ぽんさん (27歳)
子どもが欲しいと考えていますが、夫の心因性EDが内服でも改善せず悩んでいます。
ED治療薬は性的刺激を感じないと効果が出ないと拝見しましたが、どのようにして性的刺激を感じて貰えば良いかわかりません。
また、性欲自体もかなり低いと本人は話していますが、どのように改善するのが良いのかと悩んでいます。
来月からはシリンジ法を試してみようかと話したところですが、プレッシャーに弱いのと性欲が低いため上手くいくかと私の方もとても心配しています。
これまでの2人の性行為に問題あるとも思うのですが、付き合って7年程になりますが挿入を伴う性行為をせずにここまで来ました。
誘われないことに心配がありましたが、女である私から積極的には誘いづらく、一度勇気を出して誘ってみましたが、それも拒否されてしまった経験があり、余計怖くなりました。
今までしてこなかったことを「子どもが欲しい」という気持ちのもとでスタートさせるのはこんなにもハードルが高いのかと痛感しております。
子どもを本格的に考えるようになり、妊活がうまく進まなかったので詳しく話し合いをし、その時に「今までなんで誘ってくれなかったのか」と問うと「学生時代にコンドームをつけたところアレルギー反応なのか、陰部に湿疹ができて痒くなり、その後痛くなってしまった、勃ちにくくなってしまった、そこから行為をしたいと思わなくなってしまった」と返答がありました。
もっと早く言ってくれたらアレルギー用のコンドームを一緒に探すなど対策はあっただろうに、私の気持ちを考えずに自分がしたくないから、言いたくないからという理由で、こんな大事なことを言わずにきたことにショックと怒りでいっぱいな気持ちです。
その時は泣いてしまいましたが、その後は気持ちを抑えて「言ってくれてありがとう」と伝えました。
しかし、やはり私のこのショックな気持ちが簡単に薄れることもなく、毎日毎日引きずってしまいます。
夫は心因性であるため、私がショックを受けていること、今後についてかなり心配していることが伝わってしまうと余計に悪化してしまうと考え、また周囲にも言いにくいことであるため感情の行き場がなくてとても辛いです。
ふとした時に、とてつもなく悲しくなったり未来に絶望したり、涙が自然と出てきてしまって妊活うつのような症状なのかなと感じています。
私は感情に蓋をして、次シリンジ法をするので上手くいくかどうかを願って取り組んでいくしかないのでしょうか。
もう皆と同じように性行為をすることも叶わないのかなと思うと本当に辛くなります。
神奈川レディースクリニックの山本先生に聞いてみました。
【医師監修】 神奈川レディースクリニック 院長 山本篤 先生 東京大学薬学部薬学科卒業後、東京医科歯科大学(現、東京科学大学)卒業。その後、東京医科歯科大学附属病院周産女性診療科や獨協医科大学付属埼玉医療センター、国立成育医療研究センター 不妊診療科などを経て、令和7年に神奈川レディースクリニック院長就任。
日本産科婦人科学会専門医。日本生殖医学会専門医。日本性科学会認定セックスカウンセラー。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
●先生でしたら、心因性EDへの対応として、どのような提案をされますか?
