良好胚でも着床せず。 保険適用の最終回、 転院も考えています

相談者 :みりんさん(32歳)
▶︎良好胚移植後の妊娠不成立と転院について
32 歳で、顕微授精によって胚盤胞を8 個凍結できました。これまで5 回移植しましたが、2回は化学流産に終わり、ほかは陰性でした。精子の正常形態率が2%と低いこともあり、良好胚移植後に妊娠が成立しないのは、精子の状態が影響しているからでしょうか。残りの凍結胚はあと1個で、6回目の移植をどう進めるべきか、先生の考えを伺いたいです。また、保険適用が残り1回の状況で転院も考えており、その際の注意点などをお聞きしたいです。
【医師監修】英ウィメンズクリニック 江夏 イーシェン 先生
日本産科婦人科学会専門医。2005 年九州大学医学部卒業後、福岡赤十字病院で初期臨床研修を受ける。その後、亀田総合病院産婦人科で後期研修。2011 年パルモア病院産婦人科を経て、2013 年より英ウィメンズクリニックに勤務。2021 年5 月より生殖免疫部門 部長に就任。

良好胚移植後の妊娠不成立について、精子の状態が影響している可能性はありますか?

江夏先生●はい、受精卵には卵子だけでなく精子の状態も必ず影響すると考えます。顕微授精が必要な場合は精子に何らかの原因がある可能性が高いです。具体的な影響としては、栄養不足や全身の健康状態、精索静脈瘤、さらには染色体異常なども受精卵に影響を及ぼす可能性があります。これまでの検査に加えて、SDFI 検査で精子のDNA損傷率を調べ、抗酸化成分の摂取といった具体的な対策を検討することも有効かと思います。

みりんさんの状況を踏まえ、6回目の移植を現存の凍結胚で行うことをおすすめしますか?

江夏先生●残された貴重な凍結胚ですから、移植に臨む前に、直近半年以内に子宮鏡検査や卵管造影検査を受けていなければ、再検査して子宮や卵管の状態を再度確認することをおすすめします。また、免疫系の血液検査(NK細胞活性など)や、当院で行っている着床不全に関する検査(プロゲステロン検査や第Ⅻ因子検査など)も検討し、着床環境を詳しく調べることが重要です。これらの検査結果を踏まえて、現在の凍結胚での移植を進めていくのがいいでしょう。また場合によっては、二段階胚移植など、移植方法の調整も選択肢になるかと思います。

保険適用が残り1回で転院を検討中。最適な治療と注意すべき点を教えてください。

江夏先生●保険診療で凍結した胚がある場合、原則としてその胚を管理しているクリニックで治療を継続する必要がある可能性が高いです。そのため、残りの凍結胚1個での移植は、費用を抑えられ、慣れた環境で治療を進められる現在のクリニックで行うのが最も現実的な選択肢かと思います。
もし転院を検討される場合は、いくつか注意点があります。凍結胚の移送は、クリニックによって対応が異なり、リスクや費用が伴います。また、転院先のクリニックが保険診療に対応しているか、そして現在のクリニックとの間で診療情報の連携がスムーズに行えるかを事前に確認することが重要です。保険診療は複数の施設で同時に受けることが難しいため、現在の状況を両方のクリニックに確認し、ご夫婦でよく話し合って決める必要があります。
みりんさんはAMH値も高めですから、気負わず治療を続けてください。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。