内田 昭弘 先生 島根医科大学医学部卒業。同大学の体外受精チームの一員として、 1987年、島根県での体外受精による初めての赤ちゃん誕生に携わる。 1997年に内田クリニック開業。1階は奥様が副院長を務める内科・胃腸 科、2階が婦人科。昨年末、開院15周年を機にクリニックを改装。患者さん と培養士、患者さんと看護師がよりオープンに、ゆったりと対話できるスペー スが生まれ、さらに充実した診療環境が整いました。
いそさん(32歳)からの相談 Q.1人目を妊娠する前に行った卵管通水検査では、検査後、1時間くらい横にならなければ ならないほど痛みがありましたが、その後1回で妊娠。現在、不妊科で2人目のタイミング 療法中です。今回は卵管造影検査をしましたが痛みはなく、いまだ妊娠に至りません。検査 では右卵管が癒着しているかもと言われました。左も、先生がお腹を圧迫するまで造影剤 が入っていきませんでした。 卵管の造影検査と通水検査、どちらも卵管の広がりは同じでしょうか? 検査の違いにつ いて教えてください。
卵管検査の痛み
いそさんは、以前に受けた卵管の通水検査と比べて、今回の卵管造影検査では痛みがなかったということですが、それはなぜでしょうか。
内田先生 まず、卵管の検査には、通水検査、通気検査、卵管造影検査の3種類があります。
なかでも通水検査は、痛みを感じやすい検査なのです。
そして卵管造影検査では、使用す る造影剤に水溶性と油性の2種類があり、担当医の方針によってどちらかが選ばれます。
油性は体への刺激が少なく痛みが少ないことが多いので、いそさんの今回の卵管検査は、油性の造影剤を使用した卵管造影だったのだと思います。
痛くない検査もある?
卵管の検査はどれも痛いと思われがちですが……。
内田先生 やり方にもよりますが、造影検査に関しては、必ず痛い検査というわけではありません。
当院は造影検査に水溶性の造影剤を使っていますが、卵管が通りやすければ痛みをともなわないことも多いです。
痛みがあるのは卵管の通りが悪い場合が多いですね。
痛みの有無が妊娠に関係することはありますか?
内田先生 それも関係ありません。
いそさんが1人目を授かる前にした検査の痛みは、単に通水検査によるものだったと考えられます。
検査後は妊娠しやすくなるのでしょうか?
内田先生 おそらく、エビデンスとしてはないと思いますが、可能性としては、検査をした翌月から3カ月くらい、もしくは半年を目安にあるだろうと思います。
検査について
それぞれの検査の違いは?
内田先生 通水検査と通気検査は、卵管が通っているかどうかを診る検査です。
通水検査は卵管に液体を、通気検査はガスを通します。
通気検査の場合は、ガスを通す圧力がグラフで示されるので、卵管が通りにくかったところがグラフの様子でわかります。
この検査は、体内に入れたガスが抜ける道が決まっていて、肩に痛みが出ます。
その痛みが出れば、間違いなく通っていたということにもなります。
一方、卵管造影検査は、得られる 情報が圧倒的に多くなります。
造影剤を子宮に入れることで卵管の通りの有無はもちろん、通りの良し悪し、子宮の形もわかり、造影剤がお腹に広がった様子から卵管の状態を推測できます。
水性の造影剤は、その日に尿として体外に排出されますが、油性の造影剤は翌日も体に残っていて、卵管の通りの評価ができるとされています。
いそさんは、右卵管に癒着があるかもしれないと診断され、左も造影剤が入りにくかったようです。
内田先生 もともと、卵管の通りがあまりよくないのかもしれませんね。
でも、僕は卵管が細くて狭いところがあっても、問題はないと思っています。
なぜなら、検査で通ってさえいれば、卵子と精子が通る可能性は十分あるからです。