【医師監修】小田原 靖 先生 東京慈恵会医科大学卒業、同大学院修了。1987年、オーストラリア・ ロイヤルウイメンズホスピタルに留学し、チーム医療などを学ぶ。東京 慈恵会医科大学産婦人科助手、スズキ病院科長を経て、1996 年恵比 寿に開院。AB 型・みずがめ座。震災の影響で計画停電に入ることを 考え、他の JISART 施設と診療を連携。梅ヶ丘産婦人科(世田谷区)、 東京HARTクリニック(港区)でも採卵を行えるように環境を整えている。
青空さん(27歳)からの投稿 Q.卵管閉塞と男性不妊で、昨年7月から顕微授精をしています。2度の採卵をし てきて、1度目はロング法で6個の胚盤胞ができ、1回目新鮮胚盤胞移植・陰性、 2回目凍結胚盤胞移植・陰性、2個融解していたので1個は破棄、3回目は2 個胚盤胞移植するも陰性。残り1つの胚盤胞にも希望が持てず、12月に2度 目の採卵をしました。アンタゴニスト法で採れた卵子は11個で、受精したのは 4個。1月に2個の桑実胚をホルモン補充周期で移植しましたが、残りの同じ くらいのグレードの桑実胚は胚盤胞にならず、破棄になったそうです。私に何か 原因がある? それとも誘発法をまた変えるほうがいいのでしょうか?
誘発法と、採卵数、受精率から
青空さんは1度目の採卵ではロング法、2度目の採卵ではアンタゴニスト法と排卵誘発の方法を変えていますが、これについてどう思われますか?
小田原先生 一般論で言うと、ロング法のほうが卵子の数が多くできる傾向があります。
青空さんは、最初はロング法で6個採れて胚盤胞まで育ち、次のアンタゴニスト法では数は採れたけれど受精は少なかった、とのこと。
教科書的な理解からはちょっと逆のパターンになっていますが、卵巣の反応には個人差がありますから、その方に一番合った誘発方法を模索していくことになります。
1度目の胚盤胞のグレードについて記載がありませんが、もしよい状態のものであれば、2度目も同じ誘発法でトライしてもいいのではないかと思いますね。
もしかしたら、ロング法で誘発した際、卵巣過剰刺激症候群を起こしそうだった、などのバックグラウンドがあったのかもしれません。
着床障害の要因
うまくいかない原因はどんなところにあるのでしょうか。
小田原先生 仮に最初の採卵で戻した胚盤胞がすべてグレードのよいものだとしたら、何か着床を妨げる原因があるのかもしれません。
青空さんは卵管閉塞があるということですが、もしその閉塞が卵管水腫のようなタイプになっていれば、それが着床障害を引き起こすこともあります。
そのような場合は、水がたまっている部分を除去してから移植するという選択肢もあるかもしれません。
また、免疫的な問題で着床しにくくなるというケースも。
体外受精を何回か行って、形のいい胚をくり返して移植しても妊娠に至らない場合、子宮内環境の異常が着床を妨げている可能性があります。
まだまだ出来る検査がある
それはどうやって調べるのですか?
小田原先生 子宮内に細いチューブを挿入して子宮内を洗浄し、洗浄液内の炎症細胞の数、MMPというたんぱく質の測定と内膜組織検査を行います。
子宮の中に免疫的な崩れがあると、このMMPの値が高くなってくるのです。
もし上昇しているようなら、ステロイドや抗生物質を使って分泌を抑え、着床率を上げるようにします。
今後の治療方針は?
小田原先生 これまでの卵巣刺激時のホルモン値や胚のデータから誘発法や移植法を再検討しつつ、このような着床に関する検査も並行して受けられてみてはいかがでしょうか。