【Q&A】凍結胚5個で次は移植?それとも採卵?~両角和人先生【医師監修】

abbyさん(39歳)

採卵が3回終わったタイミングで、移植の時期を検討し始めましたが、凍結胚盤胞が4つでは年齢的にも心もとないと思ったので、一周期休んで今月再度採卵を実施。保険の移植回数6回分の胚を得たかったので、胚盤胞2~3個凍結を目指していました。

ただ、結果は採卵タイミングのズレ(病院側からの説明)ということで、ほぼ空砲で採卵数1(予定では5~7個と聞いていました)。
直近の1個が胚盤胞まで育ったとして、凍結胚盤胞数は全部で5個。次も採卵にするか、移植を始めるか迷っています。

病院側からは「採れた卵子はすべて胚盤胞まで育っているので、タイミングさえ合えばもっと採卵できる可能性はある」とした上で、次回は刺激方法を変える(PPOS→クロミフェンFHSに戻すなど)など提案をいただいています。
一方で、4AAも2つあるので移植でもよいとのことでした。

2回目の採卵は事前に排卵してしまい、3回目は遺残卵胞がある中で決行→結果あまり育たず、4回目も採卵タイミングのズレからほとんど空砲で、このまま病院側の言うとおり採卵を続けるべきか迷います。
凍結卵が多い方が安心ではありますが、このままのペースだと30代のうちに移植できない可能性があります。
一方で、今ある胚をすべて使って妊娠できなかった場合、再度採卵する時は40歳になってしまいます。

何を基準に優先順位を決めるべきでしょうか?
次のアクションはどのように進むべきでしょうか?

両角レディースクリニックの両角和人先生にお伺いしました。

【医師監修】両角レディースクリニック 両角 和人 先生
福島県立医科大学医学部卒業。ハワイ大学医学部生殖生物学研究所留学、福島県立医科大学産婦人科学講座助教、国際医療福祉大学大学院講師などを経て、2012年に両角レディースクリニック院長に就任。患者さんやスタッフなど「ご縁のある方を幸せにする」というのが信条。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください

39歳で、すでに複数回の採卵を経験され、良好な凍結胚(4AAなど)を複数お持ちとのこと。いまの段階では「採卵を続けて胚を増やすか」「移植に進むか」ですが、私の考えとしては、以下の3つの観点から整理すると判断が明確になります。

① 採卵を続けるべきケース
40歳を超えると卵巣予備能(AMH)の低下が進み、採卵数も受精率も下がります。そのため、今のうちに次周期以降の移植に備えて、胚を確保しておくという戦略には大きな意味があります。特にAMHが1.3とやや低下傾向にあることから、今後の採卵で得られる卵子数は減っていく可能性があります。今のうちに2~3個でも追加で凍結胚を確保しておくことで、将来的な治療の選択肢を広げられます。

② 移植を優先すべきケース
一方で、すでに4AAを含む良好胚が複数ある場合、まず移植してみるという判断も理にかなっています。なぜなら、実際に妊娠反応が得られるかどうかは、胚の質と子宮内環境の両方を確認して初めて分かるからです。採卵を繰り返す間に年齢が進み、内膜環境も変化してしまうことがあります。したがって、良好胚が3個以上ある時点で一度移植を試み、着床環境を確認するのが効率的です。

③ 刺激法・採卵タイミングの見直し
これまでの採卵経過を拝見すると、自然周期・クロミフェン・PPOSといずれも経験されていますが、排卵や遺残卵胞など、タイミングのズレによるロスが繰り返されています。このような場合、FSH投与開始時期の調整や、排卵抑制の徹底、超音波の頻度増加などで改善できるケースも多く見られます。また、次回刺激を行う際は、ショート方やPPOS法における黄体化抑制の管理をより厳密に行うことも有効です。アンタゴニストで個別に対応することももちろんお勧めします。

④ 結論
現在の時点では、今ある5個の胚をまず1〜2個移植してみて、その反応を確認し、結果次第で採卵を再開して残りの移植に備えるという二段階戦略をお勧めします。治療は量だけでなく、質とタイミングの見極めが重要です。39歳という貴重な時間を最大限に活かしながら、確実な一歩を進めていきましょう。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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