3回目の胚移植に失敗。 まだ凍結胚がありますが 転院を迷っています

石原 尚徳 先生 高知医科大学卒業。神戸大学医学部大学院修了。兵庫県立成人病 センター、兵庫県立こども病院の勤務を経て、2012年より久保みずきレ ディースクリニック菅原記念診療所院長。不妊治療から周産期・小児医療 まで、地域に根ざした総合的なサポート態勢が整う同クリニックで、精力的 に活動する。強い寒波、多雨、干ばつなど、近年の異常気象が引き起こす 自然災害を憂えている先生。クリニックにおける危機管理への取り組みを 強化したいとのこと。「大切な受精卵をお預かりしているので、設備や体制 作りに本気で取り組んでいます」。
ノンコさん(30歳)からの相談 Q.3回目の凍結胚移植が陰性の結果で気落ちしております。1~3回目まですべて ホルモン補充周期での移植で、胚盤胞のグレードはすべて4AAでアシストハッチングをして移植しました。子宮内膜の厚みも十分にあり、年齢的にも期待できるといわ れていたのに3回とも陰性。不育症の検査も特に問題ないとのことですが、何か着 床に至らない原因が他にあるのでしょうか? クリニックの医師にはこのまま移植を くり返していくしかないといわれ、転院も考えています。が、まだ凍結胚が3個ある ので迷っています。また残りの受精卵も3AB、3BA、3BCとこれまでよりグレード が低いです。 不妊原因もわからず、3年半も治療を続けてきて精神的にも経済的にもつらくなっ てきています。何かアドバイスをいただけましたら幸いです。

着床環境の確認

3回の凍結胚移植で妊娠に至らず、医師にこのまま胚移植をくり返していくしかないと言われて、転院を迷っておられるようです。
石原先生 焦るお気持ちはわかりますが、残っている受精卵のグレードを見ると、まだ十分に妊娠が期待できる高いグレードです。
転院の前に、今一度、着床環境を見直すなどして、あと少し担当医のもとで胚移植を頑張ってみるというのはいかがでしょうか?
今後の治療においては、受精卵を移植する 側、子宮内の環境を整えることも大切です。
もし気になることがあれば、着床環境の再チェックということで、着床の妨げとなる卵管水腫や子宮内感染症などの炎症がないか、次回の胚移植の前に検査していただくのもいいと思います。
卵管水腫があった場合は、卵管の摘出や結紮をおすすめします。
また感染症の検査法としては、腟内の経血を採取して培養し、菌の種類や量を調べる月経血培養検査が簡単でいいと思います。
慢性の子宮内膜炎などについても調べておくとよいでしょう。
良い凍結胚があるのだから、転院を考えるのはまだ早いでしょうか?
石原先生  12 個採卵できて、そのうちの 10 個が受精し、6個は胚盤胞にまで到達していますので、受精は申し分ない状態です。
ご主人の精子の運動率が最高でも 58 %ということですので、より確実に精子を送り届けることができる顕微授精という選択も正しい判断ですし、培養室のクオリティも高いのだと思います。
体外受精へステップアップして、ここは早く結果が欲しいところでしょうが、まだ採卵も1回ですよね?
 今までの治療の経緯を よくご存じの先生と一緒に、あと2~3回は胚移植を行ってみるのがいいのではないかと思います。
どうしても何か原因を調べたいというのであれば、先ほど挙げた着床環境についてチェックすることをおすすめします。

ドクターの意図

まだ 30 歳という若さゆえに、治療歴が3年半と長引いて、焦りを感じておられるのではないでしょうか。先生から何かアドバイスがあればお願いします。
石原先生 今までなかなか妊娠できなかったのは、おそらく卵管因子によるものではないかと推察します。
治療を始めた頃、ノンコさんがまだ 20 代で若かったがゆえに、医師もなるべく自然に近い妊娠を目指して、タイミング指導、人工授精4回とセオリー通りのステップを踏まれたのだと思います。
治療が3年半と長くかかったのはそのためです。
今はきっと体外受精までステップアップしたからすぐ妊娠できるだろうというお気持ちだと思いますが、2回目、3回目以降で妊娠される方も多い。
まだお若いし、採卵済みの受精卵の状態もいいので、諦めるのはもったいないと思います。
精神的にも経済的にもつらくなってきているということですが、あと少しだけ先生のもとで頑張ってみてください。
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