2度の子宮外妊娠から7カ月卵管造影検査を受ける際はどれくらいの期間が必要?【医師監修】

受精卵が子宮以外の場所に着床してしまう子宮外妊娠。 今後の検査時期や対応について、 福井ウィメンズクリニックの福井先生に聞きました。

【医師監修】福井 敬介 先生 1989年、日本大学医学部卒業。卒業と同時に愛媛大学 産科婦人科に入局、愛媛大学大学院医学専攻科修了。 2000年愛媛大学産科婦人科学助教授。2001年、「高度 な生殖医療をより身近な医療として不妊カップルに提供し たい」と、福井ウィメンズクリニックを開設する。A 型・や ぎ座。最近、少しお腹まわりが気になり始めたという先生。 朝食はたっぷり、昼食は軽めの食生活を心掛け、しばらく お蔵入りしていた、先生方の間で話題のダイエットシューズ 『MBT』も復活! 今後の成果が楽しみです。

ドクターアドバイス

HCG値が正常値まで下がり 月経周期が戻っていれば 卵管造影を受けてもいい時期では

ごまねこさん(31歳)Q.昨年の1月と6月に子宮外妊娠を経験しました。1回目は左右どちらか不明、 2回目は右卵管でした。2回目の子宮外妊娠では抗がん剤治療で卵管を温 存していますが、影が消えないので、右卵管での受精は無理かもしれない と言われています。「落ち着いたら様子を見て卵管造影を」とのこと。最後 の診察から7カ月経ちますが、生理前に右卵管あたりに時々痛みが走ります。 性病検査ではクラミジアなどの問題はありません。そろそろ卵管造影をして 子づくりを再開したいのですが、子宮外妊娠後の卵管造影は、どのくらい 期間を置けばよいでしょうか。

ごまねこさん のデータ

■月経について

生理周期は31日で、期間は6~7日程度。
2日目あたりから急激に月経量が減少。

■妊娠歴

約10年前に妊娠中絶。
術後1カ月内に激しい腹痛 に襲われ胃腸炎と診断。
2011年1月と6月に子宮外妊娠。
1回目は左右不明。
2回目は右卵管。
抗がん剤で卵管を温存。

■漢方薬やサプリメント

マカ、葉酸を服用中。

子宮外妊娠について

ごまねこさんは、2度の子宮外妊娠を経験され、抗がん剤で卵管温存されているそうです。
福井先生 子宮外妊娠では、人工的に手を加える場合、この方のように抗がん剤の使用、あるいは手術という方法があります。
一方、何もしないで経過をみる、いわゆる待機療法もあります。
その場合は
①HCG値が高くないか、
②痛みはないか、
③超音波の所見で胎児の心拍がないか、
④腹腔内出血がないか、
この4つで判断します。
もともとHCG値が高すぎず、低値の傾向であれば、卵管流産という形で自然に経過をみて終わることもあります。

子宮外妊娠は繰り返す?

子宮外妊娠をくり返しやすい人はいるのでしょうか。
福井先生 クラミジアに感染した人は、子宮外妊娠をくり返しやすいですね。
一度、子宮外妊娠をすると、再発の可能性は 10 〜 20 %。
さらにクラミジアが原因に関わってくると、再発率は上がりやすくなります。
そのほか、原因不明の子宮外妊娠もあります。
この場合は、子宮のホルモン環境や受精卵のコンディション、子宮内膜症の癒着などが影響していると考えられています。
この方は、1回目が左右の卵管どちらか不明とありますが、おそらく先生に子宮外妊娠だと言われたのでしょうね。
明らかに子宮外妊娠の卵管流産だったとすれば、2回くり返している可能性は高く、子宮外妊娠をくり返しやすい傾向があるのだと思います。

卵管について

子宮外妊娠から7カ月が経過し、卵管造影検査のタイミングを気にされていますが。
福井先生 卵管造影をされたことがないのであれば、そろそろよい頃だとは思います。
HCG値が完全に消えていなければ、検査による圧力をかけること自体が禁忌ですが、7カ月も経っているので、HCG値は低下していると思われます。
月経前に右卵管あたりが痛いと書いておられるので、おそらく月経周期も戻っているのではないでしょうか。
ちなみに、右卵管の影は問題ないのでしょうか。
福井先生 この影については、何を示しているのかよくわからないので、判断が難しいですね。
もしかすると、子宮外妊娠した場所に血腫のようなものができていたり、あるいは、その場所が器質化しているのかもしれません。
妊娠が継続しているわけではないけれど、何らかの組織があったわけですから、それが変化して残っているのかなと思います。
もしくは、卵管の中が詰まっている可能性もあります。
それを確認するためにも、卵管造影は有効かもしれません。
ただ、1つ気になるのは、先生に「落ち着いたら卵管造影を」と言われたということです。
超音波で影のように見えるところが気になるので、先生が卵管造影をためらわれているのかもしれません。
卵管造影をしても詰まっているかもしれないから、落ち着くまで待ってみようというスタンスとも受け取れます。
しかし、すでに7カ月経ちますから、確認してもいい時期だとは思います。

腹腔鏡の活用

福井先生であれば、どのように治療を進められますか。
福井先生 自然妊娠をご希望で、クラミジアの既往歴がなければ、卵管造影+腹腔鏡をしてもいいと思います。
卵管に色素を流して影の部分を肉眼的に確認するのが有効かもしれません。
子宮外妊娠を頻繁にくり返すのであれば、なおさら卵管内はきちんと確認しておきたいと思います。
実のところ、頻繁にくり返す原因は、超音波や卵管造影ではわかりにくいのです。
さらに卵管内だけでなく、卵管外周辺の状態をきちんと確認することで、新しい発見につながったり、今後の治療方針が立てやすくなることもあります。
腹腔鏡検査は手術でもありますから、病変があれば、その場で取り除くこともできます。

FTカテーテル

卵管が詰まっている場合、どのような方法がありますか。
福井先生 卵管の狭窄か完全閉塞か、またその場所によって方法は変わってきます。
その場所が子宮から遠ければ腹腔鏡による手術が有効ですし、近ければFTカテーテルによる卵管鏡下卵管形成術という方法があります。
ただし、子宮外妊娠を起こした方にカテーテルが有効かどうかは議論が分かれるところです。
さらに、多発性狭窄や両側の詰まりなどの所見によっては、体外受精という選択肢もあります。
ごまねこさんは、今後も子宮外妊娠の再発を注視する必要はありますが、2回の妊娠経歴があるので、自然妊娠の可能性はあります。
まずは自然妊娠を目指していただき、もしも結果が思わしくない場合は、体外受精という選択肢があることも知っておくといいかもしれませんね。
※卵管鏡下卵管形成術:FTカテーテル(バルーンを内蔵したカテーテル)を腟から卵管に挿入して、狭くなった箇所でバルーンを膨らませ、卵管を広げる方法。
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