自然周期で顕微授精6回行い、いずれも同じ排卵誘発法。この治療法のままでいい?

高橋 克彦 先生 慶應義塾大学医学部卒業。インターン時代に立ち会ったお産に感激 し、産婦人科医を目指す。1990年に日本初の体外受精専門外来ク リニック、高橋産婦人科を開業。後に広島HARTクリニックと改名。 2000年、東京HARTクリニック開設。「日本初」の実績を次々と打 ち立て、日本の不妊治療界をリードする。今年最後に観戦した巨人 戦で、9回を待たずして球場を後にすると、帰宅途中のタクシーの中 のラジオでカープのサヨナラ勝ちが。「僕が応援しないほうがいいの では?(苦笑)」と思い、来季のスタジアム年間指定席も思案中だそう。
ヴァンちゃんさん(29歳) Q.精子数が少なく運動率が低いため、不妊治療をしています。今まで人工授精7回、 顕微授精は自然周期で6回採卵しましたが、胚盤胞になったのは2 個のみで、い ずれも妊娠しませんでした。自然周期しか行わない病院で、卵胞を育てる方法も毎 回同じです。先生には「胚盤胞まで育つかは賭けみたいなものだから」と言われま した。採卵では1~4個卵子が採れますが、受精はするものの4~5日で分割が 止まることが多いです。私の卵子の状態が悪いのでしょうか? 先生に原因を聞いても、わからないとのこと。このまま7回目の採卵に挑むか、転 院して違う治療法に挑戦したほうがいいのか悩んでいます。

多少の男性因子は卵質でカバーできる

これまでの経過をどう思いますか?
高橋先生 一般論として、この方のご主人のような精子の検査データの場合でも、人工授精によってうまくいくご夫婦は少なくありません。
ではなぜ、この方の治療がうまくいかないかという理由の1つとして、やはりご主人だけでなく、ヴァンちゃんさんにも不妊原因があることが考えられます。
男性不妊と言われて当クリニックに来られる患者さんでも、約4組に1組は女性の卵子の質が悪いというカップルがいらっしゃるんです。
精子の状態が少し悪くても、女性の状態がよければ、当クリニックに来る前に妊娠されていますね。
男性の場合は簡単な検査をして、「今日はよかったね」「悪かったね」というけれど、検査するタイミングや体調などによって結果にばらつきがあって本当のところはわからない。
逆に女性は毎月排卵していても、本当に質のいい卵子は、3回に1回排卵されているかどうかです。
このことから、ヴァンちゃんさんの治療経過を見ても、卵子の質の問題も疑わざるを得ないでしょう。

自然周期は妊娠率が低い

今後、どうしたらいいでしょうか。
高橋先生 卵子の質については、採卵を3回すればほぼわかります。
ただし、それはきっちりと刺激周期をした場合に限ります。
自然周期というのは、たしかに副作用が少ないメリットはありますが、妊娠率は非常に低い。
いい卵子を採取できる確率が低いからです。
特に、卵子の質が低いと疑われる女性の場合、自然周期はおすすめできません。
ですから、ご本人もお考えのように、転院をおすすめします。
担当医が「胚盤胞まで育つかは賭けみたいなもの」とおっしゃるようなクリニックは、あまりおすすめできません。
きちんと刺激周期をし、胚盤胞まで育てて、いい胚盤胞があれば凍結しておく。
そうすればヴァンちゃんさんが妊娠される可能性はもっと高くなると思います。
今までの治療経過を見ると、卵巣の機能にも期待できるようですから、ぜひ刺激周期をきちんと行ってくれるクリニックへ転院して、頑張ってください。

病院の選び方

転院先を選ぶ際に、参考にすべき点を教えていただけますか。
高橋先生 ART(生殖医療)を行っているクリニックは必ずホームページがあります。
そこで、昨年または一昨年の臨床成績をきっちりと示していること。
そしてできれば、年間で最低でも300例以上、体外受精の症例があること。
症例数が少ないと、技術的にも格差があるのは常識ですからね。
まずは症例数が多いことが一番です。
さらに、JISART(日本生殖補助医療標準化機関)に認定された医療機関が近くにあると、よりおすすめ。
そこで相性のいい先生に出会えるかどうかは行ってみないとわかりませんが、クリニックを選ぶ判断基準の1つにはなると思います。
※刺激周期:採卵するために、排卵誘発剤であるFSH(卵胞刺激ホルモン)製剤やHMG製剤などを使用して卵巣を刺激し、卵胞を成熟させる方法。
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