【医師監修】石原 尚徳 先生 高知医科大学卒業。神戸大学医学部大学院修了。兵庫県立成人 病センター、兵庫県立こども病院の勤務を経て、2008 年より久 保みずきレディースクリニック美賀多台診療所副院長。不妊治療 から周産期・小児医療まで、地域に根ざした総合的なサポート態 勢が整う同クリニックで、副院長として精力的に活動する。A 型・ さそり座。産科や小児科を併設し、入院施設、キッズルームなど、 設備が充実している同院。不妊治療だけでなく産科の診療も行っ ている石原先生は、副院長として多忙な日々を送っている。
ペコさん(36歳)Q.昨年、心拍数確認後に9週で完全流産となり、その後、生理を1回見送ってまた 妊娠しましたが、化学流産に終わりました。「化学流産は妊娠のうちに入らないので、 次の妊娠は生理を見送る必要がない」「化学流産の出血は遅れてきた量が多めの 生理」などと聞きますが、私の場合は普段よりも量が少なめのようでした。年齢的 にも焦っているので、あまりお休みはしたくないのですが、また流産の可能性が高 くなるくらいなら、お休みしたほうがいいとも思います……。医師には「再度流産し てしまう場合は不妊専門の病院で不育症の検査をしたほうがいい」と言われました が、今回の化学流産は流産の回数に入りますか? 検査をするべきでしょうか。
不育症検査を受けるべき?
現在は治療をしていないそうですが、不妊専門クリニックへ検査に行くべきかどうか悩んでいらっしゃるようです。
石原先生 化学流産を流産の回数に数えるかどうかは難しいところです。
ペコさんの相談を拝見しましたが、基本的には当院ではよくみられるケースですので、あまり気にしすぎずに、前向きに治療を続けていくのがいいのではないかと感じました。
ただ、すごく気になるようでしたら、不育症の検査をしてもいいと思います。
検査を受けるかどうかは患者さん次第です。
私も患者さんの様子をみて、流産のことが気になってそのことがストレスになっているような場合は検査をすすめることがあります。
不育症の検査をして、大丈夫ということを確認してから不妊治療を再開してもいいですし、検査せずに不妊治療を続けて妊娠しても問題ありません。
いろいろな選択肢があると思うのです。
化学流産とは?
化学流産とはどのような状況でしょう。「遅れてきた量が多めの生理」ということはありますか?
石原先生 化学流産とは、妊娠反応は出たけれども、胎嚢形成には至っていない状態。
妊娠の反応がどんどんなくなっていって、そのうち出血が始まるという経過です。
不妊治療をしていなければ、通常は流産したことにさえも気付かないこともあります。
化学流産後の生理が軽かったせいで、子宮内に血の塊が残っているかも、という心配は?
石原先生 それも考えなくて大丈夫です。
月経までの期間が長くて子宮内膜が分厚くなっている場合であれば、経血の量も増えるでしょう。
ペコさんは、世間に出回っている噂や情報に惑わされてしまっていますね。
化学流産なら、治療を1周期待つ必要もありません。
流産の可能性と、検査の種類
今年 36 歳ということで、年齢的な焦りがあると思いますが。
石原先生 統計的にみると、普通に妊娠しても 15 %ほど、 35 歳を超えると 20 %ほど、 40 歳を超えると 40 %ほどの方が流産しています。
ペコさんは、最初の妊娠が9週まで育っていて流産し、次は知らない間に流産してしまったということでショックが大きかったのだろうと思います。
しかし、化学流産は2回目の流産にカウントしなくて大丈夫です。
また、不育症検査とひと言で言っても、検査方法は多岐にわたります。
染色体検査のように自費負担の検査も含まれていますし、超音波の画像診断、採血で内分泌系や自己免疫疾患の有無を調べるなど、結果がわかるまで数週間かかる場合もあります。
ですから気になるようでしたら、お休みも兼ねて、早めに検査を受けてみるのもいいかもしれません。