新鮮・凍結、妊娠率は?
先生は、新鮮胚移植と凍結胚移植、どちらのほうが妊娠率が高いと考えていますか?
臼井先生 臨床で感じている限りでは、妊娠率はそれほど変わらないように思います。
当院の場合、凍結はほとんど胚盤胞まで育ててから行っています。
胚盤胞まで育つ受精卵はやはり生命力のあるものということになると思うので、その点からみれば妊娠する確率は確かに上がると思いますが、凍結胚移植がベストとは言えないと思います。
その時の患者さんの状況によって、適した移植法があるのではないでしょうか。
凍結胚移植を選択するのは?
凍結胚移植を選択する時は、どのような場合でしょうか。
臼井先生 卵巣刺激の際、クロミフェンを使用すると子宮内膜が薄くなる方がいます。
厚さをみて8㎜以下の場合、また形がよくないという場合は凍結を選び、子宮内膜の環境が整ってから移植をしています。
数値の目安は E2 と P4 を比較して出していますが、 P4 が3 ng/ mL とか4 ng / mL になっている方は凍結したほうが妊娠率が高いようですね。
他に、注射をして卵巣刺激をしている時に卵巣が腫れてしまうような方も凍結に。
子宮の状態をしっかり整えてから戻すようにしています。
初期胚で移植するケースは?
凍結の場合はほとんど胚盤胞で、ということですが、初期胚で移植することはないのですか。
臼井先生 すべての方が胚盤胞で移植するとは限りません。
当院の場合、初回は初期胚で移植することが多いですね。
年齢が高い方だと胚盤胞まで育たないことも多いですから。
初期胚でもきれいに受精卵が育って、子宮内膜もいい状態に整う方は妊娠率がいいですね。
卵管に詰まりや腫れなど障害のある方は初回から胚盤胞による移植をするようにしていますが、大きな問題のない方は初期胚移植でもいいと思います。
外で培養する時間が長くなるよりは早くお腹の中に戻してあげたほうがいい場合もありますし。
基本的にはあまり手を入れずに、シンプルにいったほうがいいのではないかと思っています。
その人に合った方法を
「凍結・胚盤胞移植がベスト」と信じている方も多くいらっしゃるようですが……。
臼井先生 どの方法が最も妊娠する、とは一概に言えないと思います。
排卵誘発に関してもそうですが、その方に合った方法を見つけることが一番大切ではないでしょうか。
新鮮胚移植で結果が出なかったら、凍結にしてみる、胚盤胞で着床しなかったら次は初期胚でトライする、もしくは培養液を変えてみるなど、一つのやり方に固執せず、結果を分析しながら適した方法を模索していくことが重要だと思っています。
※GnRHアナログ製剤:性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)放出ホルモンに類似した構造を持つ薬。 脳下垂体に作用して、性腺刺激ホルモンの分泌を促す薬。スプレキュア®、ナサニール®などの点鼻薬がある。