タイミング療法を続けるか体外受精に進むかで迷っています【医師監修】

【医師監修】蔵本 武志 先生  久留米大学医学部卒業、山口大学大学院修了。山口県立中央病 院産婦人科副部長、済生会下関総合病院産婦人科部長を経て、 1990年オーストラリア・PIVETメディカルセンターへ留学。帰国後、 1995 年蔵本ウイメンズクリニック開院。O 型・おうし座。昨年10 月にアメリカで行われた生殖医学会に参加。その際に、ボストン郊 外にある全米最大の不妊治療センターとして知られる「ボストン IVF」を訪れ、有意義な時間を過ごしたそう。
ペンペンさん(38歳)からの投稿 Q.タイミング療法3回目で妊娠し、35歳で1人目を産んだワーキングマザーで す。半年前から2人目が欲しくなり、通院してタイミングを3回試みましたが 妊娠しません。排卵、卵管造影検査、ホルモン・血液検査は問題なし。今度 主人の精子の運動量を検査しますが、先生からは「1人目で問題なし、ヒュナー 検査問題なしの結果から、おそらく大丈夫ではないか」とのこと。年齢のこと もあり、あと半年誘発剤を使いながらタイミングを計るべきか、体外受精に進 むべきか迷います。体外受精は経済的にも2回ぐらいが限界です。どちらを 選択すべきか、アドバイスをお願いします。

加齢と共に、妊娠しにくくなる

2人目をご希望で治療中とのことですが。
蔵本先生 一般的に女性の体は、 37 歳頃から卵子数が急激に減少します。
卵質の低下にともない、妊娠率も下がります。
ですから、35 歳の出産時より、 38 歳では、 妊孕性(妊娠しやすさ)が低下しています。

排卵誘発は長く使うと効かなくなる?

このままタイミング療法を続けて、排卵誘発剤を長く使うことに抵抗があるようですが。
蔵本先生 当院でも、体外受精へ進むまでは強い刺激はしていません。
強い刺激を毎月続けると、卵巣の反応が薬によって悪くなりますので。
頭痛薬などを例にとってみても、人間の体は慣れてくると効きにくくなることがあるでしょう。
現段階で血中の抗ミュラー管ホルモンを測ると、卵巣の予備能(排卵誘発して多く卵子が採れるかどうか)がわかり、治療のステップアップの目安になりますが、測定できないのであれば、月経初期の血中FSHが 10 mI U/ mL 以下であること や、月経初期に経腟超音波検査を行い、小卵胞数が7個ほどであれば、あと1〜2回タイミング療法を続けるか、3回ほどを目安に人工授精を行ってもいいでしょう。

人工授精では受精は確認できない

タイミング療法に比べて、人工授精のメリットはなんですか?
蔵本先生 受精する場所である卵管膨大部により多くの精子を送り込むことができるので、タイミング療法より受精率は上がります。
人工授精は排卵日近くか排卵直後あたりにご主人の精液を洗浄・濃縮して、子宮腔内に運動性のよい精子を注入します。
ただし、受精は卵管内で行われるため、確実に受精したかどうかを見極めることはできません。
受精したかどうかを見極めるには体外受精しかありません。

ステップアップのタイミング

ペンペンさんの場合、どのタイミングで体外受精へステップアップするのがいいでしょうか?
蔵本先生 お子さんが1人いらっしゃるということ、検査でそれほど異常がないのであれば、3年前と現在の違いは年齢です。
ですから、半年を目安に軽く刺激をしつつ、あと1〜2回タイミング療法を行ってから人工授精に進むのがいいと思います。
もちろん今の段階で人工授精に進んでもいいですよ。
あるいは、卵巣予備能の低下がみられ、非常に焦っていて、できるだけ高い妊娠率を望むのなら、すぐに体外受精にトライするのも一つの方法です。
体外受精は複数の卵子を採取して受精させ、その中から形のよい胚を選択して子宮腔内に戻すため、人工授精に比べて4〜5倍の妊娠率が望めます。
不妊治療は必ず順番を追って進まなければいけないわけではありません。
これらのことを踏まえて、主治医やご夫婦でよく相談されるといいと思います。
※FSH:脳下垂体から産生・分泌される卵胞刺激ホルモン。卵巣に作用して卵胞の形成・発育を促す。
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