【医師監修】宮崎 和典 先生 大阪医科大学医学部卒業。学生時代の新生児医療への興味がきっか けとなり、体外受精や不妊治療の世界を志す。同大学産科婦人科講師 を経て、1992年に不妊症、不育症治療専門クリニック、宮崎レディース クリニック開業。開業当初より泌尿器科の専門医による男性不妊外来を 開設する。しし座・A型。最近の気分転換は写真。昨年末はカメラを片 手にパリヘ。
まみさん 27 歳 Q. 一度凍結した初期胚を融解して 胚盤胞まで育てた後、 再び凍結しても大丈夫なのですか? 受精卵の着床率や妊娠率などに 影響がないか気になります。
胚凍結の目的
凍結胚移植についての質問です。凍結した初期胚を融解した後、胚盤胞まで育て、また凍結することができるのかという質問です。
宮崎先生 技術的には何ら問題はないですね。凍結に耐えられるだけの卵だったら、融解してから再び凍結しても大丈夫。そもそも、胚凍結というのは目的として行うものではありません。移植する胚の数がガイドラインで決められているので、余剰胚を凍結しておくためのものです。
日本は世界的に見ても凍結の技術が非常に優れていますし、グレードのいい卵なら当然問題なくできます。
凍結~融解、妊娠率への影響
受精卵の着床率や妊娠率、また妊娠した際の胎児や乳幼児にも、影響がないか心配されています。
宮崎先生 そういう報告は聞いたことがないですね。当院でも 16 年ほど前から凍結胚移植を行っていますが、胚盤胞まで育ててから移植するので、むしろ妊娠率は高いです。
凍結していない新鮮胚より、凍結胚移植するほうが妊娠率は高い?
宮崎先生 はい。今は初期胚を凍結するよりも、胚盤胞まで育ててから凍結する胚盤胞凍結が主流になってきています。
胚盤胞の段階まで受精卵が育っているということは、卵が発育する能力、着床する能力が高いということがある程度示されているわけだから、やはり妊娠率も高いんですよ。
先ほども言ったように、胚凍結は目的ではありませんから、順序として最初から凍結をすすめることはありません。いい卵がたくさん採れた場合は胚盤胞まで育ててから凍結するのがよいでしょう。
先生ならどうする?
先生ならどのような治療のプランになりますか?
当院では、この方のように、まだ 20代で受精卵が9個ある場合なら、胚盤胞まで育ててから凍結し、ホルモン補充周期ではなく、自然周期で戻す方法をまず提案すると思います。