高グレード胚を凍結するには何かできることがありますか?また、流産予防のためにできることはありますか?3度目の流産は私の体に原因があったのでしょうか?
ネオセルフ抗体陽性で前回アスピリンを服用しましたが、今回染色体異常なしで流産したため、ヘパリン注射を勧められました。
ヘパリン注射は使わなければならないでしょうか?毎日2回自己注射を打ち続けることに恐怖心があり、自信がありません。
ネオセルフ抗体が250だったのですが、これは高い方でしょうか?妊娠時にこの抗体のせいで血がかたまって流産につながっているのでしょうか?
宇津宮先生に、お話しを聞いてきました。

ぷーこさんは4回妊娠(1回は化学的妊娠)ですべて流産に終わっています。
ぷーこさんはチョコレート嚢腫があったようで、そのために卵子の質が低下しているか心配ですが、ぷーこさんはチョコレート嚢腫手術(2021年)後にAMHが6.88(2023年)ですので、今のところ、卵子の数は多めと思われ、安心です。が、AMHは卵子数に比例しますが、卵子の質、特に染色体との関係についてはわかっていません。基本の卵子の数については有利ということです。卵子の数が多いことは本当にありがたいことです。
子宮内膜症が卵子の質を下げるという多くの論文が出ています。チョコレートの隣の卵胞から得られた卵子の質は低いという報告もあり、何らかの作用はありそうです。ところが、手術をするとAMHが下がる(卵巣の能力が下がる)のはよく知られています。よって、チョコレートの手術をする前に卵子を採取するほうが良いとの報告もありますが、しかし、ぷーこさんは現在、AMH6.88ですからほかの人に比べると可能性が高いと思います。
ただそこまで考慮された報告が出てくることを期待しています。4回も流産していますから、流産予防に不育症の検査をすべて行うことです。子宮の造影はいかがでしょう。子宮奇形は流産原因になります。
ネオセルフ陽性とのこと、250と、高値のようです。これなら毎回妊娠時には低量アスピリンとヘパリン注射が必要でしょう。
男性因子、子宮因子、染色体因子を除き、不育症の治療は今のところ、アスピリンとヘパリンです。しかもアスピリン、ヘパリンですべてうまくいくかというとそれほどではありません。これは今までの報告ではあとで述べる胚の染色体異常が考慮されていないからと思います。
アスピリンは服用だけですので簡単です。ヘパリンは自己注射で、ややハードルが高いと思いますが、慣れれば簡単です。半面、アスピリンはその作用が消えるのに5-7日かかり、出血が止まらなくなる心配があります。その点、ヘパリンは毎日2回注射するようにその作用は12時間くらいしかなく、出血が増えることはなく、安心です。

さて、流産の半分(当院のデータでは7-8割)が染色体異常です。よって、現在、行われることができるようになった着床前検査(PGT-A)が有効です。
顕微鏡検査で外見はきれいな、AA胚でもPGT-Aを行うと染色体正常胚は25%しかありません。3/4は染色体異常です。しかもその正常胚を移植すると妊娠率は70%、流産率は11%です。PGT-Aは流産経験者にも有効な検査と言えます。
しかしそれが可能な施設は限られています。流産2回以上、または胚移植2回以上、または35歳以上なら適用されます。ぷーこさんのように流産を繰り返す場合の胚の選択には有効です。(ただしIVFとPGTの検査は自費です)。まずPGT-Aで染色体の正常な胚を選択・移植し、妊娠したらアスピリン、ヘパリンで流産予防しましょう。