catさん(43歳)
現在は貯卵しながらPGT-Aに出せるものは全て出す方向で通っていますが、去年2回C判定、今年になってPGT-A検査に出せる良好胚が得られず、凍結出来る卵すら得られにくくなって来ました。来年の2月で44歳になる為、そろそろ移植も検討しています。
移植する場合、年齢的に最短で妊娠したいです。
1個移植より2個移植の方が妊娠確率が数%上がると聞いていますが、42歳で得られた卵(4BB+4AC)を44歳で移植した時に妊娠できる確率はどの程度ですか?
年齢的に妊娠の可能性は低い場合はやはり2個移植の方が有効なのでしょうか?
多胎妊娠の確率、リスクなども知りたいです。現在通っているクリニックで先生にも相談しますが、中々決めきれません。
また、移植の前の検査で必要な事を教えてください。
よろしくお願い致します。
表参道ARTクリニックの小川達之先生にお伺いしました。
【医師監修】表参道ARTクリニック 小川達之 先生
2009年山梨大学医学部卒業。2016年より山梨大学医学部附属病院産婦人科にて不妊治療にあたる。2024年4月より亀田IVFクリニック幕張に入職、2025年8月より表参道ARTクリニックの院長に就任。ひとりひとり個別の状況に対応し、患者様の立場に立った医療を提供したいという想いを持って日々、診療に従事。医学博士。日本産科婦人科学会産婦人科専門医・指導医。日本生殖医療学会生殖医療専門医・指導医。日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
ご存知の通り、胚の妊娠率は採卵時の年齢に強く依存します。42歳で得られた凍結胚の移植あたりの臨床妊娠率は一般的に10〜20%程度と考えられます。実際の妊娠率は胚のグレードや施設によってそれぞれ幅があります。
2胚移植の最大のメリットは、胚2個の移植結果が1周期で得られることによる時間的な利益と、胚移植の費用が1周期分で済むという経済的な利益です。2周期に分けて1個ずつ胚移植する場合と累積出生率に相違はなく、多胎リスクが上昇すると言われています。年齢が上がると妊娠や出生にたどり着くことのできる胚の割合が減少するため、若年者に比べると2胚移植による多胎リスクは相対的に低下すると考えられます。以上から、時間や胚移植の費用を節約するため、高年になると2胚移植を選択する方が多くなります。

仮に妊娠率が20%の胚を2胚移植した場合の多胎率は、単純計算すると4%になります。多胎妊娠は早産、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの母体合併症、低出生体重児、NICU管理の必要性など、リスクが大幅に増加します。採卵時ではなく妊娠時の母体年齢が高いと、合併症リスクは上昇し、周産期心筋症などの重篤な合併症を起こすこともあります。全員に生じることではありませんが、発症した時には重篤な状況になることもあります。
可能であればPGT-Aで正倍数性胚(いわゆるA判定)などを確認したうえで単一胚移植することが望ましいですが、難しい場合もあります。
既に子宮内細菌叢検査は受けられているようですが、子宮内膜受容能検査(ERAやERPeak)がまだであれば検討されます。経験的に年齢が上昇するといわゆる着床の窓が後ろにずれている症例は時々見られます。
応援しています。