娠を継続させるホルモンの分泌は黄体から胎盤(絨毛組織)へと移行していきます。
その時期がだいたい妊娠8週目です。
妊娠維持に欠かせないホルモン
黄体ホルモンと卵胞ホルモン、赤ちゃんが育つためには2種類のホルモンが重要な働きをするのですね。
渡辺先生 そうです。自然の排卵の後は黄体があるわけですから、ホルモン補充をしなくても赤ちゃんは育ちますけれど、ホルモン補充周期の場合は妊娠が成立しても母体に黄体がないので、着床時期、妊娠の初期全般において、黄体の役割をするホルモン剤を補っておく必要があるといわれています。
貼り薬、飲み薬、あるいはその両方、注射など、剤型は何でもいいのですが、卵胞ホルモン、黄体ホルモンの2種類のホルモンをしっかり補充することが重要です。
よく黄体補充といいますが、卵胞ホルモンも妊娠維持には欠かせないホルモンです。
黄体補充の方法は施設によって、薬の種類や投薬の期間もまちまちですが、当院では妊娠7週目まで卵胞ホルモンを、9週目頃まで黄体ホルモンをしっかり補うことにしています。