グレードのよい胚盤胞を移植しているのに、 着床しないのはなぜ? 何か治療法はないのでしょうか。 宮崎レディースクリニックの宮崎先生にお聞きしました。
【医師監修】宮崎 和典 先生 大阪医科大学医学部卒業。学生時代の新生児医療への興 味がきっかけとなり、体外受精や不妊治療の世界を志す。同 大学産科婦人科講師を経て、1992年に不妊症、不育症治 療専門クリニック、宮崎レディースクリニック開業。開業当初 より泌尿器科の専門医による男性不妊外来を開設する。A 型・しし座。最近、寒天ダイエットの効果で5㎏の減量に成功。 中性脂肪やコレステロールの値まで大幅にダウンして「とても 体調がいい」とご満悦。
ちよこさん(会社員・31歳)からの投稿 Q.凍結胚移植をしていますが、なかなか着床してくれません。 3回目の移植で「グレードのよい胚盤胞を移植しても着床しない、 極めて厳しい状況ですが、治療を今後も続けますか……?」 との悲しいコメントを担当医から言われてしまいました。 陰性判定で頭が真っ白なうえに、見放されたような発言で、 心が砕け散ったような気持ちです。着 ※ 床障害なのでしょうか。
最終的には、卵子の質
着床障害の不安を感じながら、主治医からの厳しい言葉にショック。どうすればいいでしょうか。
宮崎先生 31 歳で先生からこのコメントを言われてしまうのは、言い方にもよるでしょうが、結構キツイなと感じてしまいますよね。
ちよこさんの場合、胚盤胞まで、しかも凍結できるようないいグレードの胚盤胞が育つことがわかっているのだから、妊娠できる将来的な可能性はかなりあると思うんですよ。
見通しはそれほど暗くないです。まだ若いし、いろいろな方法があると思います。
私なら「あまり焦らないでいこうよ」と言ってあげたいですね。
結局、最終的にはいい卵子ができるかどうかです。
40 歳を超えていてもいい胚盤胞ができれば、妊娠の可能性はある。
ただ、そのいい卵子ができる確率が下がってしまうから、治療も回数が必要になるわけです。
不育症は、まだ研究段階
1回目はホルモン補充、2回目は自然周期での移植。アスピリン剤の服用や、排卵誘発法を変えるなど、主治医もいろいろと試みてくださってはいるようです。
宮崎先生 なるほど。
いわゆる不育症で着床しないというのは、早期に流産が起こってしまうような状態です。
そして、どのクリニックもそれを防止するためにいろいろな方法を試みているわけですが、この方法が一番いいという結論はまだない。
信頼できるデータがなく、比較検討できない領域にあるのです。
そんななかで、私が最も効果があるかなと感じているのは、黄体ホルモンの治療で使うHCGですね。
気をつけて使えば、最も効果を期待できると思っていますが、注射薬の量を間違えると、今度は過剰刺激で卵巣が腫れてしまう。
特に治療の途中で担当医が変わったりする場合、薬の量の微妙なニュアンスが伝わらず、そういう副作用が出る危険性もありますので、経過に注意しながら行うことが大切です。
受精卵のグレードについて
胚盤胞のグレードを気にしすぎるのも、よくないのでしょうか。
宮崎先生 そうですね。グレードは、患者さんがみんな聞きたがるので答えますが、あくまでも形態の問題ですから。
たとえば、たくさんの凍結胚を数回に分けて移植したとします。
普通はグレードのよい順に移植するわけですが、最後の2個になって、グレード「CC」というあまりよくない胚盤胞を2個移植したら双子を妊娠した、なんていう例も結構あります。
ちよこさんの場合、卵子はきちんと受精しているし、胚盤胞まで成長できることは大きなファクター。
男性側にも特に問題がなければ、治療を諦めないでほしいですね。