【医師監修】古井 憲司 先生 1986年日本医科大学卒業。1987年 名古屋大学産婦人科学教室入局後、名 古屋大学付属病院の文部教官を務め る。大垣市民病院の産婦人科医長を経 て、1998年クリニックママ開院。あま り笑顔が得意でないとはにかむ先生。 でも上の写真の通り、いつも素敵な笑 顔で患者さんを迎えています。
キリンママさん(34歳)からの投稿 Q.体外受精で授かった4歳の男の子がいます。現在は2人目不 妊で2年前から治療中。2回採卵、6回体外受精しました。受 精卵は15~18個と多く、4個ほどは胚盤胞になります。グレー ドはよく、精子も問題なし。しかし昨年、凍結胚盤胞での妊娠 が8週目で稽 けい留 りゅう流産。子宮内膜が薄いと言われ、ホルモン療 法をしましたが厚くなりません。およそ6~8㎜以内で、厚く ても8.2㎜ほど。残り1個の凍結胚盤胞を戻すにあたりご指導 をお願いします。
子宮内膜は何ミリ必要?
内膜の厚さが6〜8㎜以内というのは、やはり薄いのでしょうか?
古井先生 胚移植の場合、一般に内膜の厚さは8㎜以上あると良いと思います。
私としては 10 ㎜あってくれれば嬉しいですね。
これは、ドクターによって見解はさまざまです。
内膜はそこまで気にしなくてもよいというドクターもいますし、なかには6㎜以上あればいいよ、というドクターもいますが、やはり実際に胚移植してみると、内膜が薄いと着床率が悪いケースが多いと感じます。
HMG製剤を活用するケース
ホルモン補充療法をしても内膜が厚くならないことがあるのですか?
古井先生 ホルモン補充療法では、内膜が厚くならない場合でも、自然周期で内膜が厚くなる場合があります。
自然周期でもホルモン補充療法でも内膜が厚くならない場合は、私はあえてHMG製剤を打つ場合があります。
これは採卵目的ではなく、内膜を厚くするためです。
採卵目的ではないので、たくさんの量を打つ必要はありません。
HMG製剤は排卵誘発時に使う薬では?
古井先生 卵巣を刺激して卵胞を成熟させる薬ですね。
排卵前の低温期にHMG製剤を注射して、その後にHCGを注射することで成熟した卵子を排卵させる治療法で知られています。
実際に、ホルモン補充療法では内膜が厚くならず、HMG製剤を注射して内膜が厚くなって妊娠した事例を何例も経験しています。
一般には、ホルモン補充療法は優れた治療法だといわれていますし、私もそうだと思いますが、どうしてもホルモン補充療法では内膜が厚くならない場合があります。
また、年齢とともにグレードの良好な受精卵は貴重になってきますから、違う方法をどんどん試して、着床条件を改善していく必要があります。
つまり治療方法は、人によって一概に何がベストとはいえないんですね。
そういった貴重な受精卵を扱うわけですから、内膜の厚さが、できれば8㎜以上ある時に戻してあげるのがよいと思います。
良好胚を凍結保存
今後、どうすればいいでしょう。
古井先生 34 歳という年齢はまだまだ若いほうだと思います。
とりあえず、採卵して良好胚を凍結保存することができれば、妊娠の可能性はまだ十分にあると思います。
内膜の厚さは、まずは8㎜を一つの目安にするとよいと思います。
当院では、胚移植当日に8㎜以下なら戻しません。
受精卵がもったいないから、次回、内膜が8㎜以上になったら戻しましょうね、と患者さんには説明しています。
残りの凍結受精卵の数だとか、最後の受精卵だからという気持ちもわかりますが、やはり内膜が厚くなるのを待ったほうが確率は高いと私は思います。
8.2 ㎜になった時がどんな状況だったのか、それを再度、検証してみるのも大切だと思いますよ。
※HMG(製剤):卵巣に作用して発育卵胞を形成するヒト下垂体性性腺刺激ホルモン剤。黄体 形成ホルモンともに卵胞の成熟促進と、卵胞ホルモンの分泌を促し、排卵の準備をする。