次の治療へ進むタイミングは?

AIH(人工授精)で陽性が出ないと、 続けたほうがいいのか、 体外受精に切り替えたほうがいいのか、 治療法をステップアップするタイミングに 悩んでしまいます。 神谷レディースクリニックで相談してきました。
神谷博文先生 札幌医科大学卒業。同大学 産婦人科学講座、第一病理 学講座に入局後、斗南病院 にて産婦人科科長を10年 間務める。1998年、神谷 レディースクリニックを開業。 麻酔科標榜医、細胞診指導 医。ミュージカル好きで、帝 国劇場や日生劇場にも足を 運ぶ。最近は韓流ドラマに もはまっている。10月31日 生まれ、神秘的なさそり座、 O型。

ドクターアドバイス

治療法を選ぶのは夫婦です。 二人で話し合うことが大切
kanaさん(主婦・31歳)からの投稿 Q.男性不妊で、AIH3回目に挑戦予定ですが、 先生から「次でダメなら体外受精しかない」と言われました。 でも、夫が体外受精に強い偏見を持っていて非協力的。 私は、可能性があるなら何でも挑戦したいのですが……。 今後の治療をどうするかで悩んでしまっています。

AIHからのステップアップ、基準は?

AIH(人工授精)を続けてもなかなか結果が出ないと、いつ次の治療法に進めばいいのか、と悩む人も多いようです。投稿者のkanaさんは、AIHを3回失敗したら体外受精にステップアップするように、すすめられているようなのですが。
神谷先生 この方は、男性側に不妊の原因があるケースですね。精子の数も運動率もかなり低いのであれば、AIHを3回試してダメなら体外受精をすすめられるのは納得できます。
通われている病院の先生は、kanaさんが妊娠しやすい年齢のうちに、より成功しやすい治療法をと考えたのかもしれませんね。
ただし、不妊治療の方法を選択するのはあくまでも夫婦。AIHで妊娠する人の 90 %は5〜6回までに陽性が出るといわれています。kanaさんは 31 歳でまだ若いですから、AIHを5〜6回やってみてもいいのではないかと思います。
精子は数が2000万/ ml 以下、 運動率が 50 %以下で精子減少 ・ 無力症といわれます。しかし、数が少なくても、運動率が低くても、たった一つの精子が受精すれば妊娠するわけですから可能性はゼロではないんですよ。精子数300万/ ml 、運動率 30 %でもAIHで妊娠したケースもあります。
それに、ご主人は体外受精は望まれていないようですから、ご主人が納得するまでトライしてもいいのではないでしょうか。AIHでも、自然周期にタイミングを合わせて行う方法から、排卵誘発剤を使って複数のより質の高い卵子を排卵させて行う方法へのステップアップもありますしね。

年齢とAMHの関係

 31歳のkanaさんよりも、年齢 が高い患者さんに、先生はどうアドバイスされますか?
神谷先生 奥さんが 35 歳以上で、4〜5回のAIHで妊娠しなければ、早めに体外受精へステップアップすることをすすめます。
女性の場合、32 歳を過ぎるころから卵巣機能が低下しますから、妊娠の確率は年齢とともに低くなります。 31 〜 33 歳くらいまでなら、妊孕性(妊娠する能力)が十分保たれています。
不妊原因にもよりますが、AIHで妊娠する可能性が残されているならAIHの累積妊娠率と体外受精一回あたりの妊娠率との差は、それほどありません。
でも、女性の年齢が高くなるにつれて、体外受精のほうが妊娠しやすくなるというのが事実です。
不妊治療の方法を選択するとき、やはり「年齢」は重要なんですね。

神谷先生 そうですね。AIHでの妊娠率は当院では妻が 30 歳で夫に男性不妊がなければ一回あたり8〜10 %ですが、妻が 40 歳を過ぎると4%以下に落ちます。男性の場合も、40 歳を過ぎると精子の運動率が下がるなど、妊娠しにくくなります。

ただし、年齢だけで治療方法を決めるのが正解というわけではありません。不妊期間、不妊原因、年齢、合併症の有無、既存の治療内容や回数、未婚の意志などさまざまな要因がかかわってきます。

パートんーとの意思疎通

kanaさんが今後の治療方法に悩む背景に、ご主人が体外受精に対して偏見を持っていることがありますが、このようなケースは多いのでしょうか?
神谷先生 男性の場合、子どもはできるだけ自然な形でつくりたい、と考える人も多いようですね。また自分の生殖能力を信じたい気持ちから、不妊治療に難色を示す人もいるようです。
不妊治療に非協力的な夫に、考え方を変えてもらうにはどうしたらいいのでしょう?
神谷先生 今、日本での出産数は年間約110万人。そのうち約2万人の赤ちゃん、つまり、 55 人に1人は体外受精で生まれています。タイミングやAIHも加えれば、多くの人たちが不妊治療を受けて子どもを授かっています。
現代では不妊治療は特別なことではないんです。まずはそれを、知ってもらいましょう。
そして、雑誌、書物、ネットや病院でのカウンセリングなどで、不妊治療の正しい知識を得ることです。大切なのは夫妻が常日ごろから話し合い、気持ちを一つにして不妊治療に向き合うことが大切ですね。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。