【Q&A】初期胚移植の最適な時期~小川誠司先生【医師監修】

ポンタさん(42歳)

初期胚凍結を3個していて、これから初めての胚移植をしていく予定です。
事前検査としてホルモン周期でERPeak検査をしますが、胚盤胞でない初期胚でもERPeak検査の結果を移植で活用していいでしょうか?
胚盤胞移植でなくても効果はありますか?
よろしくお願いいたします。

小川誠司先生に教えていただきました。

東京ARTクリニック 院長 小川 誠司 先生
2004 年名古屋市立大学医学部卒業。2014 年慶應義塾大学病院産婦人科助教、2018 年荻窪病院・虹クリニック、2019 年那須赤十字病院産婦人科副部長、仙台ART クリニック副院長を経て2023年9月、藤田医科大学東京 先端医療研究センターの講師、2024年4月に准教授に就任。2026年2月から東京ARTクリニックの院長に就任。藤田医科大学客員准教授。日本産科婦人科学会専門医。日本生殖医療学会専門医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

●初期胚移植に対して、ERPeak検査の結果は有効でしょうか?

ERPeak検査とは、受精卵が着床できる最適な時期“着床の窓”を子宮内膜の遺伝子発現レベルから特定する検査です。この検査により、胚盤胞の着床時期が分かりますが、初期胚移植の場合は、初期胚の凍結時期に応じて、逆算して移植の時期を推定します。したがって、検査で得られた時間から、D2初期胚であれば72時間前、D3初期胚であれば48時間前に移植することが一般的です。
ホルモン補充周期で移植されるのであれば、この検査は再現性も高く、初期胚移植でも着床時期を知る上で、有用な検査といえると思います。

●初期胚移植と胚盤胞移植でのERPeak検査の違いを教えてください。

ERPeak検査自体は、着床の時期を調べる検査ですので、初期胚移植の場合でも、胚盤胞移植の場合でも、胚盤胞が着床する時期に合わせて、黄体ホルモンを開始してから通常は約120時間後に検査を実施します。
結果の活用は上記に記載した通り、初期胚では、胚の凍結時期に合わせて、逆算して移植を行います。ポンタさんの場合、胚の状況からおそらくD3での凍結胚だと推察されますので、検査で得られた結果の48時間前に移植を行います。


●初期胚移植における最適なタイミングの決定方法を教えてください

胚移植の方法は大きく、ご自身の排卵後に移植を実施する「自然周期移植」と、ホルモン剤により内膜を調整する「ホルモン補充周期」があります。一般的には、どちらの方法にも妊娠率は変わりないと言われています。ただそれぞれ一長一短があり、自然周期ではホルモン剤などのお薬を使わなくてよい反面、ご自身の排卵日を見極める必要があるため、通院回数が増える場合があります。
一方、ホルモン補充では、順調に内膜が育ってくれれば、最初に計画した日程通りに移植することができます。ただ、最近の研究では自然周期の方が、ホルモン補充周期に比べて、妊娠後の合併症(癒着胎盤、前置胎盤、妊娠高血圧症など)の発症率が低いとの報告があります。
どちらを選択するかは患者様の状況にもよりますが、月経が不規則(排卵障害がある)、自然周期では内膜が厚くなりにくい方、あるいはお仕事の都合で通院日が限られる方にはホルモン補充周期をお勧めしています。ポンタさんは事前にERpeak検査をされるとのことですので、おそらく確実なホルモン補充周期を選択されているのだと思います。ホルモン補充周期であれば、先ほど記載した通り、検査結果に基づいたタイミングで移植を実施されることをお勧めします。

●初期胚移植に際して、他に推奨される準備や検査はありますか?

着床に関連した検査は、一般的には2〜3回良好胚を移植しているにもかかわらず、着床しない、いわゆる反復着床不全と呼ばれる患者様に対して行うことが一般的です。
ただ、ポンタさんの場合、1回の採卵で得られる受精卵も少なく、現在凍結されている胚はとても貴重です。したがって、ERPeak検査のように、できる検査を予め行なっておくことも選択肢だと思います。他の検査としては、子宮内を観察できる子宮鏡検査、子宮内膜炎を診断するCD138検査、子宮内細菌叢を調べる子宮内フローラ検査、そのほかに自己抗体や凝固因子など着床不全や不育症の原因となる因子を採血で検査することができます。

●初めての胚移植での注意点や心構えを教えてください。

胚移植はこれまで行われてきた治療の集大成であり、過度に緊張せず、落ち着いて臨むことが何より重要です。移植当日の行動や少しの動きで結果が大きく左右されることは基本的にありませんので、「できることは十分に準備できている」と考えて、普段通りに過ごしてください。移植後は結果が気になりやすい時期になりますが、一喜一憂し過ぎず、治療を継続するためにも心身の負担を減らすことを意識しましょう。また移植後に少量出血したりすることもよくありますが、決して自己判断で薬剤を中止したりせず、特にホルモン補充周期の場合は、医師の指示通り、しっかりとお薬を使用してください。

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