【医師監修】福田 勝 先生 順天堂大学医学部・同大学院修了。米国カリフォルニア大学産婦人科学 教室留学後、順天堂大学医学部産婦人科学教室講師を経て、1993年 福田ウイメンズクリニック開院。「患者さんの意向に応えるのがプライベー トクリニック」という考えは開院当時から変わらない。クリニックのスタッ フは全員女性だが、「女性だから」という甘えはなく、一人ひとり不妊治 療・看護にたずさわるスタッフとして厳しく指導している。O型・みずが め座。
すみれさん(37歳)からの投稿 Q.1年前からタイミングをとっていますが、なかなか妊娠しなかった ため、子宮卵管造影検査をしたところ、両方の卵管が詰まってい たことが判明。その検査で右側だけ開通し、現在もタイミング療 法で自然妊娠を待っていますが、先生から「そろそろ体外受精はど うか」とすすめられています。いきなり体外受精ではなく、詰まっ ているもう一方の卵管を開通させる方法はないのでしょうか。
初期検査の重要性
すみれさんは、不妊治療を始めて1年ほど経ってから卵管の詰まりが判明したということですが、まずこれについてどう思われますか?
福田先生 僕はその時期について少し疑問を感じます。
タイミング療法を1年行って、それで結果が出ないから卵管の状態をみてみた、というのは順番が違うような気がします。
まず初めは、なぜ妊娠できないか、その原因を探るための検査からスタートするべきです。
子宮卵管造影検査はもっと早い段階でやるべきだったのではと思います。
両方の卵管が詰まっていたのに1年間タイミングをとりつづけていたのは何だったのか、と患者さんは不信感を抱いてしまうのではないでしょうか。
片方の卵巣での自然妊娠?
検査によって右側の卵管は開通したということですが、片方の卵管だけでは自然妊娠は難しいのですか。
福田先生 詰まっている左側の卵巣で排卵しても卵は右側の卵管に取り込まれませんから、その場合は妊娠は不可能ですが、右側が正常でそちらから排卵すれば妊娠の可能性はあります。
両方が正常の場合に比べたら、当然チャンスは少なくなってしまいますが。
もう一つの卵管を開通させる方法はあるのでしょうか。
FTは外来でもできる施術ですが、それで詰まりを改善したからといって、イコール妊娠率が上がると言い切れるものではありません。
正常に通ったとしても卵管の他の機能がきちんと働いているかどうかはわかりません。
もちろん、不妊原因が卵管の詰まりだったという方には有効だと思います。
ドクターが、選択肢を示す必要性
すみれさんは、タイミングからいきなり体外受精をすすめられたことに戸惑っているようですが……。
福田先生 右側の卵管が正常に通っているようなら、タイミング療法の次に人工授精という手もあるはず。
すみれさんの場合は排卵誘発をしたほうがよいと思います。それでも左側の卵管をどうにかしたい、ということならFTという方法も。
もちろん、年齢的なことや他の因子を考えて体外受精に進むというステップもあると思います。
すみれさんが不安に感じたのは、これらの提示がなかったからではないでしょうか。医師側は治療の過程でいくつかの選択肢を提示して、患者さんに納得していただきながら治療を進めていくことが大切だと思います。
※卵管鏡下卵管形成術(FT):バルーン(風船)を内蔵したカテーテルを腟から卵管に挿入して、狭くなった箇所でバルー ンを膨らませ、卵管を広げる方法。