【Q&A】45歳、胚選びと移植タイミング~小川誠司先生【医師監修】

ルパンさん(45歳)

45歳、乳がんの内分泌療法は現在休薬2か月目で、再来月に移植可能です。
胚在庫は凍結胚盤胞〔4BC×1〕と初期胚〔Day3×2〕、PGT-Aは実施不可と承知しています。
移植は今回が初めてです。
医師からは**「新鮮胚2個からでも可」との提案もありましたが、方針の妥当性を確認したいです。

1)どの胚から使うべきか(順番)
私見では、①凍結胚盤胞〔4BC〕を単一胚移植 → ②残りのDay3は延長培養して胚盤胞化できたものを順次、がよいでしょうか。
理由:乳がん既往のため高E2を避けたいこと、FETなら内膜とP暴露の同調が取りやすいことです。Day3は延長培養の院内成績次第で、D3のまま単一胚移植の選択肢もご提案ください。

2)新鮮胚について
採卵周期はE2/Progが上がりやすく子宮側に不利と理解しています。新鮮より全胚凍結→FETを優先で良いでしょうか(乳がん既往の観点からもFreeze-all希望)。

3)不成功時の追加採卵タイミングはどちらが望ましいでしょうか。
A)移植前に1回採卵
B)移植後に採卵(再来月FET→陰性なら翌月採卵)

小川誠司先生に教えていただきました。

藤田医科大学 羽田クリニック 小川 誠司 先生
2004 年名古屋市立大学医学部卒業。2014 年慶應義塾大学病院産婦人科助教、2018 年荻窪病院・虹クリニック、2019 年那須赤十字病院産婦人科副部長、仙台ART クリニック副院長を経て2023年9月、藤田医科大学東京 先端医療研究センターの講師、2024年4月から准教授に就任。自費で最新の医療を受けられるという併設の羽田クリニックで患者さん一人ひとりの思いをかなえるべく診療も行っている。日本産科婦人科学会専門医。日本生殖医療学会専門医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

●どの胚から使用すべきか、先生のご意見をお聞かせください。

凍結胚がいつの時期(何歳の時の胚か)に凍結されたかについてご記載がないため、もし凍結の時期に1年以上の差があるのであれば、最初に凍結された胚から使用することをお勧めします。もし現在の凍結胚がいずれも同じ時期に凍結されたのであれば、通常は妊娠率の高い胚盤胞を優先しますので、ご記載の通り、4BC→初期胚2個移植が良いと思います。確率から考え、初期胚の1個移植はお勧めしません。

●凍結胚盤胞〔4BC〕を単一胚移植する方針についてご意見をお願いします。

現在の凍結胚の中から選ぶのであれば、先ほど記載した優先順位となり、4BC胚の単一胚移植は妥当だと思います。ただ4BC胚ですので、そもそもの統計的な妊娠率は高くありません。したがって、再度採卵される選択肢も考慮されるのであれば、採卵して得られた胚盤胞と2個移植、あるいは採卵して得られた初期胚と4BCの二段階移植も選択肢になると思います。


●ルパンさんの場合、新鮮胚移植よりも全胚凍結→FETを優先するべきでしょうか?

ルパンさんの現在のご年齢を考慮すると新鮮胚移植でも凍結融解胚移植でも妊娠率は変わりません(ただし新鮮胚移植で子宮内膜とホルモン条件が良い場合のみ)。したがって、妊娠までの期間(Time to Pregnancy)を考えますと、再度採卵をされるのであれば、積極的に新鮮胚移植、特に初期胚での移植(できれば2個胚移植)をお勧めします。

●移植が不成功の場合、追加採卵のタイミングとして、移植前と移植後のどちらが望ましいでしょうか?

採卵はできるだけ早い段階でされることをお勧めします。採卵を考慮されるのであれば、2番で記載しましたように採卵後、新鮮胚移植で再度得られた胚と既存の4BC胚を移植することが、現状で最も妊娠の確率の高い選択肢だと思います。

●Day3の胚について、延長培養の院内成績に応じて単一胚移植の選択肢も考慮すべきでしょうか?

初期胚の追加培養はお勧めしません。体外培養はいまだに完全ではなく、体外培養だった故に発生しない胚も少なからず存在します。その証拠に20代女性で複数回採卵したにも関わらず胚盤胞に全く至らない方がおられましたが、初期胚で問題なく妊娠される症例を経験しています。したがって、せっかく現在、初期胚で凍結されているのであれば、そのまま移植されることをお勧めします。ただ胚盤胞より確率は下がりますので、2個移植を推奨します。上記で初期胚の2個移植をお勧めさせていただいているのは同じ理由からです。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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