子宮腺筋症の薬物療法の期間や効果、副作用について教えてください【医師監修】

子宮腺筋症におけるホルモン治療の方法や効果、 また、不妊治療との兼ね合いについて 吉田レディースクリニックARTセンターの 吉田先生にお話を伺いました。

【医師監修】吉田 仁秋 先生 獨協医科大学卒業。東北大学医学部産婦人科学教室入局、不妊・体外受 精チーム研究室へ。米国マイアミ大学留学後、竹田総合病院産婦人科部 長、東北公済病院医長を経て、吉田レディースクリニック開設。3月に仙台 で開催される日本生殖医療心理カウンセリング学会では学会長に任命され るなど、日々多忙な先生。還暦という節目を迎える今年、これまで以上に健康 管理に気を配っていきたいそうです。

ドクターアドバイス

不妊治療の前にホルモン療法で子宮内の環境の改善を
ホルモン剤の半減期は短いので子宮内膜への影響は心配なし
ぽくまるさん(37歳)からの投稿 Q.今、体外受精にトライ中です。胚盤胞を3回移植しましたが、陰性続き。残りは 1年かけてやっと凍結できた1個だけです。子宮腺筋症のほか、チョコレート のう胞、両卵管水腫があるのですが、不妊治療で通っている病院では子宮内膜症の治療はできないということで、不妊治療と子宮内膜症の兼ね合いがう まくいきません。 子宮腺筋症の治療にジエノゲストを使う場合、「最低何カ月は服用しないとい けない」などありますか? また、ジエノゲストを使用した後、採卵や子宮内膜 の厚さなどに悪影響は出ないのでしょうか。

これまでの治療データ

検査・ 治療歴

治療年数2年。
これまで体外受精のため採卵6回。
胚盤胞移植を3回するも すべて陰性。
総合病院で、卵巣、子宮内膜症の経過観察中。
手術、またはホ ルモン療法をすすめられている。

不妊の原因 となる病名

子宮腺筋症、チョコレートのう胞、卵管水腫

子宮腺筋症とは?

ぽくまるさんは子宮腺筋症のほか、チョコレートのう胞や卵管水腫などの病気も抱えています。これらが不妊原因になっているのでしょうか。
吉田先生 子宮腺筋症は、子宮の内膜組織が子宮筋層の中に入り込んでいく病気です。
どのような原因で起こるのか、まだはっきりと解明されていませんが、子宮内膜症と併せ持つ方が多いようですね。
 子宮腺筋症については、それほど ひどい状態でなければ妊娠に大きな影響はありませんが、やはり病気があるままだと子宮内の環境はよくないと思います。
それに子宮腺筋症があると生理痛がひどくなることが多いので、ご本人にとっても非常につらいのではないかと思います。

生理の度に悪化していく

なるべく早く子宮腺筋症の治療をしたほうがいいのですね。
吉田先生 子宮腺筋症は子宮内膜症の範疇と考えられています。
子宮内膜症も子宮腺筋症も、生理が来るたびにどんどん悪化していく病気。
年齢を重ねていけば、そのぶん生理の回数が多くなりますから、それによって病気が進んでいくことになります。
ですから、放っておかず、どこかで区切りをつけて治療に臨む必要があると思います。

薬物療法から始めよう

どのような治療法があるのでしょうか。
吉田先生 ぽくまるさんが考えていらっしゃるジエノゲストという黄体ホルモン剤のほか、ピルやスプレキュア ® (点鼻薬)で生理を止めるという薬物療法があります。
厚くなった筋層を削り取っていく手術を行っている病院もありますが、子宮腺筋症は筋層全体が肥大しているので、うまく取りきるのは難しい部分もあります。
それに、手術となるとやはり体に負担がかかってくるので、まずは負担の少ない薬物療法からスタートされるのが望ましいかと思います。

治療と、不妊治療の併用は?

ジエノゲストの服用期間や効果などについて教えてください。
吉田先生 ジエノゲストをはじめ、ホルモン剤による治療は最低でも3~4カ月の服用が必要になってくると思います。
ホルモン治療は妊娠と相反するものなので、不妊治療と同時に行うことはできません。
ホルモン剤を使っている間は多少内膜が薄くなったりしますが、薬の半減期が短いので、治療が終わってしまえばすぐ元に戻っていきます。
その後の不妊治療には特に影響は出ないので、ご心配なさらなくて大丈夫だと思います。
子宮腺筋症を少しでも縮小させるためにジエノゲストを使うわけですが、服用することで急激に筋層の厚みを薄くしたり、元の状態に戻すということはなかなか難しいと思います。
しかし、薬の作用によって、子宮内のホルモン環境を少しいい状態に変えるということは期待できるのでは。
それにより、着床に関してはいい影響が期待できるのではないでしょうか。

子宮要因は、卵質の低下を…

37 歳という年齢もあり、不妊治 療を長くお休みすることには抵抗があるようですが。
吉田先生 子宮腺筋症やチョコレートのう胞の程度がどれくらいかによると思うのですが、これまで胚盤胞を3回移植して着床していないので、やはり子宮の病気が何らかの影響を及ぼしているのかもしれません。
通常の子宮内膜症の方やチョコレートのう胞の方も、病状がひどくなると卵子の質が下がる傾向が見られます。
卵子の質がよくない場合は、やはりジエノゲストなどを使って3~4カ月お休み期間をつくる。
そうしてから採卵すると、わりと質の改善が得られます。
ジエノゲストは比較的新しい薬なので、どうしてそのように作用するのかははっきりわかっていません。
一つの説としては、子宮内膜症の病巣から分泌され、胚の発生や着床に悪影響を及ぼすといわれているサイトカインという物質を抑制するためによくなるのではないかと考えられています。
卵子の質が改善されれば、着床も上がっていくので、ジエノゲストによる治療をやってみる価値はあるのではないでしょうか。
焦るお気持ちはわかりますが、3~4カ月はホルモン治療に専念され、少しでも子宮内のホルモン環境をよくしてから、再び採卵にトライされてみては。
これまでの受精卵は胚盤胞まで育っているということですから、妊娠の可能性はまだ十分あると思います。
また、子宮腺筋症の方でも妊娠・出産されている方はたくさんいらっしゃるので、希望をもって治療を続けていただきたいですね。

 

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