夫が非閉塞性無精子症です。ホルモン療法+MD-TESEで精子が回収できる可能性は?

大橋 正和 先生 泌尿器科を専門とし、東京歯科大学市川総合病院、国立 成育医療センターなどの勤務を経て、現在、荻窪病院で泌 尿器科部長として勤務。はらメディカルクリニックでは月2 回土曜日に男性不妊症外来を担当。趣味はガーデニングと 川柳。O 型・てんびん座。不妊に悩むご夫婦へ「どんなこ とも胸中にしまっておかず、ご夫婦で話し合いを」。
ニモさん(31歳) Q.夫の3回の精液検査で精子がゼロでした。泌尿器科を受診し、非閉塞性 無精子症と診断されました。FSH値34.4で、染色体異常はないとのこと。 3カ月後に MD-TESEを行う予定ですが、精子を回収できる可能性は 50%と言われました。原因は不明とのことですが、5年前に夫は交通事故 に遭い、腰や背中が痛くてしばらくリハビリしていました。この事故と無精 子症は関係あるのでしょうか。 また、MD-TESEをしても精子がいなかった場合、ホルモン療法後、1回 目とは別の精巣を再度MD-TESEすることで精子が見つかる可能性があ ると説明を受けましたが、これはどのような治療になりますか?

非閉塞性無精子症の診察

今回は、はらメディカルクリニックで男性不妊外来を担当されている、大橋先生にお話を伺います。まず、非閉塞性無精子症かどうかはどう診断するのですか。
大橋先生 まず1つ目は、精巣の容積が小さいことです。
2つ目に、ホルモンの1種であるFSH値が高いということ。
ニモさんのご主人はFSH値が 34 ・4だったそうですが、FSHの正常値が4〜8ということからみれば、かなり高い数値といえます。
そして3つ目に、精液検査で精子が確認できないこと。
これらの3点が当てはまっていれば、おおよそ非閉塞性無精子症と診断されます。

非閉塞性無精子症の原因

非閉塞性無精子症になる原因は?
大橋先生 遺伝子説、つまり先天性が有力と考えられています。
ニモさんは事故が原因でないかと心配されていますが、腰や背中を打った程度では関連性は乏しいと思います。
睾丸そのものを外傷するような事故やキックボクシングなどで強くダメージを受けた場合でなければ、精子を造る機能に大きな影響を及ぼすことはないと思います。

遺伝子検査(AZFスクリーニング検査)

MD―TESEを受けられる予定だそうですが。
大橋先生 非閉塞性無精子症の原因に遺伝子説があると申しましたが、MD―TESEを受ける意味があるかどうかを調べる検査に、精子の遺伝子検査(AZFスクリーニング検査)があります。
AZFは、Y染色体の上に乗っている遺伝子で、その中のa・b・cの領域のどこに異常や欠失があるのか調べるものです。
cが欠失している場合は精子がいる可能性があるのですが、aまたはbが欠失している場合は、MD―TESEをしても精子を回収できる可能性はほぼないと考えられています。
ニモさんのご主人はこの検査を受けられたのでしょうか。
ただし検査をして異常がなかった場合でも、非閉塞性無精子症の患者さんがMD―TESEで精子を回収できる確率は30 〜 50 %といわれています。

男性不妊のホルモン治療

ホルモン療法+再度のMD―TESEを行うという提案について、これはどのような治療法ですか。
大橋先生 日本ではまだ限られた施設でしか行われていない、実験的な治療のことだと思われます。
ホルモン療法はhCGを注射で打つ治療ですが、このhCGは脳下垂体から出るLHというホルモンと同じ働きをするもので、精巣に働きかけ、テストステロンという男性ホルモンを造らせるホルモンなのです。
つまり、睾丸の中で男性ホルモンの分泌を増やし、精子を造る能力を高めることを目的とした療法です。
1回目のMD―TESEで精子を回収できなかった方が、このホルモン療法を行った後、2回目のMD―TESEを実施したら、1〜2割の方が回収できたという報告がされています。
最終的な手段として考えてみるのも一つかもしれませんね。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。