

【医師監修】渋井 幸裕 先生人 東邦大学医学部卒業。医学博士。東邦大学大森病院で体外受精グルー プにて研究、 診察に従事する。2003 年、キネマアートクリニック開院。 現在、東邦大学大森病院客員講師。日本生殖医療心理カウンセリング学 会幹事長、日本女性心身医学会幹事。O型・おひつじ座。学生時代はア メリカンフットボールで鍛えられたそう。現在は漫画『ONE PIECE』の 読破に挑戦中!
さくらんぼさん(30歳)からの投稿 Q.人工授精6回、後に体外受精2回目で卵子が3個採れ、2回胚盤胞移植を行いました。2回とも陽性でしたが、1個は ※ 化学流産、 1個は胎のう確認後に流産。現在は治療休止中で、凍結初期胚 が1個残っているので、再開したら移植を予定しています。でも 周囲から「前回のものを使うより、採卵しなおしては?」と言われ、 このまま初期胚を移植すべきか、採卵しなおすべきか、迷ってい ます。また、 ※ 子宮卵管造影検査もしたほうがいいでしょうか?
プラスの情報にも目を向ける
胚盤胞移植後、2回とも流産してしまったとのことですが。
渋井先生 流産をしてしまったのは悲しいことですが、不妊治療をして体外受精2回とも妊娠されているということは、経過としては決して悪くない状況だと思います。

後ろ向きに捉えると、流産という事実だけを考えてしまいがちですが、前向きに捉えれば今までの経過にはプラスの情報も入っています。最終的な妊娠の成立には至りませんでしたが、現実に妊娠しているのですから、不妊症ではないともいえます。
移植か?再採卵か?
1個残っている凍結初期胚の移植か、それとも採卵しなおすかで、迷っていらっしゃいます。
渋井先生 ご質問内容から推測できる治療の経過から考えると、私はやはり凍結初期胚の移植を優先したほうがいいと思います。
なぜかというと、今ある凍結胚で妊娠の可能性が十分あるからです。
また採卵しなおせば、それだけ高額の費用がかかる点もあわせての結論です。

周囲の方のさまざまなアドバイスは、一つの情報を仕入れるというスタンスで聞かれたらいかがでしょうか。
治療に迷ったときは、何よりも担当の先生に意向や迷いをきちんと伝え、よく話し合うことが大切です。
卵管造影検査の必要性
卵管造影検査は必要でしょうか?
渋井先生 あえて今、しなくてもいいかと思いますが、するとしたら被ばくのない ※ 通水検査もありかと思います。

卵管造影検査で妊娠率があがるという保証はないのですが、念のため検査してもいいかもしれません。
また、反復流産ということで、不育症に準じた検査をするかどうかは担当の先生とご相談されてもいいかもしれません。
よかった経過を信じる
今までの結果をどう受け止め、治療を進めたらよいでしょうか?
渋井先生 一般的には、不妊治療1回あたりの成否で比較すると、妊娠するよりも、妊娠しないほうが多いわけです。
次の治療を選択するにあたっていろいろな考え方はありますが、さくらんぼさんのように、〝結果がよくなかったけれど経過はよかった〞という場合は、もうちょっと頑張って、同じ方法を繰り返してみるのも手だと思いますよ。

流産した直後でつらいお気持ちはよくわかります。少しお休みしたら、深く悩まずに前向きに再トライしてみたらいかがでしょうか。