まずは心因性のEDになった原因を確認します。ご相談者様のように、ゴムアレルギーは一定の可能性で起きる可能性もあります。コンドームを使用しない夫婦生活も行われる状況があるのに夫婦生活がないのは、その際の失敗体験が意識の奥に残ってしまっていることが原因と考えられます。このような場合に、行動変容を試みる脱感作療法がありますが心理カウンセリングが行える専門の施設にご相談いただくのが望ましいです。
また、ED治療薬を内服後、本人が望む、もしくは、過去にうまくいったことのあるやり方で性的な刺激を加えて強制的に勃起状態にすることは可能かもしれませんが、結局、深い心理的葛藤のある状態にたいしては、本質的な解決にはなりにくいです。簡単なふれあいなどを行い段階的に夫婦生活にステップアップする行動療法も同時に行うことが重要と考えられます。
●性欲の低下について、改善するための方法を教えてください。
男性の性欲低下の原因には、男性ホルモンの低下に代表されるその他いくつかのホルモン量の異常による器質的なものと心理面からくるものがあります。ホルモン関係であれば血液検査で判断することができます。例えば男性ホルモンが低ければ、男性ホルモンを注射や軟膏で補充することで性欲が上向きになります。同時に、AGAの内服薬などの抗男性ホルモン薬が原因で男性ホルモンが低下していることもあります。ただし、男性ホルモンを外から補充する方法は、精子形成が低下しますので、挙児希望がある場合は注意が必要です。
このほか、アルギニンには精子数増加以外に性欲増進の効果があると言われており、サプリメントとして摂取していただくこともあります。
●シリンジ法を試す際の注意点や成功のポイントを教えてください。
シリンジ法は容器に出された精液をスポイト(シリンジ)で吸って、腟内に入れる方法です。性交渉での腟内射精と同じ効果があると考えられています。注意点として、シリンジやスポイトが硬いプラチック性のものもあり、腟粘膜を傷つけないことが大事で、最近では挿入する部分がゴムでできたシリンジセットも販売されています。
また、成功のポイントとして、私たちの施設では、性交渉の中でシリンジ法をすることを強く推奨しています。つまり、妊娠を目的とした場合、女性側の性的な興奮が必要とのデータを得ており、性交渉の中で行うことが難しい状況の場合、それをサポートする器具(セルフプレジャーアイテムなど)を購入し活用していただいています。

●妊活での精神的負担軽減法について、アドバイスをお願いします。
重度の不妊と思われる検査結果や所見ながら、妊活に集中しすぎない方々が、次々妊娠されることをよく経験します。その方々によくみられるのが、『趣味』を持っている方々です。『温泉旅行』や『推し活』などもいいと思います。時間を採られすぎない程度に趣味を復活させてみてはいかがでしょうか?また、夫婦で今の二人のゴールが何かを時々確認しあうことは、一方的に治療の押し付けてしまっているという後ろめたさや押し付けられていると感じてしまう、互いのすれ違いを防ぐ有効な手段だと思います。
かかりつけの医療機関があれば、そこにおられる不妊専門の看護師や医療スタッフに相談をしてみて具体的な悩みを相談してみるのもいい方法です。
●夫婦生活に関してお悩みの相談者さんへのアドバイスをお願いします。
相手を傷つけることを恐れて核心を突いた会話を控えているご様子ですが、感情にふたをせずに互いに考えている家庭への思いを話し合うのが大事です。また拒絶されたら怖いという思いはあると思いますが、相手自身に、なぜ今だめと断ってしまっているのか、について考えてもらうきっかけになると思います。その会話の中で原因が見つかり解決策につながることもあります。また、相談者様と同じ状況の方はたくさんおられます。自分たちだけでの解決が難しいと思われたら、専門の相談できる施設に係ることも考えてみてもいいかもしれませんね。
夫婦生活(性交渉)は、あいさつや握手などのコミュニケーションの中で、最後の限られた人同士(カップル)でしか行えないコミュニケーションです。一人の頑張りで成立する家事や資格試験などと異なり、二人が存在するから行えるものです。不妊治療を行っていくと、夫婦生活は作業になりがちですが、もともとは何のために結婚したのか、そして、子供が欲しかったのか、を含めて、二人のゴールが何であったかを再確認しあうのが大事です。ゴールは家庭環境、仕事の状況などにより、少しずつ変化していきます。それが普通ですので、二人でそれを時々確認しあうのはとても意味があります。その先に治療があって、そのゴールが皆で同じ場合に、私たち不妊生殖に関わる医療者は最大限の努力をさせていただき、皆様をサポートいたします。