腫瘍のため、左卵巣を摘出。タイミング療法と体外受精、どちらの方法を選ぶべき?

堀川 隆 先生  琉球大学医学部卒業。国立国際医療センター、国立成育医療センター不 妊診療科勤務を経て、2009年12月より高崎ARTクリニック院長に就任。 国際医療センター勤務時より内視鏡手術・生殖補助医療に従事。成育医 療センターでは難治性不妊治療・加齢と不妊についての研究に取り組む。 B 型・みずがめ座。東京からの新幹線通勤にもすっかり慣れてきたという 堀川先生。「今年も患者さんのために頑張っていきたい。常に新しいこと に挑戦し、本当に意味があることをやっていきたいと思います」。
カズオさん(35歳)Q.今年 4月、奇形腫のために左側卵巣を全摘出、右側卵巣にできた3㎝の 腫瘍、子宮ポリープ2㎝を切除しました。右側卵巣は子宮卵管造影検査 の結果、卵管の通りは正常。精子は運動率がやや低いものの、タイミン グ療法でも大丈夫とのこと。しかし、別のクリニックでも診てもらったとこ ろ、「年齢が年齢なので、体外受精から始めましょう」と言われてしまいま した。 病院によって治療方針が異なるので、どちらを選択したらいいのか悩んで います。今35歳なので焦る気持ちもあります。やはり体外受精からスター トしたほうがいいのでしょうか。

奇形種について

「奇形腫」により左側の卵巣を摘出されたということですが、これはどのようなものですか?
堀川先生 これはよくある腫瘍の1つで、それほど深刻なものではないと思います。
腫瘍の中には髪の毛や歯が含まれていることがあり、手塚治虫さんの漫画『ブラック・ジャック』に出てくる女の子〝ピノコ〞のモデルにもなっています。
不妊治療も行っている施設では、妊娠のチャンスを減らさないために奇形腫があっても温存するケースが多いと思うのですが、大きくなっていると悪性のリスクも考えられるので、切除して診断することもあると思います。
カズオさんの場合は卵巣を摘出されているので、腫瘍がかなり大きかったのではないでしょうか。

癒着の可能性も考える

タイミング療法と体外受精、2つの施設で治療方針が異なるということですが……。
堀川先生 手術をされて腫瘍やポリープを取り除き、お腹の中がきれいになっている状態なので、タイミング療法を試してもいいのではないでしょうか。
卵巣が1つしかない状態でも、残った卵巣からきちんと排卵して、卵管もうまく機能してくれれば妊娠の可能性はあると思います。
ただし、開腹手術をしていて右側の卵巣にも傷があると、癒着といって、臓器と臓器がくっついていることも考えられます。
たとえば卵巣と卵管とか。
細かいところまでは子宮卵管造影では評価できないので、一見正常でも機能が温存されていないことがあります。
その状態でタイミング療法をずっと続けていても難しいです。
確かに年齢の問題もありますが、別の病院の先生はそのようなことも含めて体外受精をすすめられたのではないでしょうか。
このようなケースに関して、日本でも世界的にも、治療方針はまだ明確に定まっていません。
どちらの方法でも妊娠のチャンスはあると考えられるので、意見が異なったのではないかと思います。

検査をして治療再開

では、タイミング療法からスタートしてもいいのでしょうか。
堀川先生 子宮卵管造影やヒューナーテスト、超音波による子宮の診察、基礎体温の分析やホルモン検査などを行って、卵管因子や頸管因子、子宮因子をきちんと調べて条件に問題なければ、タイミング療法から始めてもよいと思います。
ただし、やはり年齢の問題もあるので、漫然と続けるのではなく、3〜4周期など、最初にある程度期間を決めてトライすることが望ましいと思いますね。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。