冷えは妊娠の大敵!体を守る冷え対策とは?【医師監修】

〝冷え〞は不妊の原因になるとよくいわれますが、それはなぜなのでしょうか。 冷えと不妊がつながる体内のメカニズムと、どんな対策をすることが大切なのか、 浅田レディースクリニックの浅田先生にお聞きました。

MAYさん・サービス業・主婦 Q.私はもともと低体温で冷え性なので、腹巻をし たり漢方を飲んだりしていつも気を付けていま す。でも、仕事中お腹をさわってみると冷たい んです。それから、汗をかいた時はものすごく 冷たくなるんです。こんな感じで妊娠できるの か不安です。子宮が冷えているのでしょうか。
ゆっき・主婦 35歳 Q.妊娠を望む女性はとくに、日頃から体を冷やさ ないようにとよくいいますが、「冷え」ってどんな ものなのでしょう。私は自分が冷え性だと自覚し たことはなく、知らず知らずに冷えているなどと 聞きますが…。この歳で恥ずかしながらいつどん な時に冷えているのかよくわからないのです。

妊娠しやすい体とは? 不妊治療の現場で見る〝冷え〞

これからの季節は、一層、体が冷えやすくなりますが、冷えを改善することは、妊娠しやすい体をつくるためにも必要なことなのでしょうか?
浅田先生 「妊娠しやすい体とはどのような状態かですが、逆説的に、妊娠しにくい体を考えてみてください。
世界を見渡してみると、食べ物や水などの生活環境が悪かったり、ひどい衛生状態であったり、戦争をやっている国でも子どもは生まれています。
ですから、生活環境があまりよくないから妊娠できない、逆に生活を整えたら妊娠できると思うことは、基本的に間違いであると思います。
そして今の日本では、 30 代の女性が多く出産していて、不妊治療をしていらっしゃる方は 30代後半から 40 代に多いです。
人間の体の本質的なつくりからいえば、授乳も終わって、子育てにひと段落ついているのが本来という時期に、子どもをつくろうとしています。
現在の不妊治療の基本的な位置づけとしては、体が衰えてきた時期に行っているといえます。
そのなかで〝冷え〞は、皆さんがよく訴えることで、実際、冷え症の人は多いです。
とくに足もと、下半身の冷えがよくないというのは、不妊治療の現場からも実感するところです」

卵巣はもともと血流の乏しい器官。 足を温めることで卵巣を活性化

足もとや下半身の冷えがとくによくないのは、なぜなのでしょうか?
浅田先生 「左右の足の静脈は腸骨静脈として骨盤の中に集まってきて、そこから大静脈になって心臓に戻っていきます。
その左右の静脈が骨盤のところで1本になって上がっていく近くに、ちょうど卵巣があります。
静脈の上に卵巣が乗っているような状態です。
さらに、卵巣側から見ると、静脈よりも動脈が奥にあります。
温かい血が奥のほうを通って、卵巣に近い方に冷たい血が流れているということです。
また、静脈は動脈よりも太いので、接触面積も大きいといえます。
そういったことから、これは私なりの推測で すが、静脈を流れる冷たい血液はちょうど空冷システムみたいに、もともと卵巣を冷やし続けているのではないのかな、と思うのです。
逆にいえば、足もとや下半身を温めることは、卵巣を温め、活性化することにつながると思います」

排卵を促すホルモンは 血液で運ばれる。 血流をよくすることが何より大切

冷えが不妊の原因といわれる理由のひとつには、女性の体内メカニズムが関係しているのではないかということですね。
浅田先生 「そうですね。
それにもともと排卵というのは、脳からの神経伝達で行われるわけではなく、血管を通り、卵巣動脈を流れる血液によって運ばれるホルモンの指令によって行われています。
排卵を促すホルモンを滞りなく運ぶために、血流だけに依存しているところがあるといえます。
また、打った注射の薬液は、血管内を回っている間に、どんどん分解されているのですが、の間にどれだけ卵巣を通ったかで効果が表れます。
ですから、血流が悪く、卵巣へ行く回数が少なければ、注射をどれだけ打っても意味がありません。
血液の循環が悪ければ、いくら注射を2倍打ったって2倍の効果は出ないし、同じ注射を打っても、血液の循環が2倍よくなれば、2倍注射を打ったのと同じ効果があるのではないかと考えられます。
冷えは血液の循環を妨げます。
そういった意味で、血流をよくすることは、不妊治療のさまざまな問題の改善につながると思われます」

体を内側から温め、血流を よくする遠赤外線照射器 「サン・ビーマー」

先生のクリニックで実際に行われている、血流や冷えの改善方法について教えてください。
浅田先生 「当クリニックでは、遠赤外線照射器『サン・ビーマー』を設置しています。
これは、遠赤外線を薄手の衣服の上から照射し、体を内側から温め、血流をよくすることで細胞が活性化されるという療法です。
高齢になって血液の循環が悪くなってきた人や、卵巣の機能も下り坂で・・・という方には、より効果が出るのではないかと思います。
不妊治療する方は 30 代前半でも後半でも同じ意識になりがちですが、肉体は、外はもちろん内側もどんどん衰えています。
血流の悪さのような、体の内側の機能の衰えはあまり自覚することができません。
そのような場合、遠赤外線で体を温めるのは意義のあることだと思います。
ただ、それだけで妊娠率が上がるわけではありません。
やはりメインの不妊治療があって、それをより活かすということで試してみることをおすすめします」

自分でできる冷え対策も 習慣にしてほしい

私たちが普段できる〝冷え〞の改善には、どのような自己管理が必要でしょうか?
浅田先生 「特別な運動や食事などは必要ないと思いますが、季節を問わず、普段から足もとや下半身、お腹回りを冷やさないように心がけることは大切です。
たとえば当クリニックでは、今年の夏に『おなか応援プロジェクト』という活動に賛同し、採卵または移植された患者さんに〝おなかありがとう〞という名前の腹巻をプレゼントしました。
これは〝冷えから大切なものを守るために頑張っているおなかに、ありがとう〞という、お腹を大切に思う気持ちを広げる活動の一環です。
また、冷え対策としては半身浴や足湯などもおすすめです。
静脈を介して熱が全身を回り、体全体が温まります。ぜひ習慣的に取り入れてみてください」

浅田先生からのアドバイス

●普段から足もとや  お腹回りを冷やさない!
●体全体を温める半身浴や  足湯がおすすめ
【医師監修】浅田 義正 先生 浅田レディース名古屋駅前クリニック、 浅田レディース勝川クリニック院長。生 殖医療専門医認定。「不妊治療に通う患 者さんは、真剣であればあるほど、自分 でできることは何かないかといつも探し ています。そんな患者さんに自分ででき る冷え対策を提案する意味で腹巻きプレ ゼントを実施しました」
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