精子の奇形率が98 %以上顕微授精を続けていくしかない?【医師監修】

【医師監修】京野 廣一 先生 福島県立医科大学卒業後、東北大学医学部産科婦人科学教室入 局。体外受精の第一人者、鈴木雅洲教授に学ぶ。1995年、レディー スクリニック京野(古川市)開院。2007年、京野アートクリニッ ク(仙台市)開院。男性不妊の科学的解明はもちろん、その前の 段階である勃起障害や射精障害、夫婦のセックスレスのメンタル 面における改善策も重要と考える。B型のおひつじ座。
晴郎さん(主婦・33歳) Q. 男性不妊で顕微授精に挑戦しています。 精液量、運動率は標準値を上回っていますが、 奇形率だけが何度検査しても98%以上で、 重度の男性不妊と診断されました。 先生に「全部が奇形ではないので、良い精子が 注入できれば大丈夫ですよ」と言われ、 顕微授精を繰り返すものの、毎回失敗しています。 泌尿器科で検査して、 何か治療を受けたほうがいいでしょうか?

98%の奇形率

98 %の奇形率というのは、やはり異常という診断になりますか……。
京野先生 Diff -Quickという染色液で精子を染めて形態を調べるクルーガーテストで、正常に染色されるものが 15 %以上あれば、一応正常と言われています。奇形率が 98 %というとやはり異常な数値で、奇形精子症と診断していいと思います。
精子が奇形になる原因は? 効果的な治療法はあるのでしょうか。
京野先生 一部、先天的なものもありますが、その原因はほとんど解明されていません。ゴナドトロピン療法など、精子の造成能力をある程度高める治療法はありますが、精子の奇形を改善する画期的な治療法は、今のところないんですね。

奇形精子は研究段階

奇形精子症については、まだわかっていないことが多いんですね。
京野先生 精子の奇形といっても、頭部が大きかったり、中片部が膨らんでいたり、尻尾が2本あるなど、さまざまな種類がありますが、そのなかの一つである、頭部円形精子症( Globozoospermia )という奇形については、受精できない原因と対処法が解明されつつあります。
精子の頭部には、スパムファクターという活性化因子があり、それが卵子を活性化することによって受精することができるのですが、頭部が丸く円形状になっている精子はこの活性化因子を欠いていることが多い。当院の共同研究の結果では、このような奇形精子の場合、卵子を活性化してあげると受精率が上がるということがわかってきました。

施設選びがカギ

治療法はほとんどないということで、やはり顕微授精を続けていくしかないのでしょうか?
京野先生 そう思いますが、その前に施設の選択が重要になってくると思います。知識や経験がない施設だと、「顕微授精を何度やってもダメだ」となってしまう可能性がありますから。どんな奇形で、どのような対処をしたらよいのかを正確に見極めることができる施設を選ぶことが大切。
頭部円形精子症の場合も、電子顕微鏡を使って診断し、なおかつ卵子を活性化できる環境を整えている施設が必要になります。男性不妊に力を入れている病院で適切な対応をすれば、難しい奇形精子症であっても妊娠は望めると思います。諦めないで、頑張っていただきたいですね。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。