【医師監修】詠田由美先生 福岡大学医学部卒業。日本産科婦人科学会認定医。福岡大学 病院不妊治療グループチーフ(福岡大学医学部講師)などを経て、 1999年に開業。不妊治療にかける熱い情熱に、患者さんから の信頼も厚く、すでに1万人以上の診療を経験。A型・かに座。 9歳からはじめ、一時中断していたクラシックバレエを2年前か ら再開。時間を見つけてはスタジオでレッスンに励んでいる。
ぱんださん 38 歳 Q. 夫の精子の運動率が低く、卵巣過剰刺激症候群 (OHSS)も怖いので、なるべく多く採卵して、 受精率を上げるのがいいのかなと思っています。 このままの治療方針でいいのでしょうか? また、精子の運動率の改善方法ってありますか?
運動率の改善法
精子の運動率の改善方法というのは、あるのでしょうか?
詠田先生 不妊の治療というのは、まずご夫婦それぞれの体の状態を検査し、そこからご夫婦にあった治療方針を医師が一緒に探していくというのが基本かと思います。
ぱんださんのご主人の精子は量も濃度も平均値程度ということですが、運動率が低い。これにはいろいろな原因が考えられますので、一度、男性不妊症の外来を受けて、検査されてみてはどうでしょう。
もし、前立腺の炎症や※ 精策静脈瘤などであれば、それにあった治療で運動率が改善されることもあるかもしれませ
ん。
ん。
うちでは男性不妊症の専門医と提携し、2週間に一度、カンファレンスを行って情報交換し、お互いの治療方針を決定しています。原因をしっかり調べること、まずはここからですね。
※精策静脈瘤:精巣内の静脈が広がったり、曲がったりしているために、静脈血が逆流し、精子を造る機能を障害しているとされる。
多くの採卵を目指すべき?
では採卵についてですが、これはやはりなるべく多く採っておくほうがいいのでしょうか? 現在の治療を続けるべき?
詠田先生 ぱんださんの場合、少量の誘発剤を使いながらも、自然周期の採卵を行ってこられたようですね。今まで 10 回採卵され、顕微授精の移植3回、その後の採卵により胚盤胞を2個凍結されているとのことですから、まずは凍結している胚盤胞を一度体内に戻されてみては?
胚盤胞まで卵が成長しているということは、卵の質は悪くないと思うんですよ。それでだめだったら、もしかしたら問題は卵ではなく、着床にあるということかもしれません。内膜が薄い、 ※子宮腺筋症などがあればそれを改善すべく、治療方針の変更が必要になるだろうし。
※子宮腺筋症:子宮 内膜に似た組織が子宮の筋膜で増殖して柔らかい筋が硬く腫れ、こぶ状になることもある。
自然周期という選択肢も
また、自然周期ではない誘発の方法に変えてみるというのも選択肢の一つかと。誘発法を変えることで、卵の質が上昇するということもあります。良質な卵が採れれば、それを凍結してとっておいて第2子につなげるということもできます。
OHSSのリスクはその方の体質などによっても違ってくるので、どんな誘発法をとるかはドクターとしっかりご相談されたほうがいいと思います。