【医師監修】田中 雄大 先生 慶應義塾大学医学部卒業。日本産科婦人科学会専門医、日本生殖 医学会生殖医療専門医。大和市立病院産婦人科勤務、内視鏡手術 の専門病院を目指した矢崎病院婦人科での勤務などを経て、2009 年、矢崎病院に不妊治療専門の湘南IVFクリニックを開設。聖マリ アンナ医科大学非常勤講師。B型・かに座。「葉酸」「アンチエイジ ング」「マカ」のサプリメントをクリニックオリジナルでプロデュース して提供中。患者様の状況に合わせておすすめしています。「僕も『ア ンチエイジング』を毎日せっせと飲んでいます(笑)」と先生。
アキさん(32歳)Q.タイミング療法を1年半した後、先日4回目の人工授精を行いました。検 査では特に悪い点はなし。ヒューナーテストは1回しかしていませんが、精 子が1匹しかいませんでした。それから人工授精に。先日、先生に「卵巣開窓術」という手術をすすめられました。お腹に1カ所、両脚の付け根に 1カ所ずつ穴をあけて、卵巣に穴をあける手術とのことでした。これでか なり確率が上がると言われたのですが、するべきか迷っています。 インターネットで調べてもあまり事例がないようで、どんな手術か、またメ リット・デメリットを教えてください。
人工授精からステップアップ
人工授精は何回までと考えるのがいいでしょうか?
田中先生 当院では、ヒューナーテストは定義として1匹以上精子がいれば陽性ということにしていますが、やはり運動精子の数が少ない場合には人工授精を積極的にすすめています。
アキさんが人工授精をしていらっしゃることに関しては問題ないと思います。
その回数ですが、世界的にも6〜7回くらいが目安になるといわれています。
当院のデータでも、 75 〜 80 %の方は4回以内で妊娠されています。
ですので、4回くらいで、ステップアップや体外受精の検討、腹腔鏡の手術、再検査の検討、また改めて治療の方針を組み立て直すターニングポイントにしています。
アキさんもステップアップを検討する時期にきていると思います。
今後の選択肢
次はどんな治療になりますか?
田中先生 選択肢は大きく分けて2つになると思います。
卵管を使った自然妊娠にこだわるのであれば腹腔鏡の手術です。
お腹の中をのぞいて癒着がないか、卵管が実際に通っているかを調べます。
さらに腹腔内を洗浄することによって、精子や卵子の質を下げるといわれているインターロイキンなどの化学物質が洗い流されるので、妊娠率が上がることも証明されています。
もう1つの選択肢は、体外受精です。
アキさんは「卵巣開窓術」という手術をすすめられているそうですが、どのような手術なのですか?
田中先生 卵巣開窓術というのは聞いたことがないので、多嚢胞性卵巣に対する「腹腔鏡下卵巣焼灼術」か、卵管が閉塞しているための「卵管開窓術」だと思われます。
ただ、卵管が閉塞している場合は人工授精は行わないと思うので、腹腔鏡下卵巣焼灼術ではないでしょうか。
これは、スコープで腹腔内を観察しながら電気メスなどで卵巣に多数の小さな穴をあけ、排卵を促す手術です。
この方法で8割程度の方は、術後2〜8週間の間に自然排卵します。
ただし、自然排卵する期間は約1〜 11 カ月と個人差が大きく、効果は一生続くものではありません。
アキさんはまだ 32 歳と若いので、自然妊娠にこだわってもいいと思います。
それで医師に腹腔鏡手術をすすめられているのかもしれませんね。
腹腔鏡の場合は特殊な技術を必要とする手術ですので、合併症がないともいえません。
どんな術式を予定しているのか、医師によく確認する必要があると思います。