歯の治療は妊娠前に。わからないこと、不安はその場で主治医に聞くべし! 田村秀子先生の心の玉手箱Vol.48

体外受精には万全の体調で臨みたいけれど、歯の治療をするときの麻酔や、病気の予防のためのワクチンの影響は? 避けたほうがいいタイミングは? そんな投稿者さんの疑問について、田村秀子先生にお聞きしました。

なもさんからの投稿
体外受精の採卵前の全身麻酔について質問です。昨日、風疹ワクチンを打ちました。次の生理がきたら、採卵の準備が始まります。が、その前に虫歯になりかけの親知らずを抜いておきたく…。多分、4 本全部、抜くと思います。卵子に影響はないのか? 何よりも、風疹ワクチンを打った後で採卵ができるのか? 全身麻酔を2 カ月に2 回続けてやってもいいのか? 影響がない麻酔はあるのか?など、疑問がいっぱいです。
田村秀子婦人科医院 田村 秀子 先生
京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第一赤十字病院に勤務。1991 年、自ら不妊治療をして双子を出産したことを機に、義父の経営する田村産婦人科医院に勤め、1995 年に不妊治療部門の現クリニックを開設。

卵子の段階であれば大丈夫生理がくればリセットされます

採卵の前に麻酔をして虫歯の治療。いいんじゃないでしょうか。親知らずを一度に4本全部抜く場合は、全身麻酔の可能性もあるかもしれませんが、「2カ月に2回続けて」ということなら、分けて抜くのだと思います。だとしたら静脈麻酔、それなら効いているのは30分ぐらいです。いずれにしても、生理がくればリセットされますので、麻酔は問題ありません。
生理の後は排卵したら受精しているかもしれないから、いろんなことに気をつけたほうがいいでしょうし、器官形成期なら話は別ですが、採卵の時点ではまだまだ卵ちゃん。言ってみればウエディングドレスを着た花嫁さんがベールをつけてもらうのを待っている状態で、それを取ってベールをつけてあげるのが採卵です。生理がくる前や、採卵して凍結して胚移植までの間に、何もしない期間があるなら、そのタイミングでかまわないと思います。気をつけたほうがいいのは、卵子と精子が受精卵になって、胚移植後ですね。だから採卵するなら、排卵前に終わっちゃえば大丈夫でしょう。
採卵する時にも静脈麻酔を使いますが、同じ理由で影響はありません。

気をつけるのは胚移植後不安なことは主治医に相談を

今は歯科に限らずどんな病院でも、麻酔を使う際にはあらかじめ「妊娠していますか? 妊娠の予定がありますか?」と聞くことになっています。おそらく風疹ワクチンを接種したのも、主治医に相談したからでは? 生理がくれば採卵の準備が始まる、だからその前に…ということだと思います。もしタイミングが良くないようであれば、「その周期はやめておきましょう」など医師から説明があるはず。そこで、じゃあどの期間ならいいか、いつなら打てるか相談してみてください。
私も患者さんに「アートメイクしようと思うんですが、いいですか」などと質問されることがあります。患者さんの状態や採卵、体外受精のタイミングを見て「いいんじゃないですか」「やめといたほうがいいですね」と答えます。大事なのは、その場でちゃんと主治医に聞くことです。

頼るべきはSNSより専門家今のうちに歯の治療を

今の時代はわからないことを簡単にネットで調べたり、SNSで質問したりすることができます。医療関係者が答えているものもありますが、なかには匿名の一般人の回答もあります。
でも、ちょっと考えてみてください。一般の人の回答は一見、わかりやすいですが、あくまでもその人の体験でしかなく、エビデンスがあるかどうかも不明。そんな「専門家でもない匿名の一般人」は、あなたの主治医よりもあなたのことを知っていますか? もしかしたら、治療がうまく進まないときに「あれが悪かったのかも、こうしておけばよかった」と後悔しないように、精一杯の選択をしておきたいのかもしれません。でもそれは、傷が痛むときにほかのところを噛んでごまかしているようなもの。痛くなくなるわけではありません。疑問や不安がある時は専門家を頼りましょう。「こんなことが不安」「こんな心配があります」、そういう思いを主治医にぶつけてください。
ちなみに、妊娠までにお口のトラブルは治しておいたほうがいいですよ。口の中の菌が消化器に入って腸内環境が悪くなることが、切迫流産に関係しているともいわれます。妊娠してから、ましてや赤ちゃんが生まれてからだと、ますます歯科には行きにくくなりますから、今のうちの治療をおすすめします。

秀子の格言

歯の治療は妊娠前に。わからないこと、不安はその場で主治医に聞くべし!

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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