体外受精で卵子を全部採卵する

卵胞をコントロールしにくい 排卵誘発のみより、 体外受精で卵子を全部 採卵するほうがより安全です

浅田 義正 先生 名古屋大学医学部卒業。1993 年、米国初の体 外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。 帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精によ る妊娠例を報告。2004 年、浅田レディースクリ ニック開院。2006 年、生殖医療専門医認定。結 果重視のアカデミックな視点で、最新の治療法を 次々と取り入れている頼もしきドクター。名古屋駅 前クリニックを開院してから多忙な浅田先生。「休 みが取れたら人間ドックと旅行に行きたいですね。 実はディズニー・ワールドが大好きなんです(笑)」。

ドクターアドバイス

卵胞をコントロールしにくい 排卵誘発のみより、 体外受精で卵子を全部 採卵するほうがより安全です

PCOSの診断基準

浅田先生のクリニックでは、PCOSをどのように診断されますか?

浅田先生 超音波検査をして多嚢胞性卵巣が見えた人は、空腹時の血糖とインスリンを測って「HOMAーR指数」というものを出すんですね。

その数値からインスリンに抵抗性(インスリン作用が低下し血糖値が下がらない状態。糖尿病の原因であり、PCOSにも関与していると考えられている)があるかどうかを判断します。

PCOSは男性ホルモンの値が高いことが特徴で、一部には将来的に糖尿病の予備軍という人もいます。

それでインスリン抵抗性の改善薬を使うと、男性ホルモンの値が下がって排卵しやすくなる人がいるのです。

PCOSは排卵障害なので、妊娠するためには排卵誘発をしていきます。

PCOSは治る・治らないというものではなく体質なので、きちんと排卵するように促していきます。

また、薬物療法のほかに外科的療法もありますが、卵巣を傷つけるので私はあまりおすすめしておりません。

PCOS患者の治療

実際にはどのように治療を進めていかれるのでしょう。

浅田先生 主にクロミフェンで排卵誘発をしていきますが、なかなか排卵しにくい重症の人もたくさんいます。

ただ、卵の成長というのは3周期くらいで考えないといけないので、飲み薬で効果が出ない場合は飲み薬+注射にしてみる。

それでダメでも3カ月、4カ月と続けていくと、だんだん排卵しやすくなってきます。

今は排卵誘発剤の種類も豊富になっていますしね。

体外受精では、近年、GnRHアンタゴニストという薬ができて、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクがあるHCG製剤を使わずに排卵させることが可能になってきました。

当院では、自分の体から出る黄体形成ホルモン(LH)で排卵させるGnRHアゴニストとの組み合わせで、非常に安全に排卵誘発ができるようになったので、この治療が中心です。

排卵誘発だけの方法のほうが卵胞の発育をコントロールできないのでリスクが高いです。

体外受精で卵を全部採ったほうが、より安全だと思います。

ただ、いつ採卵するかのタイミングは非常に微妙です。

早すぎると卵が未熟だし、遅すぎると薬の副作用の心配が高くなります。

ですから、過剰刺激になる一歩手前の、一番成熟卵が採れるタイミングを計るのです。

成熟卵、採卵のタイミング

そのタイミングは、どうやって見極めるのですか?

浅田先生 卵胞の大きさと、エストラジオール(卵胞ホルモン)の値と卵の数でみます。

たとえれば、毎日リンゴの木を眺めて、いつもぎ取ったら一番おいしいだろう?と見極めるようなものですね。

PCOSの場合に限らず、採卵のタイミングは医師の技量に関わってきます。

卵胞の成熟の仕方などは患者さんによって違いますし、年齢や卵巣の予備能にもすごく左右されるので、医師の腕の見せどころです。

OHSSにならないようにしながら、そのギリギリの手前で上手に採卵する。

もしOHSSになってしまった場合も、しっかりと責任を持って治療できる技量があること。

腹水がたまったら、それを清潔に抜いて血栓をつくらないようにしながら注意して点滴で戻します。

そうすると回復がものすごく早いのです。

そのように医師側には、前提として、すべてに責任を持って治療できる技量が必要ですね。

※クロミフェン:抗エストロゲン作用を持つ経口排卵誘発薬。

※GnRHアンタゴニスト製剤:ゴナドトロピンの分泌を抑制する働きを持つ製剤。

※HCG製剤: 卵子の成熟を促す胎盤性性腺刺激ホルモン製剤。排卵誘発療法に用いられる。

※GnRHアゴニスト製剤:黄体形成ホルモンの分泌を抑制する働きを持ち、採卵前に排卵してしまうことを防ぐため、また卵胞 の発育をコントロールする目的で使われる薬剤。

>全記事がドクター編集!

全記事がドクター編集!

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。