薬を使うタイミングを間違えてしまって【医師監修】

処方された薬を間違えて服用した場合は、 医師にきちんと報告したほうがいいのでしょうか? 悪影響が心配、でも先生に言ったら怒られるかも……。 そんなユーザーのジレンマに、 厚仁病院の松山毅彦先生がアドバイスしてくださいました。
監修 厚仁病院 松山毅彦先生 東海大学医学部卒業。小田原市立病院産婦 人科医長、東海大学付属大磯病院産婦人科勤 務、永遠幸レディースクリニック副院長を経て、 1996年厚仁病院産婦人科を開設。日本生殖医 学会生殖医療指導医。おひつじ座のA型。良い と聞いたものは徹底的にデータを集めて、信頼 できるものを治療に柔軟に取り入れていくという 松山先生。医療用サプリメントもその一つ。先 生の指導のもとで使うなら安心!

ドクターアドバイス

サプリを飲んでいる人は サプリを飲んでいる人は それも報告してほしいですね
ケアベアさん(会社員・28歳)からの投稿 Q.「採卵の前々日の昼に点鼻薬をやめてくださいね」と 先生に言われていたのに、夜、 採卵前最後のhCGの注射を しに行って、その後も点鼻薬を使ってしまいました。 ここまで順調にしてきたのに、そのせいでうまくいかなか ったら、なんて考えてしまって……。
ジネコのユーザーにアンケートをとったところ、「不妊治療中に処方された薬を間違えて服用したことがある」という方が6割以上もいました。ケアベアさんの場合は点鼻薬の使い方を1回間違えて不安を抱えているのですが、まず、このお薬は何のために服用するのか教えていただけますか?

薬に関する失敗?

松山先生 ケアベアさんはおそらくプレキュアもしくはナサニールという点鼻薬を処方されたと思うんですが、これは刺激周期という排卵管理法の際に使う薬です。
生理的なホルモンの働きを一時的にストップさせて予期しない排卵を防ぎ、そのうえでHMG※で卵胞を成熟させ、HCG※の注射をして排卵を促します。この方法だと多数の卵胞を発育することができるんですね。
※HMG:下垂体性性腺刺激ホルモン製剤。排卵誘発治療目的で、卵胞の発育を促す。 ※HCG:胎盤性性腺刺激ホルモン製剤。排卵誘発治療目的で、発育した卵胞を排卵させたり、黄体機能を維持・活性化させる。
一度でも多く使ってしまったら悪影響が出てしまいますか?
松山先生 私自身の判断では、ケアベアさんの場合は心配ないと思いますよ。きちんと HCGの注射も打ってもらっていますので、あまり気にされることはないでしょう。

「やめてくださいね」と言われて、やめなかったことは問題にならないんだけれど、逆に1日早くやめてしまった……ということになると、黄体化ホルモンの値が上がってくる可能性があります。そうすると、予期しない排卵が起こってしまう可能性があるんですね。

薬によって、むしろ少なめにとったほうがいいもの、多めに使っておいたほうが無難なものもあります。薬の種類とどんな目的で使うかによって、影響は異なってくると思います。

医師への報告は?

「一度くらいならいいや」とか「こんなささいなことの相談で、先生を煩わせたくない」と思って医師に言わない人もいますが、きちんと報告したほうがいいのでしょうか?
松山先生 私自身は報告していただいたほうがいいと思っています。薬を処方するときは何のためのお薬かきちんと説明していますが、不妊治療中は何種類も出ますから、なかには間違えて服用してしまう方もいます。
患者さんが不安を抱えていたら、それに対して医師がコメントをしていくのは当然だと思うんでね。
 ただ質問や報告をされるときは、 「いつ、どんな間違えをした」「こんな体の異変があった」など、メモに要点を記して整理整頓しておいてもらうといいかな。
そうしてもらうと、こちらも限られた診察時間の中でも情報をきちんと引き出すことができ、的確な処置ができますから。
薬もそうですけど、不妊治療中のミスを先生に報告したら怒られちゃうかも、って心配する人も……。
松山先生 私は怒りませんよ(笑)。ミスを攻めてもしょうがないですよね。それを受け止めて、では良い方向に向かわせるためにはどうしたらいいか。起死回生打をどうやって打つかだけだと思うんです。
打てそうなら打つし、打てそうになければ、「これは犠打かスクイズになって失敗するかもしれないけど、やってみる?」と、リスクもお話しながら打開策を一緒に考えます。

サプリメントも報告?

先生は野球の監督さんみたいですね。良い結果に導くために、ほかに私たちが報告しておくべきことはありますか?
松山先生 お薬の不安はもちろん、副作用については必ず報告してください。そうそう、サプリメントや漢方薬をとっている方はそれも。
サプリもですか?
松山先生 不妊治療に効果的なサプリメントもいろいろ販売されていますが、なかには体質やとり方によって排卵周期を乱してしまうものなどもあるんですね。
予期せぬ変化が出ることがありますから、何でも報告してください。私たち医師は患者さんのコンディションを把握することで、より良い采配を振るうことができますから。
埼玉西武ライオンズの大ファンという松山先生は時にわかりやすく、野球にたとえて答えてくださることも。先生はデータを収集し、一人ひとりの選手に的確な判断をくだす、そんな冷静な分析派という印象を受けました。
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