1回目の検査が陽性でも、不育症にはならないのでしょうか? 不育症の検査基準について 厚仁病院の松山先生にお答えいただきました。
【医師監修】松山 毅彦 先生 東海大学医学部卒業。小田原市立病院産婦人科医長、東海大学付 属大磯病院産婦人科勤務、永遠幸レディースクリニック副院長を経て、 1996年厚仁病院産婦人科を開設。日本生殖医学会生殖医療専門医。 クリニックでは最新医療を積極的に取り入れる一方、産科併設のメリ ットを生かし、より安心して出産を迎えられるよう、不妊治療から出産、 育児までをトータルにサポートする。おひつじ座のA型。平均睡眠3 時間という超多忙な松山先生。もし時間ができたら? とお聞きする と、「九州新幹線みずほに乗ってみたいな……」とのこと。鉄道ファ ンの先生が目を輝かせて答えてくださる姿が印象的でした。
かれんさん(34歳)Q.前回の妊娠では7 週目で流産。不育症検査で抗フォスファチジルエタノールアミン抗 体のキニノーゲンが基準値を超えていると言われ、今回はバファリン配合錠Ⓡを飲ん で移植しましたが結果は陰性。流産後は妊娠しやすいとも聞きましたし、薬で血流が よくなると期待していたのでガックリです。医師には「流産後の血液検査だと基準値を 超えることもあり、1回目の検査だけなので、現時点で不育症の基準に満たない」と 言われ、再検査をすることに。1回目で基準値を超えても、2回目で正常値だった方 はいますか? その場合、不育症でないと判断され、投薬などもなくなるのでしょうか?
血流と流産因子
抗フォスファチジルエタノールアミン抗体のキニノーゲンが基準値を超えるとは、どのようなことなのでしょうか?
松山先生 これは不育症の免疫学的検査の一環として、抗リン脂質抗体を調べられたのだと思います。
抗リン脂質抗体は、血小板を刺激して胎盤の中などに血栓をつくり、流産を引き起こすことが知られています。
さらに、抗リン脂質抗体にはいくつもの種類があり、その1つが、抗フォスファチジルエタノールアミン(PE)抗体です。
この抗PE抗体は妊娠初期の流産と関係が深いとされています。
胎盤の中は、胎児に酸素と栄養を与えるために、血液がゆっくりと流れています。
ここに抗リン脂質抗体があると血液が固まりやすくなり、胎盤に血栓ができて流産につながりやすくなります。
血流改善の必要性
投薬で血流改善を行っていたそうです。また、流産後は妊娠しやすくなるのでしょうか?
松山先生 抗リン脂質抗体症候群に限らず、血が固まりやすい体質(血液凝固異常)の人は、流産しやすいことが知られています。
このような血液凝固異常の治療として低用量アスピリン療法や、ヘパリン療法などがあります。
また、流産後に妊娠しやすいかは、医学的な根拠はないと思います。
ただ、流産したということは、妊娠経歴があるわけですから、体が妊娠を受け入れてくれるという意味では、ご質問のような解釈はできますね。
不育症の対応はマチマチ
再検査するそうですが、不育症検査は、一般的に2回行うものなのですか?
松山先生 不育症の判断はなかなか難しく、基準をあいまいにするといろいろな人が不育症の診断になる可能性があります。
なかでも免疫系の不育症は、無数に原因があるといわれています。
正確には、2回の検査結果を確認してから不育症と判断するのでしょうが、1回目で異常が出れば早くその要因を解消するために治療を始める先生もいます。
かれんさんを担当されている先生の場合はおそらく前者の考え方なのではないでしょうか。
もし2回目の検査が正常なら、基本的には投薬治療などはなくなると思います。
不育症にはならなくても、そういう傾向があることは間違いありませんので、2回目の検査で原因を突きとめておくことは必要かもしれません。