ホルモン補充周期で移植を予定。クロミッド®使用後は移植に悪影響がある?
福田 勝 先生 順天堂大学医学部・同大学院修了。米国カリフォルニア大学産婦人科 学教室留学後、順天堂大学医学部産婦人科学教室講師を経て、1993 年福田ウイメンズクリニック開院。11歳のラブラドールの女の子を飼って いる先生。毎朝必ず愛犬と散歩してから診療にきているそうです。家の中は どこでも自由に行き来するワンちゃん。寝る時も一緒のベッドです。「うちは 家が犬小屋で、その中で僕らが過ごしています(笑)」。
みわさん(44歳)からの相談 Q. 昨年8月から体外受精をしています。その時点でAMHは0.26でした。ショート法2回 で1回目は2個採卵できて1個受精し、新鮮胚で1個移植しましたが陰性。その後クロ ミッド®の低刺激で11月は胚盤胞が2つでき、1月は変性卵、今年3月に凍結胚盤胞 をホルモン補充周期で移植し妊娠するも9週で流産。7月の採卵は未成熟卵1つ、別 の病院で8月に低刺激で1つ排卵済み、2つ空胞で採れませんでした。今度生理が来た ら、昨年の凍結胚盤胞をホルモン補充で移植したいと思っています。2周期連続でクロ ミッド®を使ったのですが、医師はどんなマイナス影響があるかわからないから、次周期 休んでから移植したほうがよいと言っていました。クロミッド®が影響するのは内服した 周期のみでしょうか? 長期内服で内膜が薄くなることがあると聞いていますが、それ 以外に移植に悪影響することはありますか?
クロミッドのメリット、デメリット
はじめにクロミッド ® の特徴とは?
福田先生 クロミッド ® は不妊治療によく使う排卵誘発剤です。
平均2・2個の卵胞をつくり、多胎率はそう高くないということで、一般不妊治療にもよく用いられる薬です。
副作用としては頸管粘液が少なくなったり、人によっては長く使っていると内膜が薄くなったりすることもあります。
しかし、すべての人がそうなるということではありませんし、逆に黄体機能不全の人には、クロミッド ® を使って卵巣刺激をしたほうが卵胞が多くできるので黄体も多くでき、黄体ホルモン値が高くなるという効果があります。
そうなれば内膜にいいとも考えられます。要するに、さまざまな目的に合わせて使うことができる薬だということです。
クロミッドと体外受精
みわさんは2周期連続でクロミッド ® を使ったので、次回の移植に悪影響がないか気にされているようです。
福田先生 頸管粘液の問題は体外受精では関係ありませんね。
内膜の問題ですが、移植は自然周期かホルモン補充周期かのどちらかでやることになります。
自然周期の中で移植しようとすれば、その周期の内膜の厚さがどうなっているかが関係してきますが、みわさんはホルモン補充をしてしっかり内膜をつくっていくわけなので、心配しなくて大丈夫です。
ホルモン補充するということは、完全にコントロールするということなので、前周期にクロミッド ® を使ったかどうかは関係なくなります。
万が一、内膜に問題点があれば移植もキャンセルになり、悪い状態で進むことはありません。
凍結胚盤胞移植
今年に入ってからは採卵できず、昨年凍結した胚盤胞を移植されるとのことです。先生からアドバイスをお願いできますか?
福田先生 年齢とともに卵巣は老化するから、卵を貯めたいというお考えで採卵をやってこられたのだと思います。
しかし年齢が上がると空胞が出やすくなります。
AMHが昨年時点で0・ 26 とのことで、これは実年齢より卵巣予備能が少ないといえる値だと思います。
実際、採卵でいい結果が出ないので、昨年の凍結胚盤胞を使おうということなのでしょう。
しかし凍結胚盤胞があるというのは大きなメリットです。
3月に同じ方法で移植して、妊娠されたという事実もあります。
この時は9週で流産されていますが、この時期の流産は卵側の因子が多く、特別な原因があるわけではなかったと思います。
再度ホルモン補充で人工周期をつくり、万全を期して移植をすればチャンスはあると思います。
今後、治療をどうされるのか書かれていま せんが、もしまた採卵をというお考えがあるなら、移植より採卵を優先したほうがいいでしょう。
どういう刺激をするかということですが、クロミッド ® は空胞ができやすいという印象があります。
みわさんも変性卵や空胞が続いているので、卵巣刺激を変えてみるというのも一つの選択肢になると思います。