【体験談】保険適用最後の移植に向けて、 ベストを尽くします。

 

一時は子どもを産むことを諦めかけていた
保険適用最後の移植に向けて、ベストを尽くします。

乳がん治療を中断して始めた不妊治療のエピソードを自身のYouTubeチャンネルで発信している、いももりこさん。結果が出ない日々が続く中でも、あらゆる可能性を模索しながら前向きにチャレンジしています。

10年必要なホルモン治療、妊娠は禁忌事項だった

いももりこさん(42歳)が乳がんを患ったのは、ご主人のタクさん(41歳)と交際していた32歳の時でした。
「乳がん検診では問題なかったけど、その年の秋頃にセルフチェックでしこりを見つけて、『ヤバい!』と病院に駆け込んだら、進行が早く悪性度の高い乳がんだと言われて……。そこから人生が目まぐるしく変わりました」
襲いかかる抗がん剤治療のダメージ。髪は抜け落ち、放射線治療による重度の副作用で外出もままならなかったそう。退院後もホルモン治療が必要で、その間の約10年は妊娠が禁忌事項でした。「終わる頃には40代。それを知った時から、子どものことはなかば諦めていました」
2019年5月、つらいがん治療中もそばにいて寄り添ってくれていたタクさんと入籍したいももりこさんは、主治医と相談のうえ、がん治療を5年間中断して不妊治療に挑戦することを決めました。「普通に妊娠するのは難しいというのはわかっていたし、最初から体外受精に進むのは覚悟していました。ただ、彼はそこまで強く子どもを望むタイプではなく、そもそも子どもができない可能性があるのが前提での結婚でした。治療を中断することで、がんの再発リスクが高まるほうが困るという感じで、あまり前向きではなかったようです」

不妊治療に専念するため退職し、「最後の砦」の転院も決意

自宅や職場から通いやすいクリニックで不妊治療を開始したのは2022年4月、いももりこさんが39歳の年でした。まずは数回のタイミング法を試したあと「40歳になる直前、ギリギリのタイミング」で体外受精にステップアップ。初めての治療、排卵誘発剤の副作用、仕事との両立と、想像していた以上の大変さに加え「がん治療の影響で、ちゃんと排卵できているのか? 本当に採卵できるのか? というのは、自分の中でかなり大きな不安要素だった」と語ります。
2回目の採卵で初めて卵が採れた時は心から安心したそうですが、卵巣機能低下によってAMH値が低く、主治医からも「採れるだけ採卵して、回数を重ねるしかない」と告げられます。そして、3回の移植はすべて陰性。再度、採卵からスタートするも6回連続で凍結できる受精卵がゼロという結果に、心が折れそうになりました。
当時、職場では新規事業立ち上げのプロジェクトリーダーという責任ある仕事を任されていて、プレッシャーを感じながらの不妊治療に少なからず限界を感じていたいももりこさん。「保険の移植はまだ3回残っているけど、43歳まで1年しかない状況で凍結ゼロを繰り返すのは耐えられない。今しかできない治療に専念しよう」と決意し、10年近く勤めた会社を退職。ネットで「最後の砦」「培養技術が高い」と高評価のクリニックへの転院も決めました。「30 代の女性が多い職場だったけど、不妊治療関連の制度はなく、話題に出ることもなくて。最初は休職と退職で迷っていたけど、時間の余裕が増えてストレスが減った今となっては、退職で正解だったなと思っています」
心機一転、2軒目のクリニックで治療を開始すると、すぐに採卵も凍結もできて「割といい感じに進めた」と感じたそうですが、4回目の移植も陰性。期待が膨らんでいた分、「本当に絶望としか言えない感情でした」。
普段から「無関心なの?」と感じさせるほど治療の話題に触れないタクさんでしたが、「おいしいものを食べるのが一番」と外食に誘ってくれるのが彼なりの優しさ。約3年間の不妊治療で16回まで重ねた採卵は卵が採れたり採れなかったり、採れても発育が途中で止まったり、移植は陰性の繰り返し。いももりこさんが感情的になっている時は「まだ保険回数が残っているから、やっていくしかないね」と冷静に話してくれるタクさんの存在は、長期化する治療の負担を軽くし、心を癒してくれているようです。

