湘南IVFクリニック院長の田中雄大先生と、看護師で 不妊カウンセラーの井上美加子さんに、クリニックの カウンセリングについて詳しくお聞きしました。
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看護主任・不妊カウンセラー 井上 美加子 さん 不妊カウンセリング学会の講習に参加し、資格を取得。田 中先生とは前の病院にいた5 年前から一緒に働いているの で、呼吸がぴったり。「特に内容を細かく話さなくても、患 者さんの診察の様子などをしっかり見ていて、医師と〝あ・ うん〞の呼吸で求めているケアをしてくれています」と、田 中先生からも大きな信頼を寄せられている。プライベートで は2児の母でもある。
ドクターアドバイス
気持ちを聞き出すのが役目ですから ご自分で答えを出せるように聞いていきます
ぷー子さん(ライター・37歳)からの投稿 Q.治療歴はまだ浅いのですが、年齢的に焦っています。 昨年末の初診で子宮にポリープが見つかり、即日除去手術を しました。その後タイミング指導をしてもらい、人工授精を2回 しましたが妊娠せず。先生や病院に不信感はありませんが、 内診では毎回生理日の確認だけで「NGなら生理開始から10日目に また来てください」と言うだけ。なんだか坦々と時間が過ぎていく だけのような気がして、余計に焦りが募っています。原因は何か、 このままの治療方針でいいのかなどの疑問でストレスフルです。
医師以外の視点から
カウンセリングは、以前から行っているのですか?
田中先生 カウンセリング外来を設けているわけではありませんが、患者さんの要望があった時などにスタッフが個別にお話をします。
医師ではない視点から患者さんと接するタイミングをつくるためにも、積極的に行っています。
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気軽に受けられるように、予約制にはしていません。
患者さんが希望される場合はもちろん、私が必要だと判断して、診察後にお話をさせていただくこともあります。
時間をかけて相談したい方には、後日改めて来ていただくこともあります。
お話は、クリニックの奥にあるカウンセリングルームでします。
料金はかかりません。
カウンセリングの体制はどのようになっていますか?
田中先生 不妊カウンセラーの資格を持つ看護師を中心に、3〜4人がカウンセリングをします。
必ずしも資格がないとカウンセリングができないわけではありませんので、人生経験豊かな助手が行う場合もあります。
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これは個人的な意見になりますが、カウンセリングの技術というのはカウンセリングに必要な要素 10 のうちのおそらく2とか3くらいで、残りは真心、人間性でするものだと思います。
また、医療に関することは私がお話しできますが、患者さんが求めているのは医療とは違う視点からのお話のことも多い。
ですから、医療に詳しくない人のほうが満足されるケースもあるようです。
質問の内容は??
患者さんからのご相談は、どういった内容が多いですか?
田中先生 カウンセリングの内容は、旦那さんとの関係やお姑さんからのプレッシャーなど。
そしておそらく一番多いのが、ぷー子さんのように「今後どうすればいいのかわからない」「どれだけ治療すればいいの?」といったご相談です。
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ぷー子さんのご相談には「坦々と時間が過ぎていくだけ」とありますが、これ本当によく患者さんが使われる表現です。
こういった場合は、患者さんの話を聞いてくれるカウンセラーがいて、その声がぷー子さんの担当の先生に届き、そこから今後の治療方針をお伝えしたり、患者さんのご希望を聞いて話し合えば、お悩みが解消するかもしれませんね。
先生のクリニックでのカウンセリングの位置付けは?
田中先生 患者さんが医師に言えないことや言いづらいことを心にためずに、隙間を埋めるためのものになれば一番いいと思います。
やはり診察だけでは患者さんのニーズに応えるのが難しいこともありますので、それを補うためにも重要だと思いま
す。
す。
泣きたいときは、泣いていい
では、カウンセラーの井上さんにもお伺いします。実際のカウンセリングは、どのように行われるのですか?
井上さん 先生から依頼があったり、患者さんの様子を見ていてお話をお聞きしたほうがいいなと感じた時に患者さんに声を掛けます。
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治療がうまくいかない方は泣いていらっしゃることもあるので、個室にご案内して「つらかったですね、今日は」という感じでお話をしたり、患者さんが話されるまで待つ場合もあります。
なかには話したくないという方もいらっしゃるので、そういう場合は泣きたいだけ泣いていただいて、私はそばについているだけなのですが、それで落ち着いて帰られる方もいます。
心のモヤモヤをできるだけなくしていただいて、スッキリした気持ちで帰っていただけるように心掛けています。
患者さんはどうしたいのか?
もしぷー子さんがカウンセリングにいらっしゃったら、どのようにお話ししますか?
井上さん ぷー子さんご自身がどうしたいと考えていらっしゃるのか、そこをお聞きしますね。
それから、治療で腑に落ちないところがあるのか。
先生に不満があるのなら、それをお聞きして、ご本人が納得して治療を進められるようにお話しをしていきます。
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不妊症には明らかな原因がないケースが多いので、余計に焦ってしまうのだと思います。
ですから、まずは心にたまった想いや悩みをお聞きします。
このまま治療を続けていっていいのか、疑問をお持ちのようです。
井上さん そういう場合は、「そう感じていらっしゃるんですね」とぷー子さんの言葉をくり返してみます。
そしてぷー子さんの気持ちをさらにお聞きします。
ご自分の気持ちを言葉にすることで、本当はどういうふうに考えているのかというのをご本人が再確認できるようにしています。
そうすると、「じゃあ先生にもっと詳しく聞いてみます」などというふうに、ご自分がどうしたいかが見えてくるようです。
私も「こちらからも先生に伝えておきますね」と伝えて、必ず内容を先生にフィードバックします。
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そして、次回の診察で先生が「こうだったみたいだね」と声を掛けることで、思っていたことを先生にも言いやすくなると思います。
ぷー子さんも、そんなふうにすれば、モヤモヤが消えて、納得して治療に取り組めるのではないでしょうか。
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【医師監修】田中 雄大 先生 慶應義塾大学医学部卒業。日本産科婦人科学会専門医、日本 生殖医学会生殖医療専門医。大和市立病院産婦人科勤務、内 視鏡手術の専門病院を目指した矢崎病院婦人科での勤務など を経て、2009年、矢崎病院に不妊治療専門の湘南IVFクリ ニックを開設。聖マリアンナ医科大学非常勤講師。B型・かに 座。来年 4月に移転するクリニックの工事がいよいよ始まり、 楽しみにしているそう。忙しい合間をぬって2~3日に1度は 様子を見に行かれているとか。プライベートでは、年末は昨年 と同じ北海道旅行を計画。今年は北斗星での旅だそう。