精子濃度、奇形率の値も悪く、顕微授精したけど失敗……何か打つ手はないでしょうか?

田中 温 先生  順天堂大学医学部卒業。越谷市立病院産科医長時代、診療後ならと いう条件付きで不妊治療の研究を許される。度重なる研究と実験は毎 日深夜にまで及び、1985 年、ついに日本初のギフト法による男児が 誕生。1990 年、セントマザー産婦人科医院開院。日本受精着床学会 副理事長。2009 年度よりJISARTの理事長に就任。「今年に入って、 分娩の取り扱いをやめたんです。夜中に緊急で呼ばれることがなくなり、 不妊治療に専念できるようになりました」と田中先生。今後、手術室 と培養室も基礎から見直し、改善していく予定だそう。
あっこ0408さん(32歳)からの投稿 Q.2人目不妊です。4歳の娘は治療せずに授かりました。採血、子宮卵管造影検 査では異常なし。クロミフェン内服により子宮内膜が薄くなり、セキソビット® に変更するも効果なし。7月に精液検査を受けたところ、精子濃度60万~ 600万/mL、奇形率 59~88%とともに悪く、高速前進運動率ゼロでした。 採血結果はFSH:32.8と高値で、医師からは「あと1年ほどしか治療できな いだろう」と言われました。主人の結果がわかり、顕微授精をすすめられて去 年初めてしましたが、授かることはできませんでした。治療法はないと言われ、 現在、主人は何もしていません。やはりこの結果では打つ手はないのでしょうか?

精液検査は複数回

精子検査の結果が悪く、2人目の妊娠を諦めかけているようです。
田中先生 通常、男性の精子検査は1回で決めず、複数回行ったうえで結論を出すのが原則です。
あっこ0408さんのご主人の場合、精子濃度 60 万〜600万/ mL 、運動率も7〜 22 %と大変幅があります。
また、FSH値が 32 ・8と、ものすごく高いことも気になります。
このFSH値は、本来なら精巣で精子がつくられていない、非閉塞性無精子症の値です。
その割に精子濃度は少ないとはいえ 60 万〜600万/ mL ある。
あっこ0408さんのご主人の臨床結果と一般的なデータとのズレもありますから、できればもう1〜2回、精子検査とホルモン検査を同時に行うことをおすすめします。
それでも検査結果が同じような内容であれば、やはり顕微授精しか方法はないでしょう。

顕微授精に運動率は関係ない

顕微授精をしても妊娠に至らなかったとのことですが……。
田中先生 精子は自分で泳いで卵子と受精するため、プロペラの役割となる尻尾が元気に動かないと泳いでいけません。
ですが、顕微授精は精子を直接卵子に入れるわけですから、動きは必要ありません。
また、奇形率は 59 〜 88 %ですから、2割弱は正常な精子だということ。
精子の運動率や濃度が低く、奇形率が高くても、正常な精子を1匹だけ選ぶ顕微授精が行えたということは、正常値の人と同じ条件で治療をしているということです。
それなのに着床しなかったのであれば、卵子の質に注目すべきではないでしょうか。

卵子の質が最重要視される

原因は卵子にあると?
田中先生 顕微授精が成功するかどうかの鍵は卵子が握っています。
もっと言えば、顕微授精に限らず不妊治療の生殖補助技術の結果は、8割が卵子で決まります。
そのため、我々臨床医が最重要視するのは「いかにしてよい卵子をつくるか」ということ。
卵子の質を上げる、いい卵子をつくる治療として、排卵誘発法の選択をもう一度考えてみてはいかがでしょう。
あっこ0408さんは、クロミフェン内服により子宮内膜が薄くなり、セキソビットⓇに変更しても効果がなかったとのことですが、排卵誘発法はこれだけではありません。
ご自分の状態に合った治療を選択し、いい卵子をつくったうえで、再度、顕微授精を行うというのが、最善の方法ではないでしょうか。
あっこ0408さんはまだ若く、身体バランスも理想的のようですから、諦めずに治療を続けていただきたいですね。
 ※セキソビットⓇ:一般名はシクロフェニル。排卵誘発剤の一つ。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。