絹谷 正之 先生 愛媛大学医学部卒業。広島大学医学部産科婦人科学教室入局。その 後、東京の山王病院リプロダクションセンターにて高度生殖補助医療研 修、顕微授精を修得。1999年にはカナダ、アメリカにて高度生殖補助医 療研修を行う。2000年、絹谷産婦人科副院長、2002年より院長に。広 島県産婦人科医会常務理事。ISO9001やJISART(日本生殖補助医 療標準化機関)の認定を2010年〜2011年に取得。2013年の年明け にクリニックをリニューアル。ワンフロア増やして、スタッフルームや多目的室 を新設。また培養室を広くし、待合ロビーで行っていた説明会を多目的室で 行えるように。より整った環境で患者さんをお迎えしています。
はーちゃんさん(32歳)からの相談 Q.不妊治療を始めて3年。1年ほど前までアメリカにおり、生理周期が42~45日であっ たためPCOSと診断され、クロミッド®を服用し、タイミング療法を行いました。日本に帰っ てきて、初めて自然妊娠しましたが6週で流産。内診や血液検査、エコーもしましたが、 PCOSでもなく卵巣や子宮もきれいでした。生活面の変化は特にないのですが、生理周 期が40日くらいだったのが32日くらいになり、排卵も28~30日だったのが15~17 日くらいに。さらに、耐えられない痛みではないですが排卵痛も出てきました。痛みと周期 が短くなったのが気になります。閉経が近づいているのでしょうか。自然妊娠は難しい?
月経周期の変化
はーちゃんさんは、生理周期が短くなって閉経を気にされています。
絹谷先生 ご質問内容から推察するしかないのですが、以前は生理周期が 42 ~ 45 日で、最近は 32 日くらいということですから、排卵周期が正常になったと考えてよいのではないでしょうか。
アメリカにいらっしゃった時は周期が長くなっていたのでしょう。
今の状態は心配なく、安心していいと思います。
視床下部や下垂体の機能不全
では、PCOSについてはどう思われますか?
絹谷先生 はーちゃんさんは、アメリカでは生理周期が長くPCOSだと診断されたようですが、日本では検査でも異常がなかったとのこと。
本来彼女はPCOSではなかったのだろうと思われます。
周期だけでなく、通常は超音波検査やホルモン検査をしてテストステロンの数値なども調べます。
日本ではきちんとそれらの検査を受けて診断されているようなので、PCOSではないでしょう。
質問内容に書かれている情報だけで推察し、PCOSではないと考えると、クロミッド ® の服用が効いたのであれば視床下部性の排卵障害ではないかと思われます。
もしそうならば、ストレスなどがあって視床下部や下垂体の機能に何らかの障害が生じたのかもしれません。
はーちゃんさんはアメリカに住んでおられたそうですから、特に自覚はなくても、環境が違うことなど何らかのストレスを受けていたのではないでしょうか。
今は帰国して、ストレスがなくなって正常に排卵できるようになったのではないかと考えられます。
排卵痛から考察
今までなかった排卵痛についても心配されていますが。
絹谷先生 排卵期の少し前あたりから痛みがあるということから、排卵痛であると推察します。
女性ホルモンの影響で卵巣全体が少し腫れたような状態になって、お腹の張りや痛みが出たり、卵胞が卵巣の壁を突き破る時に強い痛みが生じることがあります。
しかしながら、排卵痛はそもそも病気ではないため、排卵期に多少お腹が痛くなる程度なら、必ずしも治療の必要はありません。
順調に妊娠される方でも排卵痛がある方もたくさんいらっしゃるので、超音波や卵管造影の検査をしても異常がなかったはーちゃんさんは、卵巣の癒着などは考えにくいでしょう。
さらに、流産したとはいえ妊娠さ れているので問題なさそうです。
月経周期の変化を正確に捉えて
最後にメッセージをお願いします。
絹谷先生 確かに排卵が順調だった人で、閉経が近づくと、 20 ~ 25 日と月経周期が短くなることがあります。
しかし彼女の場合は長かった周期が正常になったということだと思うので、心配はいらないと思います。
自然妊娠も十分に可能だと思いますし、積極的な治療をもしされるのであれば、まずはタイミング療法をおすすめします。