乏精子症のため顕微授精へ。ロング法での排卵誘発は適しているのでしょうか?

神谷 博文 先生 札幌医科大学卒業。同大学産婦人科学講座、第一病理学講座に 入局後、斗南病院にて産婦人科科長を10 年間務める。1998 年、 神谷レディースクリニックを開業。今年1月にクリニックを移転し、 電子カルテの導入や施設・設備の充実、スタッフの増員を図った。 JR札幌駅から徒歩4分の場所にクリニックを移転して間もなく1 年が経つ。「地下鉄さっぽろ駅と地下で直結しているビル内にある ので、冬でも暖かく安全に通院していただけると思います」と先生。
こつくんさん(29歳) Q.妊娠を希望して約1年。夫は28歳です。精子数が90万個/mL、1800 万個/mL、1200万個/mL、2500万個/mLと、検査のたびにバラつ きがあり、乏精子症と診断されました。タイミング指導を2回受けました が授からず、顕微授精へ。ロング法で排卵誘発し、17個採卵できたう ちの3個が受精卵になりました。新鮮胚 6分割を採卵の翌々日に1個 戻し、残りは凍結しています。私の場合、ロング法での排卵誘発は適切 なのでしょうか。また、自然妊娠は可能ですか?

排卵誘発各種

体外受精や顕微授精のために行う排卵誘発にはいくつかの方法がありますが、どのように選択するものなのでしょうか。
神谷先生 早発排卵を抑えて、複数の卵子を採るための方法としては、ショート法、ロング法、アンタゴニスト法などがあります。
ショート法は、初期のFSH(卵胞刺激ホルモン)の濃度を高めるためにGnRHアゴニストとFSHを同時に投与する方法。
ロング法は、GnRHアゴニストを長期間使用することで卵子の発育を促す方法。
アンタゴニスト法は、卵胞刺激ホルモンを投与し、卵胞がある程度育ったらGnRHアンタゴニストを投与します。
当院の場合は、AMH(抗ミューラー管ホルモン)の値を検査したうえで、年齢や合併症の有無なども考慮し、複数の方法から最適なものをご提案しています。

主治医への質問

ロング法が自分に合っているのか、不安に思っていらっしゃいます。
神谷先生 どの方法にするかは、それぞれの医療機関の治療方針や、患者さんの意思や状況によっても違ってきます。
まずは主治医の先生を信頼して、なぜその方法なのかを遠慮せずに質問してみることをおすすめします。
尋ねたいことを事前にメモしていくと、聞き忘れもなく安心です。

人工授精・スプリットなどの方法も

ロング法以外に排卵誘発のための 有効な手段はありますか? 先生ならどうされますか。
神谷先生 人工授精を4〜6回してみて、妊娠しなければ体外受精をご提案します。
当院では、運動精子が1000万個/ mL 以下の場合は顕微授精を行い ますが、この方のケースでは、採取した卵子を2つのグループに分け、体外受精と顕微授精を半分ずつ行って状態を見るスプリット法を選択するかもしれませんね。
採卵数は 17 個と多いので、次回の排卵誘発法はマイルドな方法でアンタゴニストを使い、排卵誘発剤にはあまり強くないピュアFSH製剤を使用する方法も考えられます。

精液検査について

ご主人の乏精子症についてはいかがですか?
神谷先生 精子濃度1500万個/mL 以上、運動率 40 %以上であれば、 正常値と言えます(2010年WHOのデータより)。
ご主人の精子濃度は、検査ごとにばらつきがあり、決して精子数が多いわけではありませんが、この程度であれば自然妊娠の可能性もありますし、人工授精も試してみる価値があります。
自然妊娠しているご夫婦を調べてみると、夫の精子数が正常値よりも低かったり、妻のAMH値が低かったり、ということも意外に多いんですよ。
男性の精子数も、精神的なプレッシャーがあると少なくなったりします。
検査結果の数値にとらわれすぎず、ご夫婦ともにリラックスして治療に臨むといいでしょう。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。