保険最後の移植に向かって、すべてに全力で取り組みたい

今年5月、5回目の移植も陰性。保険適用最後となる6回目の移植を前に「確率を少しでも上げるため」2個移植ができるクリニックに転院しました。
「患者さん自身の意見を尊重してくれる方針で、保険診療のリミットがあるからちゃんと刺激して採れるだけ採っていこうと言ってくれましたが、急いでいるからこそ、毎月採卵して1個でも確実に採っていきたい私は、高刺激で卵巣を休ませる期間をつくるというのが気になって……。でも、先生に確認すると、この状況ならたとえ刺激を強くしても毎月採卵できますよ、と言われたんです」
いももりこさんのように、AMHが低すぎるのは不妊の原因になりますが、その反面、高刺激でも卵巣が腫れる可能性は「ゼロに等しい」という嬉しい誤算。料理で使用する油を米油に替えたり、抗酸化作用のあるサプリを毎日服用するなど、最後の保険診療での移植に全力で取り組むため、効果が期待できることなら何でも取り入れました。
そして取材後、いももりこさんは17回目の採卵を行い、凍結できなかったことをYouTubeで報告。「なるべく早い段階で1個でも凍結できれば楽かなと思っていたけど、現実はそんなに甘くなかった」。言葉の一つひとつに、率直な気持ちが込められていました。
それでも「最後までベストを尽くしたい」。フォロワーさんの言
や二人で可愛がっているポメラニアンのポテトちゃん、そして、かけがえのないタクさんという存在を力に変えて、いももりこさんの挑戦は続きます。

意識改革にもつながった「妊娠のため」の取り組み

妊娠継続できない原因を探るために受けた不育症検査で血栓ができやすいことが判明し、血液をサラサラにする薬を服用。お灸やホットヨガ、リンパマッサージ、よもぎ蒸し、リカバリーウエア、EMSマシンなど、血流を良くするための温活に力を入れ、デリケートゾーン専用ソープなどのフェムケアアイテムも使用するなど、妊活に良いと言われるものは何でも試したナナさん。5回目の移植結果は陰性でしたが、「保険が適用される間に終わらせよう」と決意し、体質と生活習慣のさらなる改善を目指して漢方やサプリの見直しにも取り組みました。
「10代の頃から不規則・不健康だった生活を悔やみました。朝食が妊娠のしやすさに大きく影響すると知ってからは毎朝食べ、赤ちゃんのためにと夫から言われて睡眠も意識しました」
ナナさんの話に耳を傾け、常に明るく接していたチヒロさん。想像以上にナナさんの治療の負担が大きいことを知ってからは、率先して料理を作ったり家事を担当するなど嬉しい変化もあったそうです。

初めてできた心拍確認でようやく喜びを実感

再び採卵し、好条件の精子を選択するために先進医療のPICSI を採用して挑んだ6 回目の移植。保険適用最後だからと初めて2個移植を試してみたところ、そのうちの1つが着床! 嬉しい反面、再び流産の不安がよぎっていた二人でしたが、心拍が確認できた瞬間、ようやく安心できたそうです。
「母の誕生日の時期だったので、エコー写真にメッセージを添えて渡しました。最高のプレゼントができて本当に嬉しかったです」
妊娠12週で不妊治療専門クリニックを卒業。移植前から毎日続けていたホルモン剤からも解放され、出産を迎えるまで不安はありつつも「今しかないマタニティライフを噛み締めて楽しく過ごしたい」と笑顔で語るナナさん。以前は「子どもは一人で十分」と思っていたそうですが、出産後に二人目も欲しくなる可能性を考えて「残りの凍結胚はもう少しだけ保存しておこうかな」と心境の大きな変化を教えてくれました。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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