OHSSで入院してから主人や家族が不妊治療に抵抗を抱くように……【医師監修】

【医師監修】俵 史子 先生 浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務医時代より不妊治療に携 わり、2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。 2007年、 出身地の静岡に俵史子IVFクリニックを開業。 〝健康な 体=妊娠しやすい体〞 をつくるため、生活習慣を改善する「体質改 善外来」を9月からスタート。食事や運動、ストレスなどについて 正しい知識が得られるので、患者さんに大好評!
涙腺さん(主婦・28歳)からの投稿 Q. 生理不順と排卵障害のため、 今年の3月から不妊治療に通っており、 今はタイミング法を行っています。 主人も治療に協力的なのですが、 今月、薬の副作用によりOHSSに。 血栓症と腎機能低下の危険があり、 1週間入院しました。 無事に退院できたのですが、それ以後、 主人も家族も私の体が心配で、 不妊治療に対して抵抗を感じるように。 みんなの気持ちはうれしいけれど、 子どもは欲しい……。

OHSSはなぜ起こる?

OHSSはなぜ起こってしまうのですか?
俵先生 OHSSは ※ 巣過剰刺激症候群と言われているもので、通常の状態で起こる症状ではありません。不妊治療のために ※ MG製剤などの排卵誘発剤を使うことで起きてくる副作用なんですね。涙腺さんのように排卵障害の方がなりやすく、そのなかでも 嚢胞性卵巣症候群や※下部性無月経が原因という方は、特になりやすいと言われています。
また、育ってくる卵の数に比例して副作用も起きやすくなるということで、反応がいい若い方のほうがリスクが高いといえます。
※卵巣過剰刺激症候群(OHSS):排卵誘発法により多数の卵胞が発育・排卵することで、卵巣が腫れる、腹水や胸水がたまる、血液の電解質バランス異常、 血液の濃縮などの症状をみせるもの。 ※HMG製剤:卵胞の発育を促す下垂体性性腺刺激ホルモン製剤。排卵誘発療法に用いられる。 ※視床下部性無月経:視床下部から分泌されるゴナドトロピン放出ホルモンの分泌異常による無月経のこと。視床下部の腫瘍、 またストレスや過剰な運動などが原因となることもある。

重症の場合、入院も

涙腺さんは入院までされたそうですが、それほど重い症状が出るのでしょうか。
俵先生 症状の程度には軽症・中等症・重症とあるのですが、卵巣が腫れることで膨満感や吐き気、お腹の中にタンパクが逃げることで腹水貯留を起こしたりします。
重症になって血液内脱水がひどくなると血栓症を起こしたり、胸水がたまって呼吸困難の状態になってしまうことも……。
こうなってしまうと生命に関わってくることもあるので、適切な治療と絶対安静が必要。涙腺さんも大事をとって入院したのでしょう。

副作用を避けるために

こうした副作用を避けながら不妊治療を続けることは難しい?
俵先生 残念ながら、OHSSになりやすい方は、次に注射を打ったときにも副作用が出る可能性があります。排卵誘発とは、どうしてもリスクを伴ってしまう治療なんですね。まったくゼロにすることはできないかもしれませんが、現在、医療側も注射の量を調節する「低用量漸増法」などで、できるだけ副作用を軽減し、重症化を防ぐ努力をしています。
ご主人やご家族は不妊治療が怖くなり、治療を続けさせたくないとも思っているようですが……。
俵先生 大切な方が苦しんでいる姿を見たら、当然そう思ってしまいますよね。ご家族はきちんとした情報がないから、より不安になっているのでは。不妊治療はリスクも伴いますが、正しい情報を事前に得ておけば、副作用などに対する心の準備もできますし、リスクを軽減する治療法や体外受精など他の選択肢を考えることもできます。
一度、ご主人も一緒に医師の説明をお受けになってみてはいかがでしょうか。
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