「セトロタイド®」「フェリング ®」

アンタゴニスト法で 注射を打つ時期は どうやって決めるの?

排卵を抑えるためのアンタゴニストの注射を打つ時期は、 どのように決められているのでしょうか。

メディカルパーク湘南の田中雄大先生にお聞きしました。

田中 雄大 先生 慶應義塾大学医学部卒業。日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医 学会生殖医療専門医。大和市立病院産婦人科勤務、内視鏡手術の専 門病院を目指した矢崎病院婦人科での勤務などを経て、2009年、矢崎 病院に不妊治療専門の湘南IVFクリニックを開設。その後、2012年に メディカルパーク湘南を開設。聖マリアンナ医科大学非常勤講師。B型・ かに座。神奈川県で内視鏡手術件数2位を誇るメディカルパーク湘南。 「手術と不妊治療を組み合わせることで、自然妊娠が望めるようになりま す。今年は手術によって体外受精を減らし、ますます自然妊娠を増やせる よう、いっそう頑張りたいと思います」。

この薬が知りたい!

●セトロタイド ®

ガニレスト ® とともに日本で 認可されているGnRHアン タゴニスト製剤で、お腹へ皮 下注射して排卵を抑える。
副作用はアレルギー反応による 皮膚の発赤だが心配はない。

●フェリング ®

FSHとLHが多く含まれる 閉経尿由来の排卵誘発剤。
数 ある誘発剤の中でLH含有量 が最も多い。
副作用として過 剰投与による卵巣過剰刺激 症候群がある。
もっちさん(39歳)からの投稿 Q.低刺激誘発専門の病院から転院し、今周期初めてアンタゴニスト法 を試しています。生理3日目に内診と血液検査をして、3~7日目 までフォリルモン®300単位を打ち、8日目の今日、一番大きい卵が 17㎜になっているということでHMGフェリング®300単位とセトロ タイド®0.25㎎を打ちました。血液検査はしていません。9日目も同 じで、10日目にまた病院へ行く予定になっています。 今までは毎回血液検査があり、ホルモン値をみて次の注射が決めら れていたこともあり、少し不安になっています。卵の大きさだけで排 卵を抑える注射をする時期を決めることは普通なのでしょうか?  他院はどのように決定しているのでしょうか。

アンタゴニスト法

まず、アンタゴニスト法について教えていただけますか?
田中先生 体外受精では、卵子を多く採取するために卵胞を育てていくのですが、数多くの卵胞が育つとLHというホルモン値が上昇し、卵胞が大きくなる前にLHサージが起きて排卵してしまいます。
そこで、卵胞が大きくなるまで排卵にブレーキをかけるのですが、そのための薬がGnRHアンタゴニストの注射です。
商品名ではセトロタイド ® 、ガニレスト ® の2つがあります。
ロング法は、前の周期から長く点鼻薬を使 わなくてはならず、時間がかかります。
一方、アンタゴニスト法とショート法は、その周期の生理が始まってから動き始めるのでかかる日数は一緒で、ロング法に比べると簡便です。
ショート法の場合は、毎日3~4回、8時間ごとに点鼻薬を使わなくてはなりませんが、アンタゴニスト法は受診して注射をするかどうか決めるだけなので、さらに簡便かもしれません。
また、アンタゴニスト法のメリットとして、 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を回避できる可能性があります。
ロング法やショート法では、最後にHCGの注射を夜に行ない排卵させるのですが、これがOHSSのすべての元凶になります。
アンタゴニスト法ではHCG注射以外でも、GnRHアナログという点鼻薬を使っての排卵誘起も可能となります。
こちらのほうが血中にとどまる時間が圧倒的に短く、OHSSになることがほとんどないのです。
もともとOHSSのリスクが高い方は、アンタゴニスト法をやることで、回避できる可能性が圧倒的に高くなります。
おそらくヨーロッパやアメリカでは、ショ ート法やロング法よりアンタゴニスト法のほうがメジャーになっていると思います。
日本では、GnRHアンタゴニストの注射は自費で1本1万円くらいしてしまうので、使いにくい薬ではあります。

アンタゴニスト法で考えること

アンタゴニスト法で排卵を抑える注射をする時期は、どのように決められるのですか?
田中先生 注射をする時期の決定の仕方は2パターンあります。
1つは、生理から始まって何日目と決め打ちするパターン、もう1つは、卵胞の大きさを見て何㎜以上になったら注射というパターンです。
型にはめて決まった日に行うか、患者さんに合わせてオーダーメイドなやり方をするかという違いです。
日本では、卵胞の発育に合わせて、GnRHアンタゴニストの注射を始める病院が圧倒的に多いと思います。
卵胞が 14 ~ 16 ㎜を超えたところで注射を始めるというのが教科書的なやり方です。
もっちさんも 17 ㎜を超えたということで、注射を始めたのでしょう。
また、卵胞の大きさだけで判断せず、採血 をして値をあわせて見て決める方法もあり、 当院もその方法で行っています。
E2やLHの値を見て、まだ早いか、もう注射するべきなのかを判断するのです。
卵胞が 14 ~ 16 ㎜を 超えていても、E2やLHの値が低ければ、注射し始めないこともあります。
アンタゴニストは排卵にブレーキをかける 注射なので、早くブレーキをかけすぎることで卵胞の勢いを止めてしまい、せっかくの卵胞の発育を妨げてしまうことを否定できません。
ぎりぎりまで待ってから注射を始めることで、通常は4~5回するところを、当院の場合は1~2回で済ませています。
しかしその一方で、医療者としてなるべく患者さんの負担を少なくすることも常に考えなくてはなりません。
採血をすればお金も時間もかかります。
必要がない検査は省いていくことも大切なことです。
もっちさんの通われている病院では、そのバランスの中で採血をせずに卵胞の大きさで判断して、注射を打ち始めているのでしょう。

各種の薬について

最初にフォリルモン ® 、セトロタイド ® と合わせてフェリング ® を処方されていますが、これらはどのような薬ですか?
田中先生 どちらも排卵誘発剤ですが、フォリルモン ® はFSHしか入っていない薬で、フェリング ® はFSHとLHが入っています。
セトロタイド ® を打ち始めたところから変更しているのは、セトロタイド ® が血中のLHを下げてしまうから、それを補充するためにLHが入ったものに変えているのです。

状況に応じた誘発法

もっちさんは、今後どのように治療を進めればよいと思われますか?
田中先生 もっちさんは低刺激誘発専門の病院から、結果が出なかったので高刺激ができる病院に転院されたということですが、どちらのほうが優れているということはできません。
39 歳でいらっしゃるわけですが、高刺激で今までより卵が採れるのであればやる価値はあると思います。
しかし、注射をしても低刺激と同じようなレベルの個数しか採れなければ、もう一度刺激のレベルを落とすことを考えてもいいのではないでしょうか。
高刺激の中で薬を変えることによって劇的に反応性が変わるということはありませんから、もう少し優しい刺激に戻したほうがいいと思います。
たとえば、注射を連日打つのではなくて、2日に1回くらいにしておくなど、負担の少ない方法で行うべきだと思います。
低刺激とマックスの高刺激との間にも中間の刺激の方法もあります。
転院をされたことはしかたがないと思いますが、病院での治療法は1つと決まっているわけではありません。
刺激法も試行錯誤しながら、ご自分の体に一番合った方法を先生と相談されるのがいいと思います。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。