早速ですが、ご質問のお返事させていただきます。
初めにAMHの話からさせていただきます。
AMHは卵巣予備能力を測定する検査です。
AMHが高いほうが排卵誘発の際に多くの卵胞発育を期待でき、
AMHが低い場合にはあまり多くの卵胞発育を期待できないことと
なります。一般的にはトントンさんの年齢を踏まえればAMH:
3.
59は決して低い値ではなくちょうど年齢平均くらいの値であり、
このくらいの値であれば、
体外受精の際にしっかり排卵誘発を行うならば僕の感覚的には8~
15個程度の卵胞発育が期待できるかなと考えます。
今回とんとんさんは卵胞発育が3個しか育ってこなかったというこ
とですが、いくつか考えられるストーリーがあります。
一つはAMHが本来自分の持っている卵巣予備能力よりも高く出てしまった可能性です。医療においては多くの検査がありますが、AMHはその中では比較的誤差の少ない検査と言われていますが、AMHも検査なので必ず誤差があります。本来の卵巣予備能力に対して低く出てしまう場合、高く出てしまう場合があるということです。そのため、実際に診療していても、AMHから見て思ったよりも卵胞発育が少ない人も出てきますし、逆に思ったよりも多く発育してくる人もいます。AMHは数字なのでわかりやすいですが、やはり検査でもあり誤差は必ずあるものなので、別の方法でも合わせて卵巣予備能力を見てみるのがいいかもしれません。これは月経が来る直前あるいは月経中の小さな卵胞の数を見るAFCという方法などになります。
二つ目のストーリーる量は排卵誘発方法における刺激が少なかった可能性です。本来自然の周期において卵胞発育は1個であるところを、排卵誘発剤を使用することで5個、10個というように多くの卵胞発育を期待して行うのが排卵誘発になります。標準的な排卵誘発の際に使用すというのはありますが、人によってはそれでは少なく多くの卵胞が発育してこない場合もあります。その場合には使用する量を増量する場合があります。今回のとんとんさんが使用した量はわかりませんが(使用する薬剤によっては自動的にアルゴリズムで決まってしまう排卵誘発剤もあります。)、AMHを鑑み、発育数が少なければ次回はそれを踏まえて使用する量を増量することでより多くの卵胞発育を期待できる可能はあると考えます。
1回目の排卵誘発の結果は無駄ではなく、この量を使うととんとんさんはこれくらいの数が育ってきたというのも大事なデータになります。それを踏まえて次回再度行う際にどうするのかを先生は考えてくれるはずです。

そして、胚盤胞にならなかった理由ですが、受精が2個であれば1個も胚盤胞にならないということは普通にありえる状況と言えます。採卵した卵子は受精させたのちに細胞分裂を続けて胚盤胞になりますが、受精も100%ではないように、細胞分裂を繰り返した胚が凍結基準を満たす胚盤胞になるのは一部です。データは様々ありますが、受精卵が10個で凍結基準を満たす胚盤胞に到達するのは3~4個くらいと考えられます。このことから見ても、今回のとんとんさんの状況である受精卵が2個であれば、ひとつも胚盤胞に到達しないということは有りえる結果であったと言えます。残念ではありますが、もう駄目だという状況ではありません。
最後になりますが、生活習慣を改善することで、取れない卵が取れるようになるといったようなことはありません。なかなか自分のできることというのはありませんが、生活の中で不妊治療のことばかり考えていても消耗してしまうので、趣味や推し活など何でもいいので日々の生活も楽しみつつ、不妊治療も併せて頑張るというのが良いと思います。