卵巣機能を高めるには?

子宮内膜症を2回手術。 卵巣機能を高めるために できることはありますか?

田中 雄大 先生 慶應義塾大学医学部卒業。日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学 会生殖医療専門医。大和市立病院産婦人科勤務、内視鏡手術の専門 病院を目指した矢崎病院婦人科での勤務などを経て、2009年、矢崎病 院に不妊治療専門の湘南IVFクリニックを開設。その後、2012年にメディ カルパーク湘南を開設。聖マリアンナ医科大学非常勤講師。B型・かに座。 「最近、『ハリー・ポッター』シリーズにすっかり魅了されてしまいました」とい う先生。原書で読んでいるのでなかなか進まず、1ページ読まないうちに眠 くなってしまうことも。「ブログの更新が遅れているのはそのせいです。ごめん なさい!」とも。
ミツコささん(41歳)からの相談 Q.治療歴2年。8年前に卵巣嚢腫の手術を、さらに3年前に卵巣嚢腫と子宮筋腫の 手術をしました。現在も右の卵巣に嚢腫があります。卵管通水検査の結果も悪く、去 年から顕微授精にトライしています。1回目には妊娠反応が出ましたが、その後、稽 留流産。2回目は胚盤胞まで育たず断念。転院してさらに2回顕微授精しましたが、 妊娠には至っていません。 年齢のせいなのか、子宮内膜症のせいなのか、不妊原因がわかりません。このまま 妊娠できないのではと不安で、できることがあるのなら何でも試したいと思ってい ます。特に、卵巣機能が弱いとのことなので、卵巣機能を高めるために何かできるこ とはないでしょうか。おすすめのサプリメントなどがあれば教えてほしいです。

妊孕性を確保しつつ

ミツコさんは卵巣嚢腫、子宮筋腫の手術をされたそうですが。
田中先生 卵巣嚢腫や子宮筋腫といった子宮内膜症は、卵巣が機能している限りは再発・増悪しやすい厄介な病気です。
閉経するか、卵巣を取ってしまえば根治できますが、赤ちゃんを望む場合には、妊孕性を温存する治療法が施されます。
ご質問内容から推察するに、卵管通水検査 をしたとのことですから、8年前、3年前の施術とも、おそらく自然妊娠を期待しての治療だったのではないでしょうか。
卵巣嚢腫も子宮筋腫も取って、お腹の中をきれいにしてあげれば妊娠の確率は上がります。
卵巣嚢腫や子宮筋腫が軽度のものであっても、自然妊娠を望む場合には手術をします。

多く採卵し、よい受精卵を移植

不妊の原因は、子宮内膜症でしょうか。
田中先生  41 歳という年齢因子からも、卵巣機能は低下していると考えられます。
また、手術をする・しないにかかわらず、子宮内膜症があることでも、卵巣機能が下がってくる場合が多い。
妊孕性を温存するための手術であっても、部分切除にはなりますから、それによって卵巣機能が下がる可能性もあります。
しかし、ミツコさんの場合は、この年齢で 子宮内膜症の手術を2回しているにもかかわらず、顕微授精で1度は妊娠反応が出ていますから、この先も大いに期待できると思います。
稽留流産も経験されていますが、妊娠しなければ流産もできませんから、 “まったく妊娠しない体質ではない”ことがわかったとも言えます。
良い結果だったと前向きにとらえてください。妊娠する確率を上げるには、できるだけ多く採卵し、良い卵子を見極めて顕微授精をくり返すことです。
不安もあるとは思いますが、このまま治療を続けてみてください。
ただ、今の段階では不妊治療を優先すべき ですが、子宮内膜症はがん化することもあるので、経過観察を怠らず、将来的にはまた手術されることをおすすめします。
自分で何か努力できることはありますか?
田中先生  40 歳を超えると、妊娠率の低下よりも、流産率の増加に悩まされます。
何とか頑張れば着床まではするのですが、出産まで至らないというケースが増えてきます。
これは、卵子の老化によって染色体に何らかの異常が起こることが原因と考えられます。
高齢出産でダウン症候群などの染色体異常が新生児に発生する割合も、妊産婦の年齢とともに高くなりますから、できるだけアンチエイジングを心掛けるといいでしょう。
“若返りの薬”は残念ながらありませんが、米国では「DHEA」というサプリメントに期待が寄せられています。
服用すると卵巣機能が高まるという報告もあります。
当クリニックでも、オリジナル処方の抗酸化サプリメントを取り扱っています。
ただし、あくまでもサプリメントですから、補助的なものとしてとらえてください。
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