胚盤胞まで育てた受精卵の移植で、さらにすべて凍結してシート法で戻す方法を基本としています

塩谷 雅英 先生 島根医科大学卒業。卒業と同時に京都 大学産婦人科に入局。体外受精チーム に所属し、不妊症治療の臨床に取り組 みながら研究を継続する。1994~ 2000年、神戸市立中央市民病院に勤 務し、顕微授精による赤ちゃん誕生に 貢献。2000年3月、不妊専門クリニッ ク、英ウィメンズクリニックを開院する。 A型・しし座。9月から新たにレーザー 治療を導入した英ウィメンズクリニック。 2011年1月に完成する新規拡張計画 により、その他にも各種の最新システ ムが導入される予定。

新鮮・凍結どちらが高妊娠率?

胚移植について、先生はどのように考えていますか?

塩谷先生 当院では、新鮮胚移植と凍結胚移植における妊娠率について、5年前から月ごとのデータをまとめていますが、凍結した周期の受精卵のほうが妊娠率がはるかに高いです。

凍結胚とは、 37 ℃からマイナス196℃へと受精卵を一気に瞬間凍結すること。

そして、解かす時もマイナス196℃から 37 ℃へと、またドーンと温度を上げます。

これでは受精卵にとっていいはずはないですね。

10%アップする妊娠率の理由

それでは、なぜ妊娠率が上がる?

塩谷先生 この答えは明らかで、凍結した周期のほうが、受精卵を受け取る側の子宮の状態がいいからなのです。

普段なら1個の卵子が育つところを、排卵誘発剤を使っていくつもの卵子を育てた場合、ホルモンの値を調べると、自然の状態の何倍もの値になります。

新鮮胚移植は、この通常のホルモン状態とかけ離れたところへ戻すことになるので、受精卵の着床する力が非常に弱い。

ところが、いったん凍結した受精卵を解かして戻す時というのは、人工的につくった、あるいは自然にできあがっ
た理想的なホルモン状態のところへ戻すので、当然、妊娠率が上がるというわけです。

これは、それだけ素晴らしい凍結技術が確立されているということの裏付けでもあります。

また、当院では胚盤胞まで育てた受精卵を移植する時は、すべて凍結してシート法という方法で戻しています。

これは簡単にいえば、受精卵を育てた時の培養液を凍結しておいて、凍結胚を子宮へ戻す時に一緒に子宮へ戻す移植方法です。

そのまま戻すのに比べて妊娠率が 10 %もアップしますので、これは当院の大原則。

新鮮胚を2個移植するよりも、凍結胚1個の移植のほうが妊娠率が高いため、この方法は多胎を避けるためにも大変有効です。

受精卵への成長過程も重要

受精卵が胚盤胞になるまでの時間も、妊娠率を大きく左右しますか?

塩谷先生 通常、受精卵は採卵して5日目に胚盤胞になりますが、6日目でようやく胚盤胞になる受精卵もあります。

当院のデータだと、1日遅れると妊娠率はちょうど5日目の胚盤胞の半分。

そして、7日目にやっと胚盤胞になれる受精卵は、当院では移植を行いません。

なぜなら、胚盤胞になるまでに7日間を要した受精卵を移植しても、出産にまで至った例が今のところないからです。

受精卵の成長が早いことは、それだけ遺伝子の力が強い、つまり細胞分裂するためのエネルギーを生み出す酵素をつくったり、タンパク質を合成したりする力が強いということ。

だから妊娠率が高くなるのです。

それに、受精卵を育てる培養液にもまだまだ改善の余地があると思いますね。

私たちがつくる培養環境は不完全で、受精卵にとってはまだまだとても窮屈で居心地が悪いもののはず。

一方、排卵の影響で子宮内膜も一日一日、刻々と変化します。

受精卵と子宮内膜がそれぞれに成長して、両者のタイミングがバッチリ同調したとき、女性は初めて妊娠することができるのです。

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