早発卵巣機能不全の治療中。妊娠の可能性やほかの治療法はありますか?

福井 敬介 先生 1989年、日本大学医学部卒業。卒業と同時に愛媛大学産科婦人科に 入局、愛媛大学大学院医学専攻科修了。2000年愛媛大学産科婦 人科学助教授。2001年、「高度な生殖医療をより身近な医療として不 妊カップルに提供したい」と、福井ウィメンズクリニックを開設する。A型・ やぎ座。この4月に多目的ホールを備えた別館がオープン。「本館を生殖 医療ユニットとして拡張し、一人でも多くの方が赤ちゃんを授かれるお手 伝いができるよう、より充実したサポートを行っていきます」と先生。
マチコさん(38歳)からの相談 Q.20代から月経不順で、30代になってから月経は3カ月か半年に一度です。昨年3月に病院でエコー検査を受けたところ、左右の卵巣に卵胞がなく、空っぽでした。先生から「卵巣機能不全だか ら、1年ほど治療する必要がある」と言われました。一度だけクロミッド®で排卵誘発を試みました が効果はなかったよう。それ以降は、一度 ※ ウフマン療法を挟んでから、毎回ソフイアA®でリセット 後、Day3よりプレマリン®1日1回を服用。Day30くらいまで粘るのですが、E2値が上がっても 90ほどで、エコーで見ても卵胞が確認できないだろうから、内診はせずリセット、のくり返しです。 リセット後のDay3の数値は毎回、【E2:11~20、LH:1.5~3、FSH:5~10】。Day25では【E2 :60~90、LH:15~28、FSH:27~43】。で、Day30くらいになると、FSHが60近くに なってしまいます。また高プロラクチン血症とのことで、初診日よりテルロン®を毎日半錠服用して います。すでに手遅れで妊娠の可能性はないのかと落ち込んでいます。内診がないことも不安です。

ホルモン値と卵巣機能不全

まず、卵巣機能不全は何が原因で起こるのでしょうか。
福井先生 正確には早発卵巣機能不全といいます。
卵巣機能が早期に低下する病態で、 40 歳未満で無月経の傾向があり、FSH値が 40 以上と高い場合に診断されます。
この病態については、残念ながら医学的な理由が解明されておらず、現状でできる方法を尽くすしかありません。
内診がないのを心配されています が、エコー検査は、FSHと E2 の値 を基準にしていますので、 E2 が 90 未 満と低い場合は、おそらく発育卵胞は見えないでしょう。
納得がいかない場合は診てもらうこともできますが、状況は変わらないと思います。

プレマリンについて

さんの現在の治療について、福井先生はどう思われますか?また、ほかの方法はないのでしょうか。
福井先生 まず、質問内容からはマチコさんの治療方法が完全に読み取れません。
プレマリン ® を服用して、自然の卵胞発育をみているのか、それともプレマリン ® と他の薬を併用しているのか、いずれかによっても状況が異なります。
一般的には、プレマリン ® などの エストロゲン剤(錠剤)とHMG製剤(注射剤)を併用して排卵誘発を促す場合が多いですね。
さらに、スプレキュア ® 点鼻液などの G n R H アゴニスト製剤をプラスすることもあります。
プレマリン ® のみではなく、他の薬を併用することで、卵胞ができてくる可能性は残されています。
この場合、毎周期の注射剤の投与は体に負担がかかりますので、低刺激周期でトライしてみる価値はあると思います。
さらに、従来のカウフマン療法は、 プレマリン ® のみを 20 日前後服用したら一度休憩し、月経が来たら再度服用するのですが、最近は休憩を入れず連続的に服用して、月経周期を取り戻す方法もあります。
この方法を試されるのも一つだと思います。

高プロラクチン血症

また、高プロラクチン血症の治療中だそうですが、関連性はないのでしょうか。さらに、この先の妊娠の可能性についてはどうでしょうか?
福井先生 ここではプロラクチンの値がわかりませんので、何ともいえませんが、早発卵巣機能不全との直接的な関連はない気がします。
同時進行で治療されていくのがいいでしょう。
妊娠の可能性については、正直わ かりません。
ただ、カウフマン療法で月経3日目までのFSH値が 10 未満に下がっているのはいい兆候です。
治療をすればいい反応を得られる可能性はあると思います。
今後、卵胞は1~2個しか育たな いと思うので、この貴重な卵胞をいかに扱っていくかが重要になります。
卵子を確保できたら、受精卵を凍結して、別周期のホルモン補充周期で移植する体外受精をおすすめします。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。