【Q&A】胚盤胞にならない原因は?~宇津宮先生【医師監修】

nさん(33歳)

過去に採卵を3回していますが胚盤胞にいたりません(合計で40個以上卵が採れています)
先日、再度採卵をして今回も15個採卵できましたが、胚盤胞はゼロでした。

顕微授精で9個受精したようですが、3日目で成長が止まるようです。タイムラプスは実施済みです。

初期胚グレード2-3(7分割)がかろうじて凍結できたので移植に向けて動いています。前回も初期胚移植をしましたが陰性だった為、2回目の移植になります。

今度の移植が陰性だったときの事はあまり考えたくありませんが、もし、また採卵からであれば『エクソソーム』を勧められました。
資料を渡され簡単な説明も受けましたが、先進医療でもありませんので、大変迷っております。

コレステロールが低かったり、元々痩せ型なこともあり、身体作りを頑張ってきましたが、また一歩踏み込んだ治療をしないと難しいのでしょうか。

何度も胚盤胞にならないので大変困っています。

宇津宮先生に、お話しを聞いてきました。

【医師監修】セント・ルカ産婦人科 宇津宮 隆史 先生 熊本大学医学部卒業。1988 年九州大学生体防御医学研究所講師、1989 年大分県立病院がんセンター第二婦人科部長を経て、1992年セント・ルカ産婦人科開院。国内でいち早く不妊治療に取り組んだパイオニアの一人。開院以来、妊娠数は 9,500 件を超える。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

卵子は十分な数が採取でき、受精もするのに、3日目で成長が止まるとのことですね。通常、受精卵は3日目までは卵子のゲノムが中心になって成長しますが、3日目からは精子のゲノムが加わってきます。よって、3日目以後の成長不全は精子のゲノムもあやしいと考えますが、直近の精子所見ではそれほど悪い結果とは思えません。

よって、卵子、精子両方考えるべきです。しかしその対策としては適当なサプリぐらいしか考えられません。当院では、DHEA、ウムリン、プルーファ、V.CやV.Eは実績があるので勧めますが、確実とは言えません。

また、夫婦の染色体検査も視野に入れてよい時期かと思います。もし、染色体に変化があれば、今では着床前検査ができますから。nさんは幸いにも卵子数は十分ですのでチャレンジする価値はあると思います。ただし、遺伝専門医や遺伝カウンセラーのサポートのできるクリニックが基本です。

卵巣内のエクソソーム注入は、間葉系幹細胞が分泌するエクソソーム内の成長因子などの初期の卵胞に対する作用を期待して行うとされていますが、まだまだ動物実験で可能性が期待されている程度で、ヒトでは十分なエビデンスがあるわけではないようです。ヒトに対する治療にあたって、エビデンスは最も重要です。あのフローラやEMMA、ALICE、2段階移植、PRPなど、JISARTでも、何年も前から検討していますが、まだ有意な効果があるというエビデンスは出ていません。エクソソームは新しい実験と考えたほうが良いと思います。それにこれらはなぜか「私費診療」で「高価」です。

コレステロールは神経や生殖細胞の細胞骨格を形成するうえで重要な働きをしています。たんぱく質をとればそれに伴って摂取できますから、野菜を含め、バランスのとれた食事をしましょう。nさんはやせ型ですから栄養状態は注意すべきです。体質で太れないかもしれませんが、適度な運動と栄養を考えた食事、そしてくれぐれも精神的、肉体的ストレスを抱えないよう、リラックスした生活をしてください。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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