初めて経験する体外受精に不安がいっぱい。 排卵誘発剤の注射や、採卵時の麻酔など、 不妊治療に伴う「痛み」について、 塩谷雅英先生、詳しく教えてください!
ドクターアドバイス
体外受精、痛みへの不安
編集部 体外受精が初めてという人は、治療に伴う「痛み」について、漠然とした不安や恐怖心を抱く方が多いようですね。
世の中には、1の痛みを100くらいに強く感じてしまう方が少なからずいらっしゃいます。それなのに、いつも周囲から、大げさだと、これぐらい我慢しなさいとか言われてしまう。ただ、心理的な恐怖心が働けば、痛みはその2倍、3倍にも感じられることがあります。例えば、先生との信頼関係がうまくいってなかったりすると、苦痛は間違いなく2倍になるでしょう。逆にすべてをゆだねられるくらい先生を信頼していたら、痛みも半分になる、ということは大いにあると思いますよ。
ペン型自己注射の採用
編集部 ジネコでも、排卵誘発剤の筋肉注射が痛いという声がよくあります。
塩谷先生 針を皮膚に刺すのですから、まったく痛くないというわけにはいきません。ただ、耐えられないような痛みではないはずです。 排卵誘発剤の注射は、方法によっては、7〜 10 日間で毎日1本ずつ打つ場合があります。最近は自宅で自己注射をする方も増えており、当院では指導教室も行っています。
ちなみに、皮下注射のフォリスチムは、つい先ごろ、扱いやすいペン型の注入器が日本で発売できるようになりました。これからどんどん広がっていくんじゃないかな。注射のためだけに通院しなくてもいいので、遠方の方やお勤めの方に有効だと思います。
皮下注射は筋肉注射に比べて痛みが少ない傾向にあるので、痛みに弱い人は、皮下注射でできる治療を医師にお願いするといいでしょう。ただ、患者さんの体質とかホルモンの値によって、どうしても筋肉注射でなければならない場合もありますので、ケースバイケースです。
注射を避けた体外受精
編集部 注射をせずに採卵する方法もあるのでしょうか。
塩谷先生 痛みに対する恐怖心が極端に強い人は、自然周期とか、クロミッドなどの飲み薬を使う採卵方法もあります。ただ、一般的に注射薬を使ったほうが、1回当たりの妊娠率が、使わない場合に比べておよそ3倍高くなるといわれています。もちろん、他の選択肢も提示しますが、当院では費用対効果の関係で注射の選択が多い傾向にありますね。
麻酔について
編集部 注射と並んで心配なのが、採卵時の痛みです。麻酔と聞くと少し構えてしまいますが、麻酔をせずに採卵するとやはり痛いのでしょうか?
塩谷先生 採卵は針を卵巣に進めて採取しますが、大体採血するときの痛さだと考えてもらえれば。ですので、採血できる人は採卵もできますよ。卵が1個の場合なら、採血するのと同じ痛さなので、麻酔はしません。でも、卵が 10 個になると、ある程度お腹の中で針を動かすので、やはり苦痛を伴います。当院では1〜3個なら座薬で痛みを軽減する方法、4個以上なら点滴で静脈麻酔をします。
ただ、静脈内に薬を点滴する際の痛みはあります。担当医とよく相談して、最も体に負担の少ない方法を選択されることが望ましいですね。