【Q&A】子宮腺筋症の治療の進め方~小川誠司先生【医師監修】

愛乃さん(37歳)

年齢や巨大子宮腺筋症の関係もあり、妊娠、出産が出来るのか不安になっています。
関東の大学医学部附属病院では「子宮腺筋症の手術を先にするか?現状として、もし手術をする場合は、全周性の為子宮全摘をしないのであれば腺筋症の核全摘出は難しいので核が残る可能性がある」と説明ありました。

妊娠した場合、管理入院や未熟児、早産、帝王切開、帝王切開直後に子宮全摘のリスク等の説明を受けています。

医師と相談の上、一旦レルミナで経過観察をしながら、胚移植を行うことになりました。
医師との相性が合わず(診察が終わっていないのに診察終了されており、スタッフに声かけを行うが院内の全電気が消えるまで忘れられていた等色々多々あり)転院を行いました。
妊娠した場合は、大学病院の産科にお世話になる予定です

転院後、実費での採卵、胚移植を行っていますが、子宮腺筋症の出血量が増大、サイズアップしている感覚があります。
レルミナ錠が残3ヶ月分/年のみしか内服できないです。
①先にレルミナ錠を内服し子宮腺筋症の手術をした方が良いのか?
②移植貯金をしなければなりませんので、レルミナ錠を3ヶ月内服し、ディナゲスト内服後に貯金完了次第、ホルモン補充周期で凍結胚移植2個をした方が良いのか?
③もう一度採卵を行い、貯卵する。①or②の方法にすすむ
④その他
で悩んでおります
どの方向性が良いのかご指南いただけないでしょうか。

小川誠司先生に教えていただきました。

藤田医科大学 羽田クリニック 小川 誠司 先生
2004 年名古屋市立大学医学部卒業。2014 年慶應義塾大学病院産婦人科助教、2018 年荻窪病院・虹クリニック、2019 年那須赤十字病院産婦人科副部長、仙台ART クリニック副院長を経て2023年9月、藤田医科大学東京 先端医療研究センターの講師、2024年4月から准教授に就任。自費で最新の医療を受けられるという併設の羽田クリニックで患者さん一人ひとりの思いをかなえるべく診療も行っている。日本産科婦人科学会専門医。日本生殖医療学会専門医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

●子宮腺筋症の手術と妊娠リスクについて、詳しく教えてください。

子宮全体に腺筋症が広がっている場合、病変部分と正常組織の境界を特定することは容易ではありません。そのため、病巣が一部残存し、再発の可能性があるとされています。 また子宮腺筋症手術後の妊娠については、妊娠後に子宮が伸展(大きくなる)しづらく、流産や早産となるリスクがあると言われており、切迫流早産による長期の入院が必要になる場合があります。また手術により広範囲に子宮を切開しているため、妊娠後に子宮が裂ける(子宮破裂)のリスクが高くなると言われています。分娩様式は必ず帝王切開となります。妊娠後は大学病院などの総合周産期センターでの妊娠管理をお勧めします。

●レルミナ錠の内服期間と手術のタイミングについて、先生のご意見を伺いたいです。

レルミナは3ヶ月服用すれば、ある程度十分な効果が得られます。したがって、レルミナを3ヶ月内服し、直後に発来する月経周期で移植されることをお勧めします。

●ディナゲスト内服後のホルモン補充周期での凍結胚移植について、アドバイスをお願いします。

ディナゲストとレルミナではレルミナの方が、効果が強いと思います。したがって、順番としては、まずは貯卵ができるまでディナゲストを内服し、目処がついた時点でレルミナ
に切り替えて3ヶ月内服して、次の周期に移植される方が良いと思います。手術は難しいと思いますし、術後のリスクを考えますと、まずは内服治療後の移植を私もお勧めします。

●採卵や貯卵のタイミングについて、先生でしたらどのように提案されますか?

もし金銭的に可能なのであれば、なるべく早めに採卵し、貯卵しておくことをお勧めします。
愛乃様が何人お子さんを望まれるかにもよりますが、5〜6個の良好胚盤胞を最初に確保された上で、上記の内服治療後の移植に進まれるのが良いと思います。

●出血量やサイズアップの感覚がある場合の治療方法を教えてください。

腺筋症の治療は、不妊治療とは相反する治療(腺筋症の治療は女性ホルモンを抑えないといけませんが、不妊治療中は卵胞発育が必要なため、ホルモンを抑える治療はできません)ですので、まずはできるだけ早めに受精卵を獲得し、ホルモン治療後に移植するのが良いと思います。妊娠中には腺筋症は悪化せず、むしろ改善しますので、妊娠終了後は速やかに腺筋症に対するホルモン治療を開始し、何も治療していない期間ができるだけないように進めることをお勧めします。

●その他、治療データ (年齢、体組成、 AMH値、不妊原因となる病名)をみて、気になるところがあれば教えてください。

化学流産や胞状奇胎の既往はありますが、良好胚盤胞での移植不成功が続いておられます。腺筋症以外にも原因がある場合がありますので、まだ着床不全の検査をされていないようでしたら、子宮内を確認する子宮鏡検査、自己抗体や凝固因子検査、甲状腺ホルモンや慢性子宮内膜炎検査、「着床の窓」を調べるERA検査、子宮内細菌叢を調べるEMMA/ALICE、免疫検査(Th1/2比)などの着床不全検査を一通り実施されることをお勧めします。現在採卵周期に入られておられますので、ぜひまずは良好胚盤胞を獲得していただき、ホルモン療法の間にまだ実施されていない着床不全検査をしっかりやられた上で、次の移植に臨まれることをおすすめします。